2024年05月03日( 金 )

自民党派閥解消論の背後に菅前首相の影

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 26日の通常国会を前に、自民党の「政治刷新本部」は16日、党本部で150人の議員が参加して政治改革の議論を本格化させた。

菅前首相の思惑

 この会合は、全所属議員が参加可能であった。岸田文雄首相も3時間におよんだ会合に最後まで参加した。

 安倍派(清和政策研究会)と二階派(志帥会)の政治資金規正法の違反事件を受け、派閥や政治資金の在り方の改革が不可避であり、このままでは国民の信頼が地に落ちるとの危機感が強まっている。

 刷新本部は、麻生太郎副総裁や菅義偉前首相が最高顧問であるなど党幹部を中心に構成されており、(※名簿 画像にて)メンバーに1回生の議員はいない。そのため、16日の会合は「当選回数が少なく、国民感覚に近い1回生議員の声もきくべき」といった声が強いなかで開催されたという。

 会合において焦点となったのは、派閥の在り方についてであった。最高顧問を務める菅前首相(無派閥)は、従来派閥の解消を主張している。

 11日に開かれた刷新本部の初会合でも、菅前首相は「非常にわかりやすいのが派閥の解消。スタートラインとして、そうしたことを進めていく必要がある」と発言し、小泉進次郎元環境大臣は「派閥という言葉を使うのにはばかられるようなことがあるのであれば、派閥はやめるべき」と同調した。

 三原じゅん子(参議院)、三谷英弘(衆議院)、牧原秀樹(同)各議員も同様の意見を述べた。

 16日の会合においても、複数の無派閥議員が派閥解消を唱えた。石川昭政衆議院議員は「派閥を解消し、原因を根本から絶つべきだ。岸田派から解消してほしい」と主張し、和田政宗参議院議員は「私は派閥を全廃すべきであり、この声は国民の声だというふうに思う」と述べた。

派閥の教育機能を評価する声

 こうした声の一方で、派閥所属議員からは、派閥の役割を評価する声が挙がった。
 「(派閥の)人材育成とか、組織をどうまとめていくかというのは大事な点で、そういう面で派閥というのは一定程度役割があると思っています」と述べたのは、二階派の鷲尾英一郎衆議院議員。民主党出身で、2019年に自民党に入党し二階派に所属している。

 当社は、昨年末、二階派事務総長を務める武田良太元総務大臣のインタビューを行ったが、派閥の在り方について次のように述べていた。

「派閥というのは自民党の伝統的な政策集団という機能があるとともに、互助会としての役割ももっています。政策を立案するうえでも、国民各層から寄せられる陳情を処理・解決していくうえでも、派閥が大きな母体となっています。無派閥を選択したり、単独行動に出たりする方もおられますが、それでは組織上のコンセンサスや協調を通じて物事をつくり上げていくという協調性を学ぶ機会が得られません。自民党の伝統的な教育システムである派閥は、目には見えませんが、大きな役割があると思います」

 派閥の裏金問題で検察の捜査が行われ、現職議員の逮捕者も出たが、自民党という歴史のある政党のなかに、いろいろ批判を受けながらも、なぜ派閥という政策集団が複数存在してきたのか、冷静に考える必要がある。

 派閥解消論を唱えるのは、ほとんどが菅前首相に近い議員であると指摘する自民党関係者の声も聞かれ、「菅さんの地盤の神奈川県を中心に、都市部の議員や一匹狼の議員が派閥をなくせといっていますが、どんな組織でも人が集まれば派閥ができます。派閥をなくせば執行部の力が強くなりすぎ、小泉・安倍時代同様の一強体制となります」との見方は、あながち間違いではないだろう。

 派閥をめぐっては、麻生氏ら派閥会長を務めるメンバーが3人と、派閥解消を主張する菅前首相など無派閥議員との溝は深い。岸田首相自身、宏池会という派閥の領袖を先日まで務めており、「伝統的な政策集団」(武田良太氏)といわれてきた派閥をなくすことは容易なことではない。

連座制導入へ

 安倍派に関しては、複数の同派議員から安倍派の解消を主張する声があり、同派の宮沢博行衆議院議員(前防衛副大臣)は、「安倍派は解散すべきだ。私は派閥に残って介錯する」と述べるなど、これまでの派閥運営が一部の幹部によるもので、責任を取るには安倍派は解散する必要があるとの声が日に日に高まりつつある。

 派閥ともう1つ焦点である政治資金に関して、自民党は政治資金規正法を改正し、収支報告書に虚偽記載があった場合、会計責任者だけでなく議員にも責任がおよぶ「連座制」を導入する方向にあるという。16日の会合でも、複数の所属議員から導入を訴える声があがった。

 連座制は公職選挙法に規定があるが、政治資金規正法にはない。適用条件などを慎重に協議したうえで、通常国会で規正法改正を目指すとみられる。岸田首相が、議論を踏まえてどのような結論を下すのか、注目される。

【近藤 将勝】

政治・行政記者募集

 企業調査会社(株)データ・マックスが手がける経営情報誌『I・B』やニュースサイト「NetIB-News」は、信頼性の高い情報ソースとして多くの経営者にご活用いただいています。メディアとしてさまざまな情報を取り扱っており、国内外や地元福岡の政治動向に関する情報は経営者以外にも自治体組長や国会議員、地方議員などに幅広く読まれています。

 そこで、さらなる記事の質の向上を目的に、福岡の政治・行政、また中央政界の動向などをテーマにオリジナル記事を執筆いただける政治・行政記者を募集しております。

 記事の内容は、インタビュー、政局や選挙などを中心に扱います。詳しくは掲載実績をご参照ください。

 企画から取材、写真撮影、執筆までできる方を募集しております。また、こちらから内容をオーダーすることもございます。現在、業界に身を置いている方や行政取材に興味がある方なども大歓迎です。

 ご応募いただける場合は、こちら(hensyu@data-max.co.jp)まで。その際、あらかじめ執筆した記事を添付いただけるとスムーズです。不明点などがございましたらお気軽にお問い合わせください(返信にお時間いただく可能性がございます)。

関連記事