2024年05月04日( 土 )

【設計士対談】福岡市場の現状(前)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
法人情報へ

(株)R.E.D建築設計事務所
代表取締役社長 赤樫 幸治 氏
森戸設計(株)
代表取締役 森戸 大輔 氏

 「天神ビッグバン」「博多コネクティッド」──福岡ではいつまで旺盛な建設需要が続くのだろうか──。福岡においてマンションなど数々のプロジェクトに関わるR.E.D建築設計事務所の代表・赤樫幸治氏と、組織設計事務所において大規模案件を中心に統括責任者として多数案件を担当してきた森戸設計(株)の代表・森戸大輔氏に、話を聞いた。
(聞き手:(株)データ・マックス 代表取締役会長 児玉 直)

福岡の建築事情

 ──国内外のさまざまな都市で人口減が顕著になっていますが、そうした都市では、どのような対策を講じていくべきでしょうか。

赤樫幸治 氏
赤樫 幸治 氏

    赤樫 建設コストの高止まりが続いていますが、福岡市における開発は今後も継続するものと見ております。というのも、とくに福岡市中心部の商業・オフィスビル、マンションなどのなかには50年以上前に建設されたものが多くあり、老朽化や耐震性の不足、現在のテナントニーズへ合致しなくなっているものが多いからです。また、「こんなに一気に再開発をしてテナントニーズはあるのか」ともよく聞かれるのですが、こちらについても福岡市はアジアのゲートウェイシティとなる可能性が高く、そのためテナントの入居ニーズも十分にあると見ています。

 いずれにせよ、当社ではおかげさまで現在、多くの案件を抱えながら事業に取り組んでいます。

 森戸 福岡市はあと10~15年、人口が増えると見られていますしね。ただ、1棟を設計・建設するまでに、従来と比べて概算見積もりの段階から着工に至るまでのコスト調整の難易度が高く、予算調整のための設計変更などが発生し、以前より多大な労力を必要とするケースが増えています。これは、金融機関からの融資の手続きの関係や、資材や人件費の高騰を受けて事業主が採算性により注意を払うようになった表れです。

 設計会社はプロジェクトが実現して初めて十分な収益が得られるわけですから、手間が増えるだけで、収益が上がりづらい状況にもなりつつあるわけです。

新築からストックへ

 ──そういったなかで、建築設計を手がけるお2人の状況はいかがでしょうか。

 赤樫 当社では2022年5月に東京事務所を開設しました。私自身が東京出身であり、現地で活躍する大学時代の知人などが数多くおり、月に一度のペースで私も上京しています。彼らとの交流のなかで強い刺激を受けることが多いのが、東京事務所を設けた理由の1つです。

 東京の開発プロジェクトは、福岡のそれとは規模のケタが違います。そこに参戦することで、私や当社がさらにステップアップできるのではないか、その経験を生かせば福岡の市場でもさらに強くなれるのではないかと考え、進出を決めました。協力設計事務所はもちろん、現地でのブレーンとなる人脈づくりなど、本格的な事務所運営のメドはすでにでき上がっています。小規模な案件については実績が上がっており、24年以降は大規模案件での成果も表れてくるものと見ております。

森戸大輔 氏
森戸 大輔 氏

    森戸 私は新築案件への取り組みに加え、これまでのようなスクラップ&ビルドの事業とは異なる案件への取り組みを強めています。代表的なものが、違法建築物状態にある建物のリニューアルです。たとえば、既存の建物に備品を納める倉庫を増設することがありますが、本来それは関係機関による検査を受け、適法であることを表す検査済証を取っておく必要があります。そうでないものが、違法建築物です。ある食品工場では、増設した倉庫が違法状態にあることを行政から指摘され、建替えや移転も含めた対応を検討しているケースがあります。

 ただ、建替えによる莫大な建設コストの発生や、移転によってこれまで生産を支えてくれていたパートさんが離職してしまうケースなど、建替えや移転にはリスクがともないます。そこで、工場側と行政の間に立って、移転せず現地で、数年から10年間の適法化計画を策定し、違法状態を改めていく業務にも取り組んでいます。

 全国的にも、近年は違法状況を放置していたことが原因で、死亡事故も起こりました。違法建築物への対応は企業の事業存続はもちろん、従業員などの安心安全を確保するうえで大きなポイントとなります。常に一定のニーズがあること、競合相手が少ないことから、当社の強みとなっています。

(つづく)

【文・構成:田中 直輝】


<プロフィール>
赤樫 幸治
(あかがし・こうじ)
1993年、立教英国学院(イギリス)高等部卒業。97年、日本大学生産工学部建築工学科神谷宏治・川岸研究室卒業後、(株)穴吹工務店設計部入社。2009年7月に(株)R.E.D建築設計事務所設立。

森戸 大輔(もりと・だいすけ)
1978年生まれ。東京電機大学工学研究科修士課程修了。アトリエ系設計事務所で経験を積んだ後、組織設計事務所でマンションやオフィスビル、医療福祉や食品関連などの特殊建築物の設計を担当。統括責任者としてキャリアを積み、2023年7月に独立して森戸設計(株)を設立し、現在に至る。趣味はキャンプ。


<COMPANY INFORMATION>
(株)R.E.D建築設計事務所

代 表:赤樫 幸治
所在地:福岡市早良区西新4-6-15 ル・リアン西新102
設 立:2009年7月
資本金:1,000万円
TEL:092-852-1730
URL:https://www.redoak.co.jp

森戸設計(株)
代 表:森戸 大輔
所在地:福岡市中央区小笹3-12-8
設 立:2023年7月
TEL:092-791-3103
FAX:092-791-3032
URL:https://moricolle.jp

(後)

月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?

福岡のまちに関すること、再開発に関すること、建設・不動産業界に関することなどをテーマにオリジナル記事を執筆いただける方を募集しております。

記事の内容は、インタビュー、エリア紹介、業界の課題、統計情報の分析などです。詳しくは掲載実績をご参照ください。

企画から取材、写真撮影、執筆までできる方を募集しております。また、こちらから内容をオーダーすることもございます。報酬は1記事1万円程度から。現在、業界に身を置いている方や趣味で再開発に興味がある方なども大歓迎です。

ご応募いただける場合は、こちらまで。その際、あらかじめ執筆した記事を添付いただけるとスムーズです。不明点ございましたらお気軽にお問い合わせください。(返信にお時間いただく可能性がございます)

関連記事