2024年05月27日( 月 )

逆転ではなく「シェア」 、家事シェア時代の生活を考える(3)

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「家事より勉強」「料理くらいできないと」

家事も変わろうとしている PhotoAC
家事も変わろうとしている PhotoAC

    一般的に、女の子のほうが家事に関心を持ち、男の子はあまり関心を持たずに来る傾向が強かった。親も娘には熱心に家事を教えても、息子にはあまり教えてこなかった。

 しかし、自立する女性が増えた平成以降、「料理くらいできないと息子はモテない」「家事ぐらいできないと結婚が難しい」といったように、息子に家事を教え込む母親が目立つようになる。女の子に対しては、「家事より勉強」という傾向が強くなってきた。自分が「女の子だから」と差別され、家事をさせられてきた実感を持つ母親が多いからでもある。その結果、必ずしも女性の家事能力が高く、男性の家事能力が低いとは限らなくなってきている。「性別役割分担システム」の逆転現象が、粛々と芽吹いてきたのだ。

 人によって得意な家事、不得意な家事は異なる。料理が好きな人がいれば、掃除が得意な人もいる。全部が好きな人も、家事全般に苦手意識を持つ人もいるだろう。厄介なのは、明確な基準がないことだ。そして、次の世代の子どもたちも新しい価値観を纏った夫婦像に照らされ、独自のスタイルを持ち始めている。

 日本ではかつて、家庭を持ち子育てする女性の多数派が主婦だったが、今では仕事を持ちながら家事の責任も担う女性は増えてきた。父親もそのスタイルを理解し、自ら率先して家庭内労働を支える人も増えてきている。それでも、家事・子育てに参加したい気持ちがあっても、物理的に実行する時間がない男性は大勢いるはずだ。

家事を無理なくシェアする

 現役世代における既婚女性の3分の2以上が、仕事と主婦業を掛け持ちする時代となった。少し前までは抵抗感を示す人が多かった家事代行サービスも、市場が拡大中で、家事代行スタッフに掃除や料理などを頼むことが珍しくない時代は、すぐそこまで来ている。出張シェフによる「料理代行」「つくり置きサービス」なども人気が高い。

つくり置きサービス 家事代行サービスKIDS LINE HPより
つくり置きサービス
家事代行サービスKIDS LINE HPより

    家のなかから意識が変われば、少しずつ社会も変わっていくだろうか。私自身も日々、住まいのリノベーションのお手伝いをしているなかで感じているのは、(20~30代くらいのご夫婦が中心だが)女性だけでなく、男性の存在も家庭内でどんどんと大きくなってきていることだ。家事のシェアに始まり、子育てへの参加、積極的な家庭内労働を見据えて理想の家づくりをされている男性が増えてきているのは、間違いないだろう。なぜなら、日常積み重ねられる名前のない家事労働こそ、私たちの人生を支える大切な要素で、ちょっとした配慮やフォローといった見えにくい日々の蓄積が暮らしを豊かで快適にするし、何より家族への愛情表現であることは間違いないのだ。

 男・女の役割逆転ではなく、役割をシェアすることが重要である。「どちらか片側に」では、これまでと同じ轍を踏むことになってしまう。必要なものは外部のサービスや機械をうまく利用し、そこで得た時間を家族のコミュニケーションの時間に充てるといったように、効率と効能をうまく配分することが肝要だろう。

 働き方が変わりつつある昨今、家のなかでもその縛りから解放され、雪解けも近いのかもしれない。日々の仕事のなかで、「女性も男性も」「お母さんもお父さんも」「妻も夫も」、家事の労働、名もなき家事の行動を少しでも減らしてあげられないか。そんなことを考えながら、私自身も日々住宅設計と向き合っている。

(つづく)


松岡 秀樹 氏<プロフィール>
松岡 秀樹
(まつおか・ひでき)
インテリアデザイナー/ディレクター
1978年、山口県生まれ。大学の建築学科を卒業後、店舗設計・商品開発・ブランディングを通して商業デザインを学ぶ。大手内装設計施工会社で全国の商業施設の店舗デザインを手がけ、現在は住空間デザインを中心に福岡市で活動中。メインテーマは「教育」「デザイン」「ビジネス」。21年12月には丹青社が主催する「次世代アイデアコンテスト2021」で最優秀賞を受賞した。

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