2024年04月26日( 金 )

不動産業界の異端児から業界を変えるイタンジへ(後)

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イタンジ(株) 代表取締役CEO 伊藤 嘉盛 氏

テクノロジーで業界を縦軸で変えていきたい

 ――ホステルにも進出されるようですが、今後の出店予定はいかがですか。

 伊藤 4階建のオフィスビルをコンバージョンし、「KIKKA」の屋号で8月をメドに東京・内神田でホステルとしてオープンする予定です。ここは文化創造型ホステルとして、1階には日本独自といわれている食パンで「トースト料理」が楽しめるカフェ、地下1階には立体的な映像で映し出されたAIママが出迎える現代版スナック、2、3階は有機的な植栽と無機質な建材が混在する開放感ある客室になる予定です。訪れた人たちのインスピレーションを刺激することで、「きっかけが生まれる場所」になることを目指し、「KIKKA」と名付けました。すでに福岡市博多区春吉でも、ホステルの開業準備をしております。

 ホステルのオペレーションは外部に委託しますが、我々も業務の効率化のためのシステム開発は行っていきます。

KIKKA イメージ図

KIKKA(カフェスペース)イメージ図

 ――これまで「nomad」や「ぶっかくん」「内見予約くん」など、賃貸住宅の仲介会社や管理会社向けサービスを展開されてこられましたが、オフィスなど賃貸住宅以外の領域への進出は検討されていますか。

 伊藤 既存のサービスの横展開は考えていません。それよりも、不動産の小口化やブロックチェーンなどのテクノロジーを使って、業界を縦軸で変えるようなサービスを開発していきたいですね。HEYAZINE COINやホステルKIKKAなどは、コンシューマー向けに新たな価値を提供する新サービスだと考えています。

 アメリカを中心に、ビッグデータ解析や人工知能などの先進技術を用いた不動産テックがトレンドとなっています。日本の不動産業界は、世界的に見ても不透明とされており、デジタル化されていないこともあって、不便さと煩雑さがまだ多く残っています。我々は日本の不動産テック企業として、不動産流通の革新と業界全体のデジタル化を目指していきます。

基幹事業を生んだイタンジの社風

 ――新規事業はすべて採用とうかがいましたが、具体的にはどのようなサービスが生まれたのでしょうか。

 伊藤 「ビジネスアイデアを思いついた社員は、自由と責任のもとに新規事業を立ち上げられる」というシステムです。社長や役員であっても、新規事業にストップをかけることはできませんし、誰の決裁も必要ありませんが、3カ月間で累計100万円を売り上げることが正式に事業化する条件です。弊社の代表的なサービスである「ぶっかくん」や「内見予約くん」も、社内のエンジニアからの提案です。社内でもイノベーションに対する挑戦的な姿勢を貫いています。会議を重ねるよりも、最小単位でサービスを開発して、マーケットやユーザーの反応を直接見るほうが早いのではないかと考えるからです。失敗を許容する文化から、「ぶっかくん」などの基幹事業も誕生しました。

 イタンジは、人間とテクノロジーがお互いを補完し合うことで人間とテクノロジーが融合した新しい未来のカタチを創造する―「人間とテクノロジーの融合」、不動産のデジタル化を推進し、固定的で硬直的な不動産のあり方を覆し、すべての人がすべての不動産に自由にアクセスできる世界を実現する―「不動産の在り方を変えていく」、テクノロジーで業務の分業化、細分化、自動化を推進し、必要なときに必要な単位で使用・交換できるようにすることで不動産の価値を最大化する―「不動産取引をなめらかにする」という3つのミッションを掲げ、事業に取り組んでいます。

 ――ベンチャーでありながら、定時(19時)退社を実現するなど、御社独自の働き方改革を行っているようですね。

 伊藤 新規事業をすべて採用することと同じ考え方なのですが、弊社では5つの行動指針と7つの働き方改革を掲げています。働き方改革は新規事業の全部採用のほかにも、全社員が経営陣に匿名で質問できるような会を設け、風通しを良くすることでアイデアや意見が自由に交換できる雰囲気を失わないように気をつけています。また、すべての情報をクラウド管理することで、リモートワーク可能なインフラを整えています。これにより、外出先でも作業できるようになり、生産性の向上につながりました。
 その成果の1つが、19時退社です。ほかにも社員の定着率アップや、人材不足のなかでも採用が順調なことは、成果といえるでしょう。

(了)
【永上 隼人)

<COMPANY INFORMATION>
イタンジ(株)
代 表:伊藤 嘉盛
所在地:東京都港区芝公園3-1-8
設 立:2012年6月
資本金:5億円
URL:https://www.itandi.co.jp

<プロフィール>
伊藤 嘉盛(いとう・よしもり)
1984年生まれ。早稲田大学大学院ファイナンスMBA修了。三井不動産レジデンシャルリース(株)を経て、2008年に不動産仲介会社を起業。業務のなかで業界の非効率性を痛感し、不動産取引のデジタル革命への志を立てる。12年6月、イタンジ(株)を創業した。

 
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