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2019年02月12日 07:02

ネパールの子どもたちに教育の光を(後) 時代を紡ぐ企業110社 

NPO法人 福岡・ネパール児童教育振興会 理事長 篠隈 光彦 氏

支援は中学校から高校へ、地元による自主運営への支援も続く

手前が最初に建設した平屋建て校舎。奥が3階建て校舎

 2002年8月、第1期の卒業生30名が巣立っていった。卒業式というと晴れの日ではあるが、手放しでは喜べない。卒業する子どもにとっては次のステップとなる中学校で学ぶ機会をもてないことも意味していた。「ネパールの教育制度は5年、3年、2年の10年制で世界標準の12年と比べると期間が短い。それでも、10年間勉強することによって、彼らは、国内で1人の大人として認識されるようになる。それだけに、これでお別れかと思うと心が痛んだ」と篠隈氏は当時を振り返る。

 そして、中学、高校も増設し、学校名も「福岡ニルマルポカリ学校」に変更。07年5月には、新校舎も完成した。幼稚園を含む中学・高校課程まで学べる3階建の見事な校舎だ。現在、約300名の生徒が学んでいる。奨学金や、教職員を支援する基金も設立された。

 10年間のライオンズクラブによる支援が終了した後は、ニルマルポカリ村が自力で学校を運営するというのが約束だった。村が自分たちで学校を運営するには資金が必要である。しかし、村には現金収入に結びつく特産品や産業は乏しい。ネパール振興会は村が現金収入を得る方法を模索した。サフランやそばの栽培、養鶏、養豚などが候補に挙がったが、行き着いたのはコーヒー豆の生産であった。

 さまざまな困難を乗り越え、05年にはJICAが村のコーヒー栽培を草の根技術協力事業として採択。06年4月、待ちに待ったニルマルポカリ村産コーヒー豆150kgが初めて福岡に輸入された。キョーワズ珈琲社の一刈吉房顧問の手により商品化された「ヒマラヤンアラビカ」は、「いっぱいのコーヒーがネパールの子どもの笑顔に」をキャッチフレーズに博多大丸、井筒屋デパートなどの店頭に並んだ。翌1月には、JETRO(日本貿易振興機構)主催の開発途上国の地域活性化策としてニルマルポカリ村のコーヒーが採択され、成田、羽田、中部国際、関西、福岡の各空港ロビーに展示された。

コーヒーの苗木

 14年1月には、第二次JICA事業もスタートした。コーヒー農家280世帯をベースに「コーヒー(農協)」を設立し、導入した脱穀機などによる製品化を推し進めた。この年、2tの製品化を達成したが、5年間で10t、さらには30tの製品化を目指す。出荷量が増えれば、村独自の収入による学校経営の可能性が見えてくる。

 クラブ創設30周年の記念事業として始めたネパールでの支援事業も昨年で20年を迎えた。これだけの支援を、民間団体が主体となって継続することは並大抵なことではない。篠隈氏は、「一過性の支援では国と国との信頼関係、尊敬し合う力学は生まれない」という信念の下、20年以上現地の人たちに寄り添ってきた。60回におよぶ渡航回数はその証でもある。いうのは簡単だが、実行は難しい。篠隈氏の考えの根底には、若かりしころ10年仕えた出光興産創業者・出光佐三氏の「日本人の本来あるべき姿を発揮し国家・社会に示唆を与えろ」、そして、お互いに譲り合い助け合う「互譲互助」の精神が流れているという。この「互譲互助」の精神が、篠隈氏の支援活動を支える力になっていたのではなかろうか。

 「先日、カトマンズで卒業生2人と会ったが、自分が生まれた土地と学んだ学校に何か恩返しをしようというような意識があると感じた。明るい兆し出し、楽しみである」と篠隈氏は相好を崩す。
 国を支えるのは人。人を育てるのは教育である。篠隈氏のこれまでの努力は着実にネパールの力を育んできた。同氏の活動と博多東LCの貢献に心から敬意を表したい。

(了)

<COMPANY INFORMATION>
理事長:篠隈 光彦
所在地:福岡市中央区赤坂1-12-6
設 立:2002年2月
TEL:092-712-4351

<プロフィール>
篠隈 光彦(しのくま・みつひこ)

1941年11月生まれ。不動産賃貸の篠隈興産(株)の代表取締役を務める。本業以外には、博多東ライオンズクラブの第29代会長を務めた。現在はNPO法人 福岡・ネパール児童教育振興会の理事長を務めるなど、精力的に活動している。

 

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