自転車は交通インフラであり続けられるか?(後)
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2019年07月22日 07:00

自転車は交通インフラであり続けられるか?(後)

福岡市最大の自転車保管所である那の津保管所(中央区)

自転車保険、義務化する府県も

 条例では、利用者の自転車保険への加入を努力義務としている。中学生までの子どもは、保護者に努力義務を課している。自転車保険とは、自動車の任意保険のようなもので、自転車走行中の事故などで歩行者などにケガを負わせ、高額な損害賠償の支払い義務が生じた場合のためのものだ。

 13年に兵庫県で起きた自転車事故について、9,521万円の支払いを命じる地裁判決が出ている。この判決以降、世間の自転車保険の重要性への意識が高まった。保険料金は保険会社やプランによってばらつきがあるが、2,000円~2万円が中心的な価格帯になっている。19年4月時点で埼玉県、兵庫県、鹿児島県など6府県のほか、名古屋市、相模原市、金沢市が、条例により保険加入を義務化している。

 au損害保険(株)が19年4月に公表したアンケート調査結果によれば、自転車保険加入率は47都道府県で56%。最も加入率が高いのが兵庫県の71.5%で、最も低いのが島根県の34.4%。福岡県は50.5%(全国25位)となっている。

 従業員が自転車通勤する場合、自転車保険への加入を義務付ける会社も増えているようだ。なかには、会社が従業員の保険料を負担するところもある。交通事故による損害賠償は当事者本人が負うが、雇用する会社が「使用者責任」を問われる場合もあるからだ。

 近年、CSR(企業の社会的責任)の重要性が増しているが、近い将来、「従業員が自転車保険に加入していないのは企業の責任」といわれる時代が来るかもしれない。自動車も自転車も同じ車両である以上、少しも突飛な話ではない。

年間3~5万台の放置自転車を撤去

 自転車マナーを考えるうえで、放置自転車は看過できない問題だ。福岡市内では駅周辺の自転車放置が横行。03年には天神駅周辺の放置自転車数が4,220台(10月10時~12時にカウントされた台数)に上り、全国ワーストを記録した。博多駅周辺は1,210台、全市で見ると1万8,080台、放置率は31.6%というカオスぶりだった。原因はシンプルで、駐輪スペースが足りなかったからだ。

 一口に駐輪スペースの整備と言っても、天神駅や博多駅などの都心部で新たに用地を確保するのは容易なことではない。当然コストもかかる。福岡市では04年、きらめき通り駐輪場の供用開始以降、段階的に駐輪スペースを整備してきた。18年10月時点での天神、博多エリアの市営駐輪場数は計11カ所(天神6カ所、博多5カ所)で、収容台数は天神4,316台、博多が2,955台となっている。

 駐輪スペース整備にともない、放置自転車数および放置率ともに年々減少。08年は1万170台(天神750台、博多駅1,130台)、放置率17.3%、13年は5,550台(天神720台、博多駅270台)、放置率9.4%、直近の18年には1,140台(天神30台、博多駅80台)、放置率2%にまで改善されてきている。

 放置自転車の減少には、自転車の撤去による抑制効果も大きい。福岡市は1985年施行の「自転車の放置防止に関する条例」に基づき、市内46カ所の放置禁止区域を中心に撤去を実施している。禁止区域内は即日撤去、禁止区域外は3日後撤去となる。03年以降の撤去台数は年間3万台~5万台で推移し、ここ5年間の返還台数は1万5,000台~2万5,000台となっている。撤去した自転車は市内に計10カ所ある保管所に収容される。合計収容台数は1万3,000台で、中央区の那の津保管所(4,800台程度)が最も大きい。

 春や秋の行楽シーズンになると、自転車利用が増えるためか、保管台数も増える。返還の際には、保管手数料として2,500円を徴収。撤去後に告示して1カ月経過したものは、売却やリサイクルなどの処分が行われる。売却収入は年間600万~1,000万円ほどで、放置自転車対策経費に充てられる。返還率はここ5年ほどは50~60%ほどで推移している。

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自転車通行空間125kmを2020年度までに整備予定

 福岡市は14年に「自転車通行空間ネットワーク整備計画」を策定し、自転車専用レーン(幅員1m)などの自転車通行空間の整備も進めている。専用レーンと言っても、既存の車道(幅員15m以上の幹線道路)路肩などにレーンを示すペイントを施す程度のものがほとんどだが、無軌道な自転車運転を抑制する一定の効果はあるようだ。自転車通行空間の延長は、18年度末時点(見込み)で69路線・約95.9km。「福岡市道路整備アクションプラン2020」によれば、20年度までに125km整備する予定になっている。

 福岡市では12年3月、本格運用前に、国道385号(筑紫口通り)の音羽交差点~宮島交差点(延長約750m)に整備した自転車専用レーンの効果に関する調査を実施。自転車のレーン通行量は、整備前11%から43%に増加。歩行者や自転車利用者への聞き取り調査では、70%以上から「自転車レーン整備を進めるべき」との回答があった。課題としては、レーン上への路上駐車、逆走自転車などが上がった。

「確信犯」に対しどう踏み込んでいくか

 車両である自転車には、もともと交通ルールが定められている。歩道上での歩行者への危険行為、車道の逆走、飲酒運転などは、マナー違反ではなく、ただの法律違反である。自動車など、ほかの車両と大きく違うのは、違反しても、よほど悪質でない限り、キップを切られることがない点だ。警察の温情運用と解せられるが、自転車利用者に車両運転意識が希薄なのは(希薄に見えるのは)、温情をいいことに、「自転車は捕まらない」とタカをくくっているからではないか、とも考えられる。そんな確信犯相手にマナーを説いても、効果はおぼつかないだろう。

 確信犯をどう減らしていくか。気軽で便利な交通インフラとしての自転車の存在を守っていくためには、社会として、今後そのあたりに踏み込んでいく必要がありそうだ。

(了)
【大石 恭正】

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