2024年07月21日( 日 )

「音」に強い拘りを持つ人たちの話(前)

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大さんのシニアリポート第129回

 運営する高齢者の居場所「サロン幸福亭ぐるり」(以下「ぐるり」)を利用する常連客の半数近くが難聴者だ。会話の音量が半端ではない。互いに大声で話す。少々大袈裟にいえば狭い部屋はいつも大音量のライブハウス状態。亭主である私も負けずに声を張り上げるから、常に喉はカラカラ。のど飴は欠かせない。ただ常連客の耳には普通に聞こえるらしく、補聴器云々の話は出たことがない。その声音(こわね 音色)に敏感な私にとっていつも辟易とさせられる。

生録の醍醐味

システムコンポ イメージ    私の趣味の1つに「生録」がある。文字通り自然界(アーティストの生演奏、取材相手の生録音含む)の音をそのまま収録することである。きっかけは録音専門雑誌(雑誌名不明)のワンコーナー(連載)「REC WAY HOPPING」にリポーターとして同行したことだ。これは全国に残されたさまざまな音源(自然音から人の声まで)を現地生収録するという企画もの。千葉の白鷺の楽園、能登の御陣乗太鼓、越中八尾の風の盆(越中八尾節と胡弓)、そして長崎県島原市在住の宮崎康平氏(倒産寸前の島原鉄道を再建。激務で失明。名著『まぼろしの邪馬台国』、「島原地方の子守歌」原作者)のインタビューまで、多方面にわたり収録した。

 収録の魅力に取り憑かれた私は、ドイツの名器「UHER(ウーヘル) 4200 REPORT STEREO IC」(オープンリールデッキ)を20万円(当時)で購入し、途中から録音班に加わった。プロの録音技師から技術を伝授。このことは後日、高田(現・上越市)の瞽女(ごぜ)の演奏収録に非常に役立った。すべてオープンリールデッキでの収録なので、当時としては最高の音質だった。しかし、現在手元にある年代物のTEACのデッキはビクとも作動せず、再生することができない。オープンリールテープも手つかずのまま眠り続けている。時代はカセットデッキ→ウォークマン→CD・MD→IC…と、激変していく。どうしても聞きたい、資料として残したいオープンリールテープは、CDにコピーしてくれる店に持ち込んで聞き直している。人の手によるアナログ録音というのは、真実暖かい音として蘇らせてくれる。

最新のレコード再生にはデジタルの技術も含まれている

アナログレコード イメージ    最近レコードが見直されている。アナログオーディオの専門誌季刊『アナログ』の編集長野間美紀子氏が、朝日新聞(2023年11月28日)「耕論 『アナログ』はどこへ」のなかで、「買ったレコードを抱くようにして持ち帰り、ターンテーブルに置いて、針をそっと下ろして……。と、その前に、針についたほこりや針圧は大丈夫かな。そういう身体感覚が、デジタルネイティブの若者にも新鮮なのかもしれません」「レコードは『聴かされる』というより、手間をかけた分、音楽と向き合って聴きます。細かい部品の組み合わせにより、音づくりを楽しむこともできます。レコードの音は耳当たりが良く、音量を上げても不思議とうるさくありません。盤の溝には、アナログの波形を描く信号が連続的に刻まれています」とレコードの魅力を語っている。アメリカではレコードの販売枚数がCDを抜いた(22年調査)という。日本でも中古レコードが若者を中心に活況を呈している。

 私はデジタルの時代になっても、ネットで昔の製品を求めた。しかし、中古品にも限界(高価で手が出せない)があり、デジタルの音に頼らざるを得なくなる。そこで出会ったのが、ONKYOのネットワークステレオレシーバーTX8050というアンプ。とにかく盛りだくさんだ。さまざまなデジタル系端子に加えて、PHONO(レコード)端子、FM・AMチューナー付きなど、アナログ系の端子も内蔵されている。レコードファンにはうれしい限りである。野間氏が「デジタルの目標は常にアナログである」というように、最近のオーディオ機器のなかにはデジタル技術(BluetoothやWi-Fi機能を内蔵)を取り入れているものもある。若いユーザーが求める「音場」というなかには、「デジタルとアナログの共存」というテーマが欠かせない。

(つづく)


<プロフィール>
大山眞人(おおやま まひと)

 1944年山形市生まれ。早大卒。出版社勤務の後、ノンフィクション作家。主な著作に、『S病院老人病棟の仲間たち』『取締役宝くじ部長』(文藝春秋)『老いてこそ2人で生きたい』『夢のある「終の棲家」を作りたい』(大和書房)『退学者ゼロ高校 須郷昌徳の「これが教育たい!」』(河出書房新社)『克って勝つー田村亮子を育てた男』(自由現代社)『取締役総務部長 奈良坂龍平』(讀賣新聞社)『悪徳商法』(文春新書)『団地が死んでいく』(平凡社新書)『騙されたがる人たち』(講談社)『親を棄てる子どもたち 新しい「姥捨山」のかたちを求めて』『「陸軍分列行進曲」とふたつの「君が代」』『瞽女の世界を旅する』(平凡社新書)など。

(第128回・後)
(第129回・後)

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