逆転ではなく「シェア」 、家事シェア時代の生活を考える(4)
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母親、父親を助ける家事軽減アイデア
(1)「ユーティリティ」を捻出する
ユーティリティとは、「多目的室」とも呼ばれる。とくに使い方を限定しないで、何にでも使えるスペースという意味で計画する部屋のことだ。たいていはキッチンの近くに設けて、家事室と同じように洗濯機を置いたり、アイロン台を設けたりするが、スペースの広さによっては雨の日の洗濯物干し場(取り込み場)になったり、ちょっと手の空いたときに読みかけの本を広げたり、パソコンで調べものをする場としても使える。
たとえばユーティリティを独立した部屋とせず、キッチンと地続きにまとめることで、調理をはじめいろいろな用事をいくつか同時に進めることができる。家事の習性は本人の動作や考え方、家族の動向に委ねるしかないが、少なくともこのような空間的な手助けをしていくことは可能だ。キッチンの隣に「ユーティリティ」の空間を捻出してみてはどうだろうか。
(2)お手伝いを誘引できる食器棚
食器棚の大きさはさまざまあるが、奥行きに関しては驚くほど落ち着きやすい寸法がある。40~45cmだ。これは制作側の思惑もあって、材料採りの関係でコストを抑えやすい業界でも扱われやすい寸法値だ。食器棚は制作時、表面に多種多様な材質の仕上げ板を貼り合わせていくが、その材料板の一般的サイズが90cm。大きくは120cmなどもあるが、価格が跳ね上がる。90cmを半分にすれば45cmなわけで、家具をつくる際、材料が無駄なく使える。一番の贅沢使いは50cm程度というわけだ。
では、その考えを踏襲して食器棚を30cmにしてみたらどうだろうか。実はキッチンのアイテム(食器、鍋類、調理器具等)は、直径30cm以下がほとんどである。奥行きを浅くすることで(コスト面はさておき)アイテムが必然的に横一列に整列する。「小皿を出して」と誰に頼んでも迷わないし、適当にしまわれる事態もなくなる。45cmだと微妙に奥行きが深いため、ジグザグ置きなどして奥のアイテムが視界から隠れてしまう。収納のために無理やり押し込んで忘れたマグカップなど、得体のしれないゾーンには誰しも足を踏み入れたくないものだ。食器の片付けや配膳の手伝いなど、誰でもできることは誰かに頼む。食器棚を変えて家族を巻き込むことで、家事の負担を減らす。食器の出し入れの手間1つでも工夫ができれば。
(3)「電気の消し忘れ」問題は機械を変える
迷わず人感センサー付きの照明器具に変えよう。できるだけ“名もなき家事”を最小限に減らせるように、機械に任せられることは機械頼みに。「電気をつけっぱなしにしたのは誰だあ!」と注意して人を変えるのではなく、設備を変えることで、天井を見て歩く必要がなくなるかもしれない。
(4)“家族参加型”の家電選び
電気ポットを2L近い大型を選んでみよう。「カップ麺に便利」「パスタを茹でるお湯をすぐ沸かせる」と、とくに男性陣から喜ばれるかも。“たまには自分で料理してみる”など、そんな自炊しやすい環境を家電選びからしてみる。
(5)お弁当代をもらってみる
少し志向は違うが、お弁当をつくるモチベーションを上げるために「お弁当代」ルールをつくってみるのも楽しいかもしれない。昼食を外食すると、(一食1,000円なら)1年で約25万円。3分の1程度の一食300円でも、つくる側にお弁当代を払う。弁当をつくってもらう側だけが1,000円得するのではなく、双方が得をするお互いに嬉しい状態をつくることで、家事を見えるかたちで価値化させるのはどうだろうか。貯まった“お弁当貯金”で、月に一度外食の楽しみを増やしても楽しいだろう。
(了)
<プロフィール>
松岡 秀樹(まつおか・ひでき)
インテリアデザイナー/ディレクター
1978年、山口県生まれ。大学の建築学科を卒業後、店舗設計・商品開発・ブランディングを通して商業デザインを学ぶ。大手内装設計施工会社で全国の商業施設の店舗デザインを手がけ、現在は住空間デザインを中心に福岡市で活動中。メインテーマは「教育」「デザイン」「ビジネス」。21年12月には丹青社が主催する「次世代アイデアコンテスト2021」で最優秀賞を受賞した。関連記事
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