2024年05月12日( 日 )

小笹に住んで24年「廃線」から「団地建替え」を振り返る

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 筆者は小笹に住んで24年間になる。小笹というまちは、静かなまちだ。その静かなまちも、24年間も住んでいるとそれなりの変化がある。筆者は今年50歳の誕生日を迎えたのだが、ここで24年間住んでいる小笹について、思い起こしてみたいと思う。

小笹=団地

 小笹団地の建設が始まったのは1956年。そこから4年間で、全体の約9割が建てられた。筆者が小学生のころは、まだ小笹とは別の地域に住んでいたが、親戚が小笹団地に住んでいた関係で訪問したことがある。今はすでに廃線となった旧筑肥線・小笹駅で降りていたのだが、そのころから団地らしい団地という印象だった。また、小笹には小笹団地のイメージしかなく、小笹駅は小笹団地のためだけの駅という印象だった。当時から博多や天神のベッドタウンとしての要素もあったので、その印象もあながち間違いではなかったのかもしれない。自分が住んでいるか、知人がいるか、そんなことでもない限り、ほとんど降りる用事のない駅だった気がする。そんな筆者でも、83年に旧筑肥線が廃線になったときには、少し不安を抱いた記憶がある。今まであったものがなくなることに対する、漠然とした不安だったのかもしれない。

 現在、小笹団地は北側の31棟560戸が取り壊され、URとしては1番館から6番館までの新しいコンセプトのマンションに建替えられた。一部の土地はえんホールディングスが取得して、364戸の大規模分譲マンション「エンクレスト ガーデン福岡」の建設を始めたところだ。

URのコンセプトマンション(奥)と
エンクレスト ガーデン福岡建設予定地(手前)

筑肥新道

 旧筑肥線の線路跡は、筑肥新道になった。筑肥新道は、小笹北交差点付近で途中分岐して、しばらく走ると平和交差点でまた合流する。その奇妙さも、旧筑肥線を知っている者からしたら、とくに何の疑問も抱かない。もともと線路だったこともあって、筑肥新道はまっすぐで走りやすい。小笹の住人にとって重要な道路なのだが、月曜日の朝の渋滞は何とかしてほしいところである。

梅光園緑道

梅光園緑道
梅光園緑道

    旧筑肥線は線路が道路に変わったほか、六本松から笹丘までの一部区間は梅光園緑道として遊歩道に変わった。筆者は99年に小笹に引っ越してきたのだが、この梅光園緑道は子どもと散歩をしたり、遊んだりした記憶があり、すごく良い印象の場所の1つだ。桜や梅の木があることで季節を感じることができ、花壇には季節の花を植える活動もされている。歩いているだけで癒される遊歩道なのだ。

 地域猫の活動もあり、ボランティアにより手術を受けた猫たちが一代限りそこで生きることを許されている。近年では猫たちも周辺住民に慣れていて、天然の猫カフェのような様相だ。梅光園緑道の北側では、周辺に新しいコンセプトの店舗がオープンしていた。筆者も子どもと一緒に、ふわふわのかき氷を食べた記憶がある。最近では六本松の再開発で、さらに目新しい店が増えている。

小笹中央公園

小笹中央公園
小笹中央公園

    2000年に開園した小笹中央公園は、知る人ぞ知る小笹のレジャースポットの1つである。駐車場がないのであまりメジャーではないかもしれないが、大きな広場もあり、気候の良いときなら、テントを持ち込んでデイキャンプを楽しむ家族連れの姿も散見される。

 特別な遊具はないが、グラウンドではキャッチボールやサッカーができ、週末だけではなく、平日でも利用者は多い。筆者も子どもと花火をした記憶がある。フリスビーで遊んだり、シャボン玉を追いかけたり、そんな何でもない遊びができる場所が小笹中央公園だ。また、犬の散歩コースにもなっていて、愛犬家たちの情報交換の場になっているようである。

小笹飯店のとりみそ定食

小笹飯店跡地
小笹飯店跡地

 小笹というエリアを考えると、飲食店は割と少ない方だと思う。住宅地ということもあり、そもそもの飲食店の数が少ないのではないだろうか。そのなかでも古くからある店を3つ挙げるとしたら、「笹うどん(創業1967年)」「牛作(創業1991年)」「小笹飯店(創業1970年ごろ)」だろう。笹うどんはすでに建物が建替えられて新しくなっている。小笹飯店も今年7月から解体が始まり、来年2月のリニューアルオープンを控える。名物ともいえる「とりみそ定食」が恋しい人には、しばしの我慢が必要だ。

とりみそ定食
とりみそ定食
解体前の小笹飯店
解体前の小笹飯店

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 近年の地価高騰で、筆者の住むマンションも24年前の購入時とほとんど変わらない価格で売れると査定が付いた。しかし、このまま売らずに住み続けようと思う。それくらい筆者にとって小笹は思い出も詰まっているし、住みやすいまちでもあるのだ。

【外部ライター・奥野 晃市】 

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