2024年05月02日( 木 )

日中医療ビジネスの架け橋となるか?徳川家康の健康長寿の秘訣

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 NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。
 今回は、4月7日付の記事を紹介する。

 徳川家康といえば、江戸幕府を生んだ初代将軍として日本の歴史に燦然と輝いています。

 今年はNHKの大河ドラマ『どうする家康』が人気を獲得しているようです。このテレビ放送では、優柔不断で頼りなさげな家康が、苦悩しながらさまざまな決断を下す姿を描いています。

 「鳴かぬなら、鳴くまで待とう、時鳥(ホトトギス)」という有名な狂歌で知られる家康ですが、「20年単位で時期を待つ」という、時間に追われないというライフスタイルだったと思われます。そんなあくせくしない家康ですから、当時の日本人の平均寿命45歳をはるかに超える75歳の天寿を全うできたのかも知れません。

徳川家康 イメージ    実は、そんな家康は今でいう「健康オタク」でした。何しろ、宋の陳師文らが著わした『和剤局方』を熟読し、薬草や薬木を栽培し、自分の身体を実験台にして、医薬の改良に努めていたと記録されているくらいですから。そのおかげで、3代将軍家光が幼い頃大病を患い、医者が匙を投げてしまったときには、自らが調合した「紫雪」(鉱物性製薬)で命を救ったこともありました。当時、最先端と目された中国の漢方や製薬器具を取り寄せ、自分でその効果を試し、周りの人々のためにも役立てたようです。

 現代に生きる我々も大いに参考にすべき点があります。というのも、家康は天下人となった後も、麦飯と焼ミソといった粗食を貫いたと言われているからです。とはいえ、粗食というのは、決して粗末な食事のことではありません。

 何かといえば、その土地で育ち、収穫された食材、しかも、旬の食材を使った料理にこだわったのです。旬の食材であれば、栄養価も高く、美味しく、量も豊富ですから、当然、値段も安く手に入るわけで、一石二鳥どころか、一石三鳥、四鳥にもなります。そうした粗食を心がけたことで、その土地の食料生産活動の活性化にも貢献できたに違いありません。

 もちろん、動物性たんぱく質も取っていました。当時は仏教思想の影響もあり、四つ足の動物は食べてはならないという風習があり、牛や豚の肉はご法度。そこで、家康が好んで食したのは「鶏肉」でした。こうしたバランスの取れた食生活のおかげで、家康は戦場でも「疲れ知らず」だったようです。「天下統一」の裏には「鶏肉」が効果を発揮していたといっても過言ではありません。

 そして、もう1つ忘れてはならないのが、「よく噛む」という習慣です。家康が残した健康十訓の第一訓は「よく噛むこと」に他なりません。一口食べ物を口に入れたら、「48回は噛んだ」との記録が残っているほどです。噛むことの健康効果は現代医学でも立証されています。ガン、虫歯、肥満、ボケなど多くの症状を予防すると見なされているわけです。

 思えば、105歳まで現役医師で活躍された聖路加国際病院の日野原重明先生も「少なくとも30回は噛むように」と指導されていました。また、100歳に近いプロスキーヤーの三浦敬三氏は「一口60回は噛む」とのこと。現代人は噛む回数が激減しているようです。家康の現代人へのメッセージとして、即、実践できるのは「よく噛む」ことではないでしょうか?

 そして、「自分の健康は自分で守る」という意思の力も忘れてはなりません。家康は晩年、自分で薬を調合していました。病気を寄せ付けないという普段の生活習慣が大切ということ。家康は中国文化に倣い、冷たい水は口にせず、日ごろからお湯を飲んでいたそうです。

 元和(げんな)2年(1616年)に、あの世に旅立った家康でしたが、亡くなる3カ月前まで鷹狩りを楽しんでいました。絶えず肉体の鍛錬にも励んでいたわけです。その成果かどうかは分かりませんが、家康は2人の妻と15人の妾をもち、16人の子どもを残しました。

 「人の一生は、重荷を負うて、遠き道を行くがごとし。急ぐべからず」。家康の言葉ですが、じっくりと噛みしめたいものです。実は、中国でも医療と介護ビジネスは成長産業として期待が集まっています。3月末に海南島ではボーアオ国際展示会が開催されましたが、主要なテーマは「健康長寿産業の育成」でした。日本からは福田康夫元総理が出席し、新たに中国の首相に就任した李強氏と健康談義で大いに盛り上がったよう

 実は、中国でも今や少子高齢化が進み、医療や介護のニーズが飛躍的に高まっているためです。そのため、この分野では知見と技術の蓄積が豊富な日本への期待が急増していると思われます。いわゆる「メディカル・ツーリズム」においても、最大の来日患者は中国人なのです。そのため、中国では海南省や気候の温暖な雲南省などでは「健康医療特区」が形成され、日本からの先進医療技術の導入に積極的に取り組んでいます。

 中国には徳川家康が重宝したように、漢方や医食同源、はたまた太極拳などの伝統的な東洋医学の蓄積があります。そして日本では西洋医学をベースにした近代的な治療技術が発展してきました。この両者が融合、協力すれば、世界に誇れるような「新次元の健康スタイル」が生まれる可能性があります。大いに期待したいものです。

 次号「第337回」もどうぞお楽しみに!


著者:浜田和幸
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