2024年06月15日( 土 )

「孤独」の処方箋(後)―孤独を楽しむ間取りとは―(3)

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 日本のサラリーマンは忙しすぎる。たとえば50代以上の「モーレツサラリーマン」であれば、仕事最優先、出世や昇進を目指してがむしゃらに働くなかで、社外のコミュニティ活動などになかなか時間が取れない。ここのところの「働き方改革」で突如暇ができても、いったい自分が何をやりたいのかわからないと戸惑う人も多い。「イクメン世代」の30代・40代の男性たちは、仕事も家事も頑張れとハッパをかけられ、自分の時間もままならない。本人は頑張っているつもりでも、妻にはダメ出しをされ、毎日家庭と仕事との板挟み…。男たちは結局、友人との時間、趣味の時間、自分の時間をあきらめざるを得なくなってしまう。自分の人生なのに借りもののように生きた結果、周囲との関係性を深めることができない。孤独に陥りやすい男性、その原因を推考し、全方位から対症方法を考えてみたい。

SNSをやめてみる

SNSをやめてみる photoAC
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 私たちはスマホやタブレットが手放せない。仕事でパソコンを使用している人なら、一日のほとんどの時間、スクリーンに映る情報に晒されていることだろう。こういうことが当たり前になった日常のなかで、私たちはふとした瞬間、異様な疲労感を覚える。誰とでもつながっているからこそ、形容しがたい孤独を感じる。そんな瞬間を、現代に生きる人なら誰もが経験しているはず。

 どうしてこのような状況に陥ってしまったのだろうか。おそらく、細かい情報の塵が山ほど頭に積もり、何かをゆっくりと立ち止まって考えるための空き容量が不足しているからではないだろうか。“みんなに置いていかれたくない”という漠然とした同調意識に支配され、自分が何を欲しているのかを深く考えなくなっている。

 通勤時間で読書をしようと思っても、SNSが気になってしまいそちらに目が行く。布団に入ってちょっとスマホをいじり始めたら止まらなくなり、翌朝寝不足のまま会社や学校に行く羽目になる。無駄だとわかっているのに、そこから離れることができない。そうして、頭が脈絡のない雑多なものでいっぱいになってしまう。この不健全なサイクルの根底には、言い表しがたい疲労と孤独感が横たわる。

 何らかの欲望や関心、心が動いたときに「目標」や「目的」は創設されるが、それを達成しようとする過程で蓄積される疲労は、たとえ最終的にうまくいかなくなったとしても悪くないものだ。それは、目的達成のために必要不可欠なもの。これは、ちょうどお腹が減って何かを食べるのと同じくらい、自然で健全な現象だ。何を食べたいのかがよくわからないとき、そこに「目標」や「目的」は創設されない。要するに「何かを成し遂げたいから情報を集める」ではなく、単にやるべきことがなくて退屈だからスクリーンを見ている。目的なき情報収集はそのプロセス全体に意味を感じることができなくなり、じわりじわりと疲労が堆積していく。収穫できないものを延々とつくり続けているようなイメージだ。昔はもっと収穫できる、確実につかみ取れるものを追いかけていたように思う。SNSから少し距離を取って、一度リセットしてみるのも手かもしれない。

孤独をうまく使う

 多くの日本のビジネスパーソンは、仕事の集中の仕方は心得ていても、リラックスしたり休んだりするということが苦手なようだ。脳を休ませてアイドリングさせる時間がなければ、クリエイティブなことは思いつかないといっても過言ではない。ボーッとした時間を過ごす目的はいうまでもなく、脳を休めること。では、なぜ脳を休ませるのかといえば、一時的に集約された情報や記憶を整理し、定着させるためだ。「ただただ、ボーッと過ごす」という時間をどれだけ確保できるかが、クリエイティブに生きるカギになる。

 皆さんも記憶にあるだろう。1人で車を運転中、喧騒を横目に走り続けていると、何やら次から次に新しいアイデアが湧いてくるあの感覚。ボーっとした時間が脳のデータベースを検索し、記憶を整理している。過去の言動を内省し、未来の予定を組み直している。「ボーッと過ごす」ことは、これまで思いつかなかったような「閃き」を生み出してくれるのだ。閃きというのは、ただオフィスの机に向かっていれば浮かんでくるものではないということは、誰もが経験していることだろう。新しい発想は、こんなときにこそ偶発的に浮かび上がってくる。ここでも、内省できる1人時間とうまく付き合っていく工夫がある。
 閃きやアイデアは、基本的に脳がリラックスしている状態でなければ生まれにくいといわれている。つまり、閃きに必要なのは、「集中とリラックス」のバランス。これがまさに「ただただ、ボーッと過ごす」ということの効果なのだ。

 SNSから一定時間離れてみるのも1つの手だが、私たちの脳には「何もしない」、あるいは「先延ばし」の時間がもっと必要だ。ときどき脳を自由にして余白をつくり、日々の出来事を振り返る時間をつくる。ゆっくりした“大人時間を大事にする”とでも呼んでおこう。孤独は毒にも薬にもなり得る。適度に孤立することも利用しながら、完全なる社会からの孤独からは抜け出したい。「短期孤立」はOK、「長期孤独」はNGだ。孤独をうまく取り入れていくためには、何が有効だろうか。

ただただ、ボーッと過ごしてみる photoAC
ただただ、ボーッと過ごしてみる photoAC

(つづく)


松岡 秀樹 氏<プロフィール>
松岡 秀樹
(まつおか・ひでき)
インテリアデザイナー/ディレクター
1978年、山口県生まれ。大学の建築学科を卒業後、店舗設計・商品開発・ブランディングを通して商業デザインを学ぶ。大手内装設計施工会社で全国の商業施設の店舗デザインを手がけ、現在は住空間デザインを中心に福岡市で活動中。メインテーマは「教育」「デザイン」「ビジネス」。21年12月には丹青社が主催する「次世代アイデアコンテスト2021」で最優秀賞を受賞した。

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