2024年05月11日( 土 )

百年に一度の変革 開発に沸く長崎と諫早(中)

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今年1月開庁の新市庁舎
旧庁舎跡地は文化施設か?

 長崎市の中心部においては、県庁舎だけでなく市庁舎も新生したばかりだ。

 桜町にあった旧庁舎は、築60年以上が経過して建物の老朽化が進行していたほか、耐震強度の不足などが問題となっていた。また、別館なども併せて窓口が分散化しており、利用に際して市民からの使いづらさ・わかりづらさなども指摘されていた。そこで、11年2月に市庁舎の建替えという方針を定め、13年1月に建替え場所を前出の長崎市公会堂および公会堂前公園の敷地とすることを決定。新市庁舎は19年7月に着工し、今年1月に開庁を迎えた。

 新市庁舎は、旧庁舎から約150m離れた魚の町に位置し、敷地面積6,710m2にS造・RC造の地上19階・地下1階・塔屋1階建の延床面積5万1,748m2。高さ約30mの低層部分(5階建)のうえに高さ約90mの高層部分(19階建)が接続しているかたちで、旧庁舎時代には市役所本館および別館、商工会館内、金屋町別館、桜町第2別館、市民会館内、興善町民間ビル内、市民活動センター内、交通産業ビル内に分散していた市役所機能のほぼすべてが、新庁舎1カ所に集約されることになった。利用しやすい窓口や快適な待合スペース、バリアフリーに対応したトイレや通路、市民と行政との協働スペースなど、これまでよりも質の高い行政サービスを提供するとともに、19階・展望フロアや電停およびバス停に隣接する広場なども備え、つながりの拠点としてまちの活性化に貢献する庁舎となることを目指している。

5_(左)長崎市役所/(右)長崎市役所跡地
(左)長崎市役所/(右)長崎市役所跡地

 華々しく開庁した新庁舎が地域の新たなランドマークとして注目を集める一方で、旧市庁舎跡地の今後の活用についても注目されるところだ。旧市庁舎跡地では当初、新庁舎建設地に建っていた長崎市公会堂が県庁舎跡地での整備を見直したことを受けて、前の田上富久市政の下で、市庁舎跡地において新たな文化施設を26年度以降の完成を目指して整備していく基本方針を示していた。だが、今年4月に就任した鈴木史朗市長が、6月26日に開かれた長崎市議会の本会議において「整理が必要」などと述べ、計画を見直す考えを示した。「持続可能で魅力あるまちづくりに向けてまちづくりのグランドデザインづくりに着手することとしているので、新たな文化施設の整備については、建設場所も含めて、このグランドデザインの議論などを踏まえたうえで、スピード感をもって優先的に整理していく」(鈴木市長)としており、市庁舎跡地での文化施設の建設は、いったん白紙となったかたちだ。現在、旧市役所本館では解体工事に着手しているが、この場所が今後どのようなかたちに生まれ変わるかが見えるまでには、しばしの時間を要しそうだ。

 なお、新庁舎からも旧庁舎からも近い位置にある桶屋町では現在、(株)ファミリーによる「ファーネスト桜町通りタワー」(RC造・地上19階建、92戸[非分譲15戸含む])が計画されている。電停やバス停などに近く交通アクセスに優れているほか、市役所や市民会館、その他も多彩な利便施設が充実。25年6月中旬の竣工を予定している。

_ファーネスト桜町通りタワー 外観イメージパース
ファーネスト桜町通りタワー
外観イメージパース

いよいよ24年に開業予定
長崎スタジアムシティ

 長崎駅から北に約600mに位置する三菱重工業(株)長崎造船所の幸町工場の跡地では現在、「長崎スタジアムシティ」の建設が着々と進んでいる。

長崎スタジアムシティ
長崎スタジアムシティ

    長崎スタジアムシティプロジェクトは、ジャパネットグループがサッカースタジアムを中心に、アリーナ・ホテル・商業施設・オフィスなどの複合施設を開発することで、新たなまちづくりに挑戦する民間主導のプロジェクト。17年4月に始まった「長崎・幸町工場跡地活用事業 土地活用事業者募集」に対して、(株)ジャパネットホールディングス(HD)とジョーンズ・ラング・ラサール(JLL)グループ、竹中工務店の3社で結成された「ジャパネットホールディングスグループ」が応募し、18年4月に三菱重工業との優先交渉権を獲得したことでプロジェクトが始動した。同年10月には三菱重工業から工場跡地6万8,746.58m2をジャパネットHDが取得する不動産売買契約を締結。ジャパネットHDを事業主として、企画運営をジャパネット子会社の(株)リージョナルクリエーション長崎(19年6月設立)が、プロジェクトマネジメントをJLLグループが、基本設計を環境デザイン研究所・安井建築設計事務所が、コンストラクション・マネジメントを三菱地所設計がそれぞれ担当するかたちでプロジェクトが進行している。

 事業コンセプトに掲げているのは、「『長崎を生きる楽しさ』を!」。プロサッカークラブ「V・ファーレン長崎」のホームスタジアムとなる「PEACE STADIUM Connected by SoftBank」のほか、日本初のスタジアムビューのホテル棟「STADIUM CITY HOTEL NAGASAKI(スタジアムシティホテル長崎)」、歩き回る楽しさあふれる商業棟「STADIUM CITY SOUTH(スタジアムシティサウス)」、長崎県内最大級のオフィス棟「STADIUM CITY NORTH(スタジアムシティノース)」、プロバスケットボールクラブ「長崎ヴェルカ」の本拠地となる多機能・可変型のアリーナ棟で構成される。21年3月には国土交通大臣により優良な民間都市再生事業計画として認定。これにより、金融支援や税制上の特例措置等の支援を受けることが可能となった。その後、長崎スタジアムシティは22年7月に着工し、現在、24年の竣工を目指して工事が進行している。開業の暁には、長崎の街中にこれまでにない新たな魅力が付加されることだろう。

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 ほかにも市の中心部では、いくつかの再開発事業が進行している。

 たとえば14年に閉店した旧長崎玉屋の跡地を含めた約0.7haで進む「新大工町地区市街地再開発事業」は、国道34号を挟んで北街区と南街区に分けて開発を実施。北街区にはRC造(一部S造)地上26階・地下1階建のビル(22年10月竣工)が建てられ、1~3階部分は新大工町市場(ジョイフルサン・味彩横丁)やTamayaなどが入る複合型施設「新大工町ファンスクエア」、4~26階部分は分譲マンション「ライオンズタワー新大工町」(240戸)となっている。一方の南街区は地上11階建のビル(20年11月竣工)で、1~9階部分が駐車場、1階および10・11階部分がオフィスとなっている。

 市の代表的な繁華街の1つである「浜町アーケード」の約3.7haでも「浜町地区市街地再開発事業」が計画されている。同地においては15年1月に再開発準備組合が設立され、18年度にはまちづくり方針を作成。だが、その後については、今のところ目立った動きは見られない。ほかに、23年度までの稼働を予定している中部下水処理場(茂里町)でも、その跡地活用を検討。長崎駅の周辺以外にも、市の中心部においては複数の再開発プロジェクトが進行しており、長崎市はまさに“百年に一度の変革”を迎えているといって差し支えないだろう。

(つづく)

【坂田 憲治】

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