2024年07月21日( 日 )

新たな時代を迎える日韓関係とバイデン政権の思惑(中)

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国際未来科学研究所
代表 浜田 和幸

北朝鮮のミサイル開発にウクライナの技術が

北朝鮮 ミサイル イメージ    韓国のユン大統領の訪日は元徴用工問題の解決に限らず、北朝鮮対応や対中政策における日韓、そして日米韓の調整が期待されているところです。このところ日本でも世界でもウクライナ危機に耳目を奪われていますが、その夜陰に乗じるかのように、北朝鮮の軍事的行動が活発化しています。日本にとっても韓国にとっても、ウクライナ問題よりはるかに深刻といえるものです。

 ところが、日本政府はピョンヤンの思惑を、本気で理解し、抑えようとしていません。アメリカも日本もロシアのウクライナへの軍事侵攻を非難し、経済制裁を強化する動きを見せています。しかし、北朝鮮はアメリカや日本の経済制裁にもかかわらず、軍事力の強化に邁進し、昨年3月24日には大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星17号」の打ち上げに成功したと発表。「ニューヨークタイムズ」紙によれば、この成功にはウクライナ製の技術や部品が欠かせなかったと報じられています。

 旧ソ連時代の核ミサイル開発技術を温存してきたウクライナは、いわゆる「闇市場」を通じて、こうしたノウハウや部品を外国に売りさばいてきました。「火星17号」の飛行距離は1万5,000kmを超えると目され、アメリカ本土のすべてを射程に収めています。そうしたミサイルの性能向上にウクライナが水面下で関わっていたフシがあるわけです。

 こうした実験成功をテコに、北朝鮮はアメリカと敵対するイスラム過激派テロ組織に、このような長距離核ミサイルを売り込む動きも見せており、経済制裁などどこ吹く風といった様子です。その上、韓国発の情報では、北朝鮮は潜水艦発射弾道ミサイルのSLBMの実験も加速させているとの情報もあります。

ウクライナにくぎ付けのアメリカ

 北朝鮮によるこれらの軍事行動が今後ますますエスカレートする危険性は高まる一方です。この3月14日、16日にも北朝鮮は日本海に向けてミサイルを相次いで発射しました。13日に始まった米韓合同軍事演習「フリーダム・シールド」への対抗措置と思われます。あるいは日韓首脳会談への反発かも知れません。

 プーチン大統領による一方的なウクライナ侵攻に対して、バイデン大統領は経済制裁を強化するものの、「直接的な軍事的対応はしない」と明言しています。そうしたアメリカの動きを金正恩総書記はどう判断しているのか、日韓首脳会談でも意見が交わされるはずです。

 ユン大統領は岸田政権が進める「反撃能力」の保有に「理解する」との姿勢を明らかにしています。韓国独自の核保有は否定しつつ、日米と歩調を合わせるかたちで「拡大抑止」を国是とする考えのようです。であれば、日米韓の安保協力にも進展が見られるに違いありません。北朝鮮のミサイルを探知、追尾するレーダー情報の即時共有にも前向きなユン大統領。日韓の防衛機密を共有する軍事情報包括保護協定(GSOMIA)も正常化が期待できると思われます。

 2024年の大統領選挙に出馬するのかどうか、態度を鮮明にしていないのがバイデン大統領です。ウクライナのゼレンスキー政権を支援するバイデン政権は大量の武器や資金を提供していますが、終わりの見えない戦況のため、アメリカはウクライナにくぎ付けになっています。それゆえ、「最大の競争相手で脅威の源泉」と対決姿勢を見せている中国と向き合う余裕がありません。バイデン政権はその埋め合わせを日本に期待しているようです。

 アメリカはウクライナへの軍事支援を通じて、ロシアとの代理戦争に突入してしまったと言っても過言ではありません。その結果、「敵の敵は味方」という状況が生まれ、アメリカの経済制裁を受けるロシアと中国が手を結ぶ可能性が出てきました。もしアメリカが中国を封じ込めたいと思うなら、ロシアと代理戦争状態に陥り、ロシアと中国を結びつけるような事態を招来するのは愚の骨頂としか言いようがありません。

 なぜなら、ウクライナ戦争が長期化すれば、中国はアメリカの圧力を受けることなく東アジアや西太平洋一帯で自国の影響力の拡大に邁進できることになるからです。バイデン政権はそうした戦略上の失敗から形勢逆転を目指し、韓国と日本との戦略的な同盟関係を強化しようと動き始めました。

 幸い、ユン大統領はアメリカとの同盟関係の強化と日本との関係改善に前向きな姿勢を打ち出しています。バイデン大統領が就任後、韓国を最初の訪問国にし、ユン大統領との首脳会談を最優先したのも、対中政策上、日本と韓国の関係改善を促し、日米韓による連携の強化を図ろうとしたためでしょう。

(つづく)

浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
 国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。近著に『イーロン・マスク 次の標的「IoBビジネス」とは何か』、『世界のトップを操る"ディープレディ"たち!』。

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