2024年05月04日( 土 )

【中洲】歓楽街の再開発は可能か(前)

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ネオン煌めく夜の中洲
ネオン煌めく夜の中洲

全国有数の歓楽街「中洲」エリア

 福岡・中洲は、ビジネス街・博多と繁華街・天神の中間に位置しており、福岡市地下鉄空港線の利用で、中洲川端駅から博多駅、天神駅へはそれぞれ3分以内で移動可能な立地だ。2023年6月には、昭和通り沿いにスーパーゼネコン・鹿島建設(株)がオフィスビル「福岡Kスクエア」を完成させたほか、同年8月には、向かい側の明治安田生命福岡ビル跡地にホテル「ザ ロイヤルパーク キャンバス 福岡中洲」(全255室)がオープンするなど、大型ビルの完成が続いた。

 ビジネスや観光の拠点といった側面もある中洲だが、最大の特徴は“西日本屈指の歓楽街”ということだろう。中洲1~5丁目にかけての約20haのなかにはテナントビルが林立しており、ビジネスマンや観光客の夜の遊興(ナイトライフ)需要の受け皿として、長きにわたり存在感を放ってきた。しかし、その歴史を支えてきたテナントビルの多くは築40年以上が経過しており、更新期を迎えている。築50年以上が経過する丸源ビル43では、17年12月に地上19mの高さに掲げられていたネオン看板の枠が落下し、消防隊が出動する事態となっていた。

看板落下の恐れから応急措置を講じる消防隊-17年12月撮影
看板落下の恐れから応急措置を講じる消防隊
17年12月撮影

    中洲の歩行者交通量は平日(午前7時~午後8時)約1万3,800人、休日(同)約1万5,400人(市公表『令和3年度 都心部歩行者交通量等調査結果』参照)で、彼らが安心・安全に中洲を楽しめるようにするためにも、老朽化したビル群への対応は不可欠だ。ビルの建替えは、少なからず入居テナントの満足度向上にもつながる。これまで築き上げてきたエリアブランドを次世代につないでいくためにも、現実的な選択肢として、建替えや部分解体によるリノベーションを考える時期に差しかかっている。

築40年超ビル多数 一部では再開発の動きも

(仮称)CANNERY人形小路

 すでに建替えや改修・改築工事が始まっているテナントビルもある。中洲に複数棟のテナントビルを所有するウインズビルグループ(北九州市小倉北区)は、中洲4丁目のクラブ「シオンの娘」などが営業していた場所で、「(仮称)CANNERY人形小路」の開発を進めている。建築物の概要は、SALC造(地下RC造)の地上6階建、延床面積792.12m2。設計を(株)三浦紀之建築工房、施工を合同建設(株)(大阪市北区)がそれぞれ担当し、工事完了は24年9月末頃を予定している。

中洲人形町ビル
中洲人形町ビル

    同物件の隣にある中洲人形町ビル(RC造・地上5階・地下1階建、延床面積約867m2)は築50年以上経過しており、こちらでも建替えが検討されているとの話も聞こえてくる。両物件は、中洲において最も歴史が古く、最も小さな通りとして知られる「人形小路(にんぎょうしょうじ)」側にあり、同小路側にはほかにも古いテナントビルが集まっていることから、土地区画整理事業の活用などによる新たな空間形成を期待したい。ウインズビルグループは前出の開発計画のほかにも、中洲2丁目に所有する中洲会館の改築工事にも取り組んでおり、中洲において既存ストックの活用を推進している。

 同じ中洲2丁目では創業80年超の老舗、懐石料理・水晶鍋が閉店し、現在解体工事が進められている(23年12月時点)。隣接の飲食店・酒来も同様で、両店舗跡地では今後、新たな開発が進められることになりそうだ。中洲では更地やコインパーキングとして一時利用されている遊休地も散見されるが、インバウンドを含めコロナ禍からの回復が顕著な今、止まっていた計画も再始動するものと思われる。再開発の機運が中洲全体に広まれば、博多、天神に次ぐまちづくりのポテンシャルを秘めたエリアとして、さらなる民間投資を誘発することが可能なはずだ。

解体工事の準備が進む水晶鍋
解体工事の準備が進む水晶鍋

(つづく)

【代 源太朗/田中 直輝】

(中)

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