2022年07月06日( 水 )
by データ・マックス

会社を上場させるだけではない 不動産オーナー社長の「出口」(前)

 10月31日、「アメイズ」シリーズの分譲マンションを九州で供給してきた(株)シフトライフを、東証JASDAQ上場の(株)アスコットが子会社化。11月16日、東証マザーズ上場の(株)GA technologiesが、「Cloud ChintAI(クラウドチンタイ)」などの不動産テック事業を手がけるイタンジ(株)を子会社化。12月17日、投資マンションの企画開発を手がける(株)グッドライフカンパニーが東証JASDAQに上場。このところ、不動産業界ではM&Aや株式上場の話題が相次いだ。とくにM&Aについては、売る側も買う側もかつてのような抵抗感はなく、選択肢の1つとしてM&Aを選んでいるように見える。各社の事例を見てみよう。

2.5億円で売却子会社となったシフトライフ

 10月31日、東証JASDAQ上場の(株)アスコット(東京都渋谷区)が、九州一円で「アメイズ」シリーズの分譲マンションを開発してきた(株)シフトライフの全株式を取得し、完全子会社化した。

 東京駅から半径1~1.5km圏内の東京都心で開発されてきた「アスコットパーク」と、九州の地方都市で開発されてきた「アメイズ」。まるで真逆の開発方針に見えるが、「ニーズに応えるマンション企画」という視点で、互いにシンパシーを感じたようだ。

 アスコットは1999年4月設立。2000年に分譲マンション第1弾となる「アスコットパーク秋葉原」を販売し、その後は戸建や賃貸マンションなどの収益不動産開発にも着手していった。16年5月には、保険・銀行・投資・ITの4大事業を中心とした中国の総合保険金融グループ・中国平安グループが出資するファンドが、当時の筆頭株主である澤田ホールディングス(株)からアスコットが発行する約3割の株式を取得。同時に中国平安グループが筆頭株主となった。17年4月には、アスコットが中国平安グループに対して90億円の第三者割当増資を実施し、中国平安グループの子会社となった。同年12月にはアスコット創業者で代表取締役社長を務めた加賀谷愼二氏が退任。後任として、企画開発部出身で現代表の濱崎拓実氏が代表取締役社長に就任した。

 18年9月期には売上高104億円(前期比39.0%増)、経常利益4億8,089万円(同17.8%増)を計上。前期は引き渡しがなかった分譲マンションでは、「アスコットパーク森下」や「ブラントン日本橋小伝馬町」の引き渡しがあったことが売上を牽引した。この2棟の完成引き渡しにより、開発実績は45棟に上る。ほかに、「FARE」シリーズなどの賃貸マンション開発実績は19棟、オフィスビル開発実績は15棟を数える。

(株)シフトライフ 代表取締役 樋口由紀夫氏

 一方のシフトライフは、地場で長年マンション事業に携わっていた染川幸美氏と樋口由紀夫氏が06年8月に設立。当初、樋口氏は企画と設計を担当していたが、07年9月に染川氏の退任とともに樋口氏が引き継ぐかたちで代表取締役社長に就任した。

 マンション開発は、福岡県飯塚市や大分県日田市、佐賀県伊万里市などの地方都市が中心。地方都市は大手が手を伸ばしにくいこともあり、地場マンションデベロッパー間での競争が続いているが、そうしたなかでも同社の強みである「安価」で「立地が良い」マンションは人気を博しており、これまでの販売は好調に推移。また、土地の仕入れや企画力に関する同業者からの評価も高く、開発した物件はいずれも完売させてきた。

 18年7月期の売上高は約28億円、経常利益は1億円を計上。これまで14棟の分譲マンション開発実績を有する同社であるが、その多くのマンションプロジェクトでパートナーとなってきた(株)第一ゼネラルサービスとは、「これからも関係性を継続させていく」(樋口社長)という。親会社のアスコットや中国平安グループのバックアップも得て、開発事業を強化していく構えだ。

【永上 隼人】

樋口社長が語る子会社化

 今年62歳となり、ご多分に漏れず後継者問題は弊社の大きな課題となっていました。事業承継の専門家への相談を始めたのが、18年3月でした。事実上、アスコットとのご縁ができたのは9月でしたので、わずか半年で問題を解決するに至ったのには、時代の変化を感じました。

 事業スキームや取引先、金融機関も変わりません。当然ですが、子会社単体としての資金繰りは、私が責任をもって行います。銀行を始め金融機関にも好意的に受け取っていただいており、これまで1プロジェクトごとでの資金調達でしたが、複数プロジェクトを同時に進めることができるようになるので、親会社の期待に応えられるように、事業規模を拡大していきたいですね。

 会社を経営しながら、「私は2番手タイプ」だと自分でも思っていましたし、「技術屋」だとも思っていましたので、従業員のことを考えても株式の売却は自然な流れでした。ご縁をいただいたことに感謝しています。「技術屋」という面では、アスコットの濱埼社長とは共通していますし、良い関係を続けていきたいですね。

 マンション開発に関わってちょうど30年です。良い区切りだと思っていますが、私としても、元気なうちは子会社社長としてやっていきたいですし、傘下入りの動機もシフトライフを継続させ、大きくするためです。まだ子会社となって日が浅いですが、アスコットが掲げる目標は高い。弊社を子会社化した理由も、福岡の市場をゼロからではなく、スピーディーに開拓することですので、期待に応えるべく、気を引き締めて頑張っていきます。

(つづく)

(後)

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