2024年05月05日( 日 )

23年地価調査・小倉編 上昇牽引はマンション需要(前)

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7区最大の上昇率

 「令和5年度地価調査」の結果が9月に発表され、前号(vol.65/10月末発刊)では主に福岡都市圏の地価調査の結果についてレポートした。今回は、福岡県内もう1つの政令市・北九州市の中心地・小倉北区についてレポートする。

 北九州市では商業地、工業地、それに住宅地のいずれも上昇し、商業地の上昇は7年連続。用途別(平均)では、商業地が3.5%、工業地が3.1%、住宅地が1.3%の上昇率となった。前号でも述べたように、福岡都市圏では前年比10%以上の上昇率となった地点も多かったが、小倉北区・小倉南区で10%以上の上昇率となったのは1地点にとどまった。それでも、【表】の通り小倉北区の商業地は市内7区で最大となる平均5.7%の上昇率となり、前年を2ポイント近く上回った。

2ケタ増は1地点

 やはり商業地で目立つのは、JR小倉駅周辺の上昇だろう。唯一10%以上の上昇となった「大手町14-5」は、小倉駅から紫川を隔てて南西方向に直線距離で1.6kmにあるUR都市機構の大型賃貸マンション・アーベインルネス大手町。健和会大手町病院の裏手にあり、周辺には公園やスーパーマーケットを核とする商業施設なども揃う人気の住宅地でもある。このエリアはとくにマンション用地として需要が高く、近年はマンション開発が旺盛なエリアとしても知られる。

 ここからは、小倉駅周辺の各地点の状況を見ていこう。北九州最大の繁華街といえば、「魚町」だ。アーケード商店街が広がるエリアで、銀天街という名称の発祥地としても知られる。飲食・アパレル・物販など多くの店舗が密集しており、アーケードを出れば、モノレールが上空を走る平和通り沿いに銀行などの金融機関が集まる。前年比7.1%の上昇率となった「魚町1-6-16」はSRC造・8階建のオフィスビルで、1階には三菱東京UFJ銀行・北九州支店が入る。

容積緩和へ期待も「小倉らしさ残せ」

24年4月完成予定のビジア小倉(魚町3丁目)
24年4月完成予定のビジア小倉
(魚町3丁目)

    小倉駅周辺では、古旧化したビルのスマートオフィス化を促進して中心市街地のオフィス市場の活性を図る北九州市のプロジェクト「コクラ・クロサキ リビテーション」が実施されており、対象エリアは小倉駅および黒崎駅それぞれの周辺概ね半径1km、27年3月末までに着工するビルが対象となる。すでに第1弾となるS造・地上13階建のオフィスビル「ビジア小倉」が22年10月に着工し、24年3月の竣工予定で工事が進められている。今回の地価調査の結果は、コクラ・クロサキ リビテ―ションの容積緩和への期待も盛り込まれているようだが、第1弾に続くビルの発表はない状況が続いている。

 小倉で不動産の保有や仲介管理を手がける地場業者は、小倉のまちづくりに対して次のように持論を展開した。「小倉は都市ではあるが、オフィス需要の大きな伸びは期待できない。コクラ・クロサキ リビテ―ションで容積緩和したところで、あまり効果はないだろう。開発を促すことも必要だろうが、『小倉らしさ』を残すことが、北九州のためになるのでは。小倉の良さは、多少のいかがわしさを含んだノスタルジックな建物や施設が残っているところ。こういうものを小ぎれいにするのではなく、保存していく選択肢も検討すべき」。

(つづく)

【永上 隼人】

(中)

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