ムスリムに配慮した給食との誤情報~北九州市に1,000件超の苦情

 外国人政策をめぐり全国の自治体に苦情が寄せられているなか、北九州市の学校給食について、ムスリム(イスラム教徒)向けのハラル(教義上の禁忌)給食を決めたとの誤情報がSNSで拡散し、同市には1,000件超の苦情が殺到した。

 これを受けて市教育委員会は24日に会見を行い、アレルギーなどに配慮した取り組みはあるが「ハラル給食を決定した事実はない」としたうえで「1人でも多くの子どもが友達と一緒に給食を楽しめるよう努力と工夫を重ねている」と説明した。

 事の発端は2023年6月にムスリムの女性から、イスラムの教えで禁止されている豚肉などを除去した給食をムスリムの子どもに提供することを求める陳情書が市議会に提出され、所管の教育文化委員会で審査が行われたが、陳情は採択されていない。市教委は「あらゆるニーズに対応することは難しい」としていた。ところがSNSでは、陳情が採択され、市教委がムスリム対応の給食を決定したという事実と異なる情報が拡散し、北九州市に電話やメールでの苦情が相次いだ。

 関連して今年3月の市議会では、自民党・無所属の会の市議より、ムスリムの富裕層を念頭に北九州空港でのハラル物流の促進と市場開拓に関する質問が行われている。北九州市港湾空港局長は「市としてはさまざまな情勢を注視しつつ、北九州港や北九州空港の利用促進に向けた将来的なハラル物流の対応について、どのような課題があるのかなど、まずは地元の物流事業者や港湾と空港の関係者との必要な情報交換に努めてまいります」と答弁していた。

 近年、グローバル化やインバウンド増加に伴い外国人との接点が拡大する一方、保守層を中心に反発も強まっている。そのため、自治体の取り組みに対する誤解に基づく情報が拡散されやすい傾向がある。SNS上の情報がどのような背景を持つのか、慎重に見極める必要がある。

【近藤将勝】

関連記事