全管協及び自民党ちんたい支部連合会が推進する党員募集に政治資金規正法違反の疑い浮上(6)
第3回記事は「九州の事例」、第4回記事は「関西の事例」、第5回記事は「北海道の事例」を取り上げた。今回は「鹿児島・熊本、そして東京の事例」を紹介する。
鹿児島・東京では党員退会や党員全件更新辞退の動き
鹿児島でもこれまで新規獲得した党員数の報告は、全管協本部に対しても行われてきた。その実態について、鹿児島県内の全管協加盟企業の代表者Bは次のように語った。
「鹿児島の会員企業でも、他人の党費を支払っている話があります。私自身も全管協本部の圧力や、自民党ちんたい支部連合会の不適切な説明によって、自分の会社で社員などの党費を支払ってしまったが、『全管協をよくする会』の活動(コンプライアンス・ガバナンスの改善)によって、圧力や不適切な説明を前提として党員募集をすべきでないことに気づきました。そこで先日、自由民主党鹿児島県ちんたい支部の支部長に対して、党員全員の退会届を提出しました」
Bが実際に自由民主党鹿児島県ちんたい支部長に提出した自民党員退会届を入手したので公開する。
熊本県の全管協会員にも取材をした。「当社は地道な党員獲得を行ってきました」と述べたうえで「自民党の党員更新時期が近くなると、営業や事務職など一人ひとりのデスクに行って、『今年もお願いします』と依頼していました。嫌な顔をされる方もいれば、すぐ党費を支払ってくださる方もいて骨の折れる活動です。一方で、熊本県の他の会員からは、他県同様に会社や会社の代表者が党費を負担していたケースもあると聞いています」と語った。
さらに取材を進めていくなかで、東京でも党員全件更新辞退の動きがあることがわかった。
都内の全管協加盟企業の代表者Cは全管協名誉会長の高橋誠一氏から「1社で最低1,000人以上の党員を獲得する」よう指示を受け、高橋氏が定めたノルマを達成するために長年必死で取り組んできたという。1社で1,000人以上の党員を集めるということは並大抵のことではないが、圧力に屈し、長年にわたり党員募集に取り組んできた。
全管協との窓口を担当している担当者に圧力の実態を確認すると、定期的に全管協本部の会議室に呼び出され、会議の席で「党員数が今何件なのか」「いつ達成するのか」など言われ続け、強い圧力を感じていたという。このような状況のなか、「全管協をよくする会」の活動によって、本来党員は個人の自由な意思で入党を判断しなくてはならないことを学び、我々が圧力を受けて党員を募集すべきではないことを改めて確認し、1,000件以上にのぼるすべての党員の更新を辞退したと語った。今後は自民党支援のために、獲得党員のリストは直接自民党へ提出したいとも語った。
「全管協をよくする会」の活動
ここで話に出てきた「全管協をよくする会」について説明しておく。全管協の自民党員の獲得方法やコンプライアンス・ガバナンスについては、かねてより会員企業の間で問題視されていた。本来であれば第三者委員会を設置するなどの是正措置が必要だが、全管協名誉会長・高橋誠一氏ら執行部は、頑なに従来の方針を変えようとしない。
そこで昨年11月、全国の全管協会員有志により「全管協をよくする会」https://zenkankyo-yokusuru.jp/が結成された。同会は全管協内部から是正するための活動を行っており、たとえば、現状の自民党員獲得活動についても、不適切な活動であることについて会員企業への周知などを進めている。同会には現在約507社が入会している。
そのような「全管協をよくする会」の活動の甲斐もあって、全国各地で自民党員募集に関し、全管協本部の活動と距離を置く動きが増えている。24年は約4万件の党員数であったが、25年の目標党員数4万5,000件に対して、実績は1万3,000件マイナスの約3万2,000件となったようだ。昨年11月の「全管協をよくする会」結成後1カ月あまりの活動で大幅に自民党員が減少したことになる。以前紹介した九州・関西・北海道に加え、今回紹介した鹿児島・熊本・東京などでの自民党員退会や、全管協本部と一線を画する動きは全国に波及することは間違いないだろう。
党員獲得の背景に「党員千人」ノルマ
ところで、全国の全管協会員に圧力をかけ、半ば強引なやり方を用いてまで自民党員の獲得を行わなければならない背景はどこから来るのだろうか。
その理由の1つに、政治的影響力を強めたい全管協名誉会長の高橋誠一氏のトップダウンによる指示があることはこれまで述べてきたが、もう1つ重要なことを指摘しておかねばならない。自民党本部が各国会議員に対して年間「党員千人獲得」のノルマを課していることである。ノルマ未達成の議員に対し、不足する党員分(1人につき約2,000円)が都道府県連に徴収され、毎年成績公表を行うほか、未達の場合は、衆院選における比例代表名簿への登載対象外(比例復活なし)と厳しいハードルを課している。
自民党は、岸信介元首相が総裁時代の1957年、国民的な組織政党を目指し、党勢拡大のための「500万党員」獲得運動を展開した。91年の党員数は約546万人まで増加した。その後、党員は減り続け2009年の野党転落後、78万人まで減少した。地方選を含めた選挙運動は地方や職域支部の党員基盤が不可欠である。そこで、安倍政権時代の14年、当時の石破茂幹事長が野党時代に約78万人まで減少した党員数の回復を目指し、「120万党員獲得運動」が開始され、各国会議員に年間で千人の党員獲得ノルマが課されるようになった。
石破氏が高橋氏と近しい関係にあることは以前紹介したが、全管協によって職域支部である自民党ちんたい支部連合会がつくられたのも14年である。高橋氏が党員拡大の号令をかけるのも、自民党に対する政治力の強化につなげる目的があることは容易に想像がつく。
また、自民党員集めに苦労している各都道府県の自民党国会議員にとっても、全管協や自民党ちんたい支部連はありがたい存在であることは間違いないだろう。その陰で犠牲になっているのは、まじめな全国の全管協加盟の事業者や従業員である。
(つづく)
【近藤将勝】








