2024年05月09日( 木 )

自ら壊し脱皮する──変革を追い求め異例の成長を実現

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(株)Lib Work

Lib Work本社ビル。JAの建物をリノベーションしたものだ
Lib Work本社ビル。JAの建物をリノベーションしたものだ

異業種コラボで差別化

 瀬口力社長が家業・瀬口工務店(現・(株)Lib Work)を継いだ1999年当時、年商は1億円程度だったという。しかし、そこから徹底した合理化策による建設手法の改善やコスト低減など、既存の事業スタイルからの変革を模索。その結果、2015年に福岡証券取引所Q-Board、19年に東証マザーズ(現・東証グロース)に上場をはたし、22年6月期には売上高137億円を計上するまで成長させてきた。

瀬口力代表取締役社長CEO
瀬口力代表取締役社長CEO

 ここまでの道のりは平坦ではなかった。主力の注文住宅事業において、同社の平均1棟当たり単価2,000万円台は市場のボリュームゾーンで、競合が激しいからだ。にもかかわらず拡大できた理由について、瀬口社長は第一に「ブランド戦略」を挙げた。

 独自の商品シリーズに加え、「Afternoon tea」「niko and ...」「無印良品の家」といった異業種ブランドとのコラボレーションによる住宅商品を展開。それが子育て世代など住宅取得の中心的な若い顧客層、なかでも女性からの支持を得ているというのだ。また、彼らの生活・行動スタイルに欠かせなくなったSNSを活用、なかでもYouTubeによる情報発信などを訴求・集客手段として有効的に機能する仕組みを確立したことも理由の1つである。

 「私たちは、家ではなく暮らしを売るという認識で事業を行っている。異業種とのコラボ商品はお客さまに豊かな暮らしを提案することの一環であり、YouTubeの活用やYouTuberの起用はそれをよりわかりやすく親しみやすく伝えるもの」(瀬口社長)と指摘する。今でこそ、動画配信を駆使する手法は同業他社でも珍しくはなくなったが、先行していたことでその活用ノウハウや発信内容に厚みが増した。

Afternoon tea HOUSE(hitマリナ通り住宅展示場)
Afternoon tea HOUSE(hitマリナ通り住宅展示場)

国産材比率は9割超

 ところで、同社の住まいづくりにおいて特筆すべきなのは、国産材比率が9割を超えている点である。その多くが、熊本県など周辺の山林から算出される地域材だ。国産材を利用することで、森林の整備を行いながら木材を再生産し、森林資源が循環できるようにも配慮している。

 一般的に国産材は輸入材に比べて割高で、国産材比率を高めれば収益を圧迫する懸念もある。それでも国産材利用を進める理由について、瀬口社長は「SDGsやESG経営が重要な社会指標となるなかで、環境に配慮した住宅を供給しなければ、金融機関からの資金調達が難しくなるなど、持続的な成長が見込めない」と判断したためだという。たとえば、輸入材を用いるためには長距離の輸送が求められ、多くの化石燃料を使い温室効果ガス(CO2)を大量に排出する。一方で国産材、とくに地域材を活用するのであれば、輸送によるCO2排出を大きく減らすことができる。

 そこで、同社では資材調達から住宅が完成するまでに排出されるCO2を1棟ごとに数値化する「カーボンフットプリント」という、いわばCO2排出量を「見える化」する取り組みを開始。当初は、瀬口社長が幼いころから親しんだ地域の山林保全と地域経済への貢献を重視していたものだが、持続可能でカーボンニュートラルといった社会課題の解決と結びつけることで、Lib Workの新たな強みとなろうとしている。

 「環境意識の高いお客さまに当社の住まいを選んでいただけるキッカケにできるよう、この取り組みについて丁寧に説明していきたい」と、瀬口社長は話している。ちなみに、新聞紙を再利用した断熱材「セルロースファイバー」の活用や、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)など、省エネ性能が高い住宅供給にも積極的に取り組んでいることも付記しておく。

 22年6月には、同社で開発・導入した「My Home Robo」という新築住宅プラン検索システムを提供する事業を全国の工務店向けに開始。これはAIにより、世の中にあるプランをデータベース化するもので、いわばGoogle検索の住宅版だ。加えて、3Dプリンター住宅の供給も実現に向けて動いているという。

 瀬口社長は「お客さまや社会にとって何が重要かを念頭に、また新築住宅メーカーという枠組みにもこだわらず、自ら壊し脱皮する企業となることで、さらなる成長を目指す」と、今後に向けた決意を語った。

【田中 直輝】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:瀬口 力
所在地:熊本県山鹿市鍋田178-1
設 立:1997年8月
資本金:10億1,477万3,198円
URL:https://www.libwork.co.jp

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