2024年05月11日( 土 )

艶街千早~艶と顔の見える学びの連鎖を~(2)

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 福岡県は、福岡県立福岡高等技術専門校の跡地について、PPP(公民連携)の一手法である「定期借地方式による土地貸付」による有効活用を図ることとし、公募型プロポーザル方式により民間事業者を再公募した。地の利と場所の文脈、それに相性の良い戦略を、例によってこの場を借りて提案してみたい。

エリアのコミュニティ好例(つづき)

②ちはや公園

 民間がつくる公園で、園内の案内や市民活動のサポート、取りまとめをしたりする公園長が常駐する施設。ここでやってほしいイベントごとや、やってみたいことなど、いろいろなことを気軽に相談できるようだ。ガーデンズ千早と接合しているため、ショッピングと一緒に立ち寄れる便利な場所にある。敷地内にはオープンデッキやカフェレストラン、喫茶などの飲食店、DOG SALON、PHOTO STUDIO、フラワーショップのような小さな専門店が連なる。中央に芝生広場を配し、イベントステージなども設置。独立した一軒家タイプのショプが、その広場をぐるりと囲っている。

(左)ちはや公園(右)みんなのキッチン
(左)ちはや公園 / (右)みんなのキッチン

 “みんなのキッチン(シェアキッチン)”はガーデンズ千早の1階、公園と隣接する位置にあり、そのならびに食物販やお弁当、野菜のマルシェ、お肉や惣菜、から揚げなど、ちょっとつまんで食べられるようなファストフード、コーヒーのテイクアウトやカフェのできるスペースなど、公園のある屋外と、それと相性の良い業態のフードおよび空間が横展開されている。地続きで移動しやすい、昔でいう縁側のような使い方のできる楽しい空間だ。地域の子ども会や学校の行事など、こんな機能と混ぜ込みながらだと楽しい。ファミリー世代や保護者としても、こんな場所が近くにあると立ち寄りやすくなるだろう。開放的な公園とそこで滞在するためのさまざまな仕掛けづくりが工夫されていて、これから運営側の力量が試されていくだろうが、とても先進的な取り組みと、楽しくなる場所に大きな魅力を感じる。

 ちはや公園に隣接するさらに広大な敷地(スポガ跡地)の計画は、今後どうなっていくのか。この文脈を取り込んだ、さらなる魅力空間の創造を期待したい。

③なみきスクエア

 千早エリアでは子育て世帯の増加にともない、子どもの健やかな育成や多世帯の交流を目標に掲げ、地域コミュニティが活発化するようまちづくりに力が注がれている。16年に千早駅前にオープンした「なみきスクエア」もその代表例だ。

(左)なみきスクエア/(右)福岡市東図書館内
(左)なみきスクエア/(右)福岡市東図書館内

 福岡市東区の芸術・文化の発信拠点となる建物で、「東市民センター」「千早音楽・演劇練習場」などが入る複合公共施設。住民票などは「千早証明サービスコーナー」で入手できるほか、「福岡市東図書館」では気軽に読書を楽しめるなど、多彩な公共サービスをワンストップで利用できる。コンサートや舞台が行われるホールや、料理や茶道などの教室が開かれる実習室、事前予約なしで誰でも自由に使える自習室、そして託児室なども完備し、ここに行けば地域の人との出会いや暮らしを楽しむヒントを得られそうだ。キッズルームでは就学前の子どもが遊べ、親同士が交流できる「香椎子どもプラザ」も使いやすい。駅から徒歩1分という立地もあって、平日の昼間は高齢者や親子連れの利用も多い。図書館には閲覧席も多いので滞在時間も長い傾向にある。

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 これらの好例だが、ファミリー+子どもの多さに対して、まだまだ少ないように思う。また、天神や西新、香椎のような商業エリアとは用途が異なるが、千早駅周辺にもお酒が楽しめる飲食店やユニークなショップ、個人と個人が接点をもてる公共の場がまだまだ不足している。「千早駅周辺でいっぱいひっかけよう」「お茶して帰ろう」といった流れができるようなパワーショップが増えると、まちとしてもっと面白みが出てくるはずだ。

 ところで、千早の近代化と人口増加の傾向は、今の日本社会では、恵まれた稀なケースといえるだろうが、人口減少の流れにある日本の地方都市においては、こんな事情も出てきた。

(つづく)


松岡 秀樹 氏<プロフィール>
松岡 秀樹
(まつおか・ひでき)
インテリアデザイナー/ディレクター
1978年、山口県生まれ。大学の建築学科を卒業後、店舗設計・商品開発・ブランディングを通して商業デザインを学ぶ。大手内装設計施工会社で全国の商業施設の店舗デザインを手がけ、現在は住空間デザインを中心に福岡市で活動中。メインテーマは「教育」「デザイン」「ビジネス」。21年12月には丹青社が主催する「次世代アイデアコンテスト2021」で最優秀賞を受賞した。

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