世界が注目する味噌とヨーグルトの健康増進効能

　前回、本欄で「ピーナッツ」の効能について紹介したところ、多くの皆様から積極的な反応が寄せられました。中には「これから直ぐにピーナッツを買いに行きます」との連絡もあったほどです。健康長寿に関心をお持ちの方が急増していることを実感しました。

    更に、最近の医学研究によると、味噌やヨーグルトなどの発酵食品には、がんリスクの低減や総死亡率の低下などに大きく寄与することが明らかになっています。発酵させた大豆ペーストである味噌には、抗老化作用のある抗酸化物質が含まれており、乳がんの再発率を低下させる可能性もあり、腸内環境を整え、骨を強化するミネラルや植物性エストロゲンも含まれているからです。

　また、ヨーグルトの摂取は、特定の大腸がんのリスク低下と関連しており、味噌と同様に、健康的で多様な腸内細菌叢の維持に役立ちます。とはいえ、効果を最大限に高めるには、プレーンで無添加のヨーグルトを選び、味噌は沸騰させずに食品に加えることが大事。なぜなら、その効果に不可欠な生きたプロバイオティクスを損なわずに済むからです。

　何千年もの間、味噌は日本などアジアの食生活の定番であり、ヨーグルトは世界中で朝食として愛されてきました。これら2つのシンプルな発酵食品が、長期的な健康の礎として、今では世界的に注目を集めています。

　現代の栄養科学と歴史的な食生活の知恵が融合し、味噌とヨーグルトは、消化を助けるだけでなく、がんリスクの低減や老化による細胞の消耗を抑える可能性を秘めていることが立証されてきたわけです。実に心強い限りではないでしょうか。

　言うまでもなく、発酵は人類最古の食品保存方法の一つですが、その価値は保存期間をはるかに超えています。なぜなら、発酵のプロセスでは、有益な細菌と酵母が食品中の糖とデンプンを分解し、プロバイオティクス、生理活性ペプチド、有機酸を生成するからです。これらの化合物は、消化管内の広大な微生物群である腸内マイクロバイオームに栄養を与え、健康全般と密接に関連しています。

　多くの研究によると、発酵食品は腸の粘膜内壁を改善し、病原菌に対するバリアを強化し、がんを含む慢性疾患の原因となる全身性炎症を軽減することが示されています。そのため、味噌やヨーグルトなどの発酵食品は「天然の栄養強化機能性栄養素」と目されているほどです。

　ご存知、味噌は発酵大豆、米麹、塩から作られる風味豊かなペーストで、世界に冠たる長寿国、日本の食生活の柱です。味噌にはフリーラジカルを中和し、細胞の損傷を遅らせる抗酸化ペプチドが豊富に含まれています。日本の成人9万人以上を追跡調査した結果、味噌などの発酵大豆製品の摂取量が多いと、全死因による死亡リスクが約10%低下することが明らかになりました。

　更に注目すべきは、味噌とがんの転帰との関連性です。というのも、味噌を含む大豆製品を多く摂取した乳がん患者は、再発率と死亡率が有意に低下したことが示されているではありませんか。味噌に含まれるイソフラボンと独自の発酵代謝物が、ホルモンシグナル伝達の調節や異常細胞に対する免疫監視の強化に役立つ可能性があるというわけです。

　また、乳酸菌で牛乳を発酵させて作られるヨーグルトは、何世紀にもわたって様々な文化圏でその健康効果が認められてきました。『本草綱目』などの古代中国の医学書では、ヨーグルトは「乾燥を潤し、腸を解放し、体を強くし、熱毒を解消する」食品として推奨されているほどです。

　加えて、最近の研究では、ヨーグルトの摂取と大腸の健康との関連性が明らかにされてきました。Gut Microbes誌に掲載された研究では、週に2回以上ヨーグルトを食べると、特定の種類の大腸がんのリスクが20%低下することが確認されています。

　とはいえ、効果を最大限に高めるためには、注意点を把握しておく必要があります。ヨーグルトの場合は、腸の炎症を促進する可能性のある砂糖、乳化剤、増粘剤が添加されていないプレーンタイプを選びましょう。

　また、味噌の場合は含まれる生きたプロバイオティクスが熱に弱いため、保存するには、味噌ペーストをスープや料理に上手く混ぜ込む必要があります。こうした点に留意しながら、味噌やヨーグルトなど発酵食品で健康長寿を目指そうではありませんか。これらにピーナッツが加われば、まさに「鬼に金棒」と言っても過言ではないでしょう。

著者：浜田和幸
【Blog】http://ameblo.jp/hamada-kazuyuki
【Homepage】http://www.hamadakazuyuki.com
【Facebook】https://www.facebook.com/Dr.hamadakazuyuki
【Twitter】https://twitter.com/hamada_kazuyuki