2024年06月15日( 土 )

逆転ではなく「シェア」 、家事シェア時代の生活を考える(2)

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子どもの問題は母親の責任という呪縛

_家事をどうやって楽するか。 出典:ビックカメラ.com
家事をどうやって楽するか。
出典:ビックカメラ.com

    遅刻、宿題忘れ、忘れ物…その他、学校で子どもが問題を起こすと、とりあえず学校から家庭に電話がかかってくる。昨今は仕事その他で日中親が家に不在なケースが多く、連絡先に携帯電話番号を記載するようにいわれることも多いが、問題行動や体調不良の「ご連絡」は、両親がそろっている家庭でも十中八九、母親にかかってくる。おそらくは“子どもの諸問題は母親の責任”という、日本全国津々浦々に行き届いた前提を基に、先生は母親に電話をするのだろう。これも、古くから根付いている性別役割分担システムの1つだ。

 「日本経済は女性が母親であり、働き手であることを必要としている」というのは、ボストン大学の文化人類学者メリー・アイザック・ホワイト。母親として経済の消費活動に関わると同時に、「必要なときには雇用されるけれど、不要なときには職場から離れる臨時の労働力」として、融通の利く予備軍という位置づけ。昭和社会にとって、都合の良い人材として期待されているというわけだ。

 女性が家事から抜けられない生理的・能力的な理由はある。どう頑張ったって男性に子どもは産めないし、幼児期の母子の連帯に割って入ることは難しい。女性のコミュニケーション能力が高いゆえ、ママ友という集団が結束され、そのつながりで地域学術の連携ができているのもまぎれもない事実。父親同士ではどうしても表情固く、高圧的な姿勢を崩せず、何かとギクシャクしてしまう傾向は多い。必然的に、子どもの連絡ごとは調整能力の高い母親へ…といった流れとなる。

 子どものこと、食事のこと、洗濯のこと、掃除をしていれば、そこに「名もなき家事」が付いて回ることになる。「女性から家事をどうやって抜き取り切り離していくか」、この課題に、正面から向き合っていく必要があるだろう。

男が家庭に入ると丸く納まるのか

 一方では、女性を家事全般から引き離す弊害も考えてみたい。日本で共働き世帯数が片働き世帯数と初めて並んだのは1991年のこと。その後は10年ほど、抜きつ抜かれつの状態が続き、2000年以降は、共働き世帯が片働き世帯を大きく上回るようになった。

 17年の惣菜市場動向によると、内食、中食、外食を合わせた食市場は、15年までの10年で約7%拡大した。その牽引役になっているのは、弁当や惣菜などいわゆる「中食」で、その伸びは外食が2.6%だったのに対し、22.6%と圧倒的な差をつけた。中食売上の中心は弁当、おにぎりなどのコメ製品だ。(一社)日本惣菜協会では、「高齢化・核家族化・女性の社会進出などライフスタイルの変化を反映して、惣菜の利用が大きく増加している」としている。

 戦後、日本の食生活は洋風化することでタンパク質などを補う方向へ向かい、日本人の体位・体力の増進に大きく役立った。しかしその後、日本の食生活はさらなる「洋風化」また「多国籍化」、そして新たに「外注化」といった方向へと進んだことで、現在では栄養バランスの崩れが懸念されるようになった。孤食化や個食化など、食にまつわる問題は多岐にわたる。これも「母親の不在」が、家族を弱らせているといえる。

男が家庭に入ると丸く納まるのか pixabay
男が家庭に入ると丸く納まるのか pixabay

 「家事育児を担っていた女性の職場進出」が、まさに家庭機能の低下や弱体化要因の1つに挙げられていく。それだけでなく、戦前日本の「家」制度の下では、「性別役割分担システム」の呪縛によって母親として大きな負担を背負いながらも、家庭としては安定していたという側面もある。直系家族制により同居原則が確固のものとして成立しており、老人の同居扶養は制度的にも意識的にも、また習慣的にも安定していた。しかし、戦後の女性の職場進出と核家族化で「性別分業意識の揺らぎ」が起き、家庭機能にも大きな影響を与えている。やはり考えなければならないのは、父親などの母親以外の家族がどうやってそこに入っていけるかにかかってくる。

(つづく)


松岡 秀樹 氏<プロフィール>
松岡 秀樹
(まつおか・ひでき)
インテリアデザイナー/ディレクター
1978年、山口県生まれ。大学の建築学科を卒業後、店舗設計・商品開発・ブランディングを通して商業デザインを学ぶ。大手内装設計施工会社で全国の商業施設の店舗デザインを手がけ、現在は住空間デザインを中心に福岡市で活動中。メインテーマは「教育」「デザイン」「ビジネス」。21年12月には丹青社が主催する「次世代アイデアコンテスト2021」で最優秀賞を受賞した。

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