2024年04月27日( 土 )

地場建設、不動産会社1,400社を組織化 個人の最大資産である住宅を「資産」へ(前)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

ハイアス・アンド・カンパニー(株) 代表取締役社長 濵村  聖一  氏

 建築家が設計する高性能低コスト住宅「R+house(アールプラスハウス)」事業を全国の工務店、ビルダーへ提供しているハイアス・アンド・カンパニー(株)(以下、ハイアス)。同社では、楽天グループの民泊事業会社である楽天LIFULL STAYと連携して訪日外国人や日本人向けの戸建宿泊施設も行うほか、地方創生事業も手がけている。同社の軸にあるものは、地方企業を支えつつ、住宅や土地の資産を守ることだ。東京証券取引所マザーズ市場への上場後における戦略を、同社代表取締役社長の濵村聖一氏に聞いた。

県内トップ10も続々、存在感のある企業に育て支援する

 ――起業の経緯について、お聞かせください。

 濵村 2016年4月に東証マザーズ市場へ上場しましたが、これはあくまで通過点です。私がこの道に入ったきっかけは、以前勤めていた(株)日本エル・シー・エー(現・(株)エル・シー・エーホールディングス)です。成功報酬型の経営コンサルティングでしたが、中古車のガリバー、飲食店の牛角やサンマルクのビジネスモデル立ち上げのお手伝いを行いました。

 また住宅関連では、通常は天井から出っ張っている梁を逆にして床から立ち上げるように設置する工法の「逆梁工法」(ルネス工法)をパテント化して全国展開したいという建築家からの意向があり、清水建設、大成建設など全国のゼネコン120~130社を組織化しました。

 一方、本業の経営コンサルティングでは、大手ハウスメーカー上位10社をコンサルティングしてきました。住宅業界の経営コンサルタントでは圧倒的なシェアを獲得しましたが、私が本来やりたかったことは、住宅を資産化することです。これが、当社を設立した最大の動機なのです。

 ――経営に対して、濵村社長が重視しているポイントは何でしょうか。

 濵村 私が重視しているのは、生産性です。突き詰めれば、労働生産性と労働の単位時間あたりの生産性である時間生産性を重視した働き方を推奨しています。数字などの目標を達成して、時間が余ったら、旅行でもすればいいという発想です。

 「長く働けば良し」とするのではなく、時間生産性が国力を決定します。それには、教育が重要です。そして事業を拡大すれば、それを補うための人材が必要になりますので、採用活動が大きなポイントになります。社員構成はライン(コンサルティング)部隊が3分の1、ラインを補佐する部隊が3分の1、商品開発部隊が3分の1です。弊社の平均年齢は34歳と若い会社ですが、ライン部隊の平均年収は1,000万円を超えています。

 ――前職では大手との連携が強みだったようですが、ハイアスは「地場中小」がメインです。

代表取締役社長 濵村 聖一 氏

 濵村 住宅不動産業は、地元密着の産業です。ですから、地元の工務店、ビルダー、不動産会社が地元での住宅産業を担うべきなのです。ですが、大手と比べて資本力が小さい地場企業にとって、新技術開発のハードルは高い。そこで、弊社が新技術・工法、部材も地域企業に提供することによって、地場企業が力をつけていくことが可能となります。いわば、地域に、それぞれ“大名”のような存在感をもった企業が生まれ、我々がそのお手伝いをする“総本社”のような役割を担うのです。

 たとえば、家を建てる場合、7~8割の施主は、土地をもっていません。工務店にとって、不動産情報は欠かせないものなのです。工務店の不動産流通分野への参入を実現する事業が「トチスマ」です。

 また、住宅購入相談窓口店舗「ans」を通じて、住宅購入時に必要な情報を第三者的な立場から提供するなどの住宅購入者支援と共にご希望を叶えられる住宅会社の紹介も行っております。熊本県では「アンズ帯山店」「アンズ流通団地店」「アンズ荒尾店」の3店舗、静岡県では「アンズ浜松店」の1店舗を展開しています。店舗展開により、住宅購入に関するデータの蓄積も進んでいます。

 さらに、弊社の理念は、「個人が住宅不動産を納得し安心して取得(購入)、居住(運用)、住替(売却)できる環境をつくること」です。建築家が設計した高性能住宅でありながら、低コストで提供する「R+house(アールプラスハウス)」事業を展開し、全国の工務店、ビルダーと提携しています。中間業者は入れず、部材はメーカーと直接交渉していますので、低コストで住宅を提供できるのです。モデルハウスの全国展開により、アールプラスハウスファンを増やしているところですが、これからさらに拡大していきます。上場はその過程でした。

 ――地場企業の連合体による住宅づくりは画期的ですね。

 濵村 先ほども申し上げましたが、地域で住宅を提供する工務店、建設、不動産会社はすべて地域産業です。これは、アメリカやドイツも同様です。アメリカでは、全米リアルター協会という上部団体があり、そこが住宅供給を仕切り、下部組織に全米ビルダー協会があるという感じです。日本にとっても、このかたちがベターではないかと考えています。

 住宅や不動産機能の双方をもつ傾向を弊社は「複合化」や「総合化」と呼んでいますが、地域のまちづくりには、複合化機能をもつ企業の存在が欠かせません。弊社では、地域の中小企業を会員組織としてネットワーク化してきました。この会員数は現在約1,400社です。日本全国に拡がるこのネットワークを活用し、会員のニーズを汲み上げながら、併せて業界を取り巻く環境の先を読むことで、その解決策を企画、開発、パッケージ化しております。

 1,400社の会員のなかで、住宅と不動産機能の双方をもつ複合化企業に成長すると予想しているのは、200~300社です。全国では47都道府県ありますから、企業数としては適度な社数を確保できています。

 ――中小地場企業への支援の成果はいかがですか。

 濵村 工務店やビルダーに対して1社ずつ丁寧に、採用、教育なども支援しています。多くの県では年50棟~100棟の完工をすれば、トップ10に入ります。おかげさまで、地方県内の年間施工棟数トップ10に、会員の工務店やビルダーも入ってきました。マーケティング力の強化によって、2~3年後にはより多くの工務店やビルダーがさらに頭角を現してくるはずです。

(つづく)

【長井 雄一朗】

<プロフィール>
濵村  聖一(はまむら・せいいち)
1961年11月、山口県下関市出身。日本電池(株)(現・(株)GSユアサ)を経て、83年6月に(株)日本エル・シー・エー(現・(株)エル・シー・エーホールディングス)入社。同社取締役を経て、2001年5月に同社常務取締役に就任。04年5月、(株)エル・シー・エー・リコンストラクション代表取締役社長就任。05年3月にハイアス・アンド・カンパニー(株)設立とともに代表取締役社長就任し、現在に至る。

<Company Information>
代 表 : 濵村 聖一
所在地 : 東京都品川区上大崎2-24-9 アイケイビルディング5F
設 立 : 2005年3月
資本金 : 4億63万円
売上高 : (18/4連結)46億5,987万円
T E L : 03-5747-9800

(後)

関連記事