2024年04月25日( 木 )

中国大手デベ万科企業と提携 華東地域のプロジェクトを狙う

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三菱地所(株)

 三菱地所(株)は5月、中国の大手デベロッパー「万科企業」と戦略的提携協議書を締結した。中国の一大経済圏で成長著しい長江デルタの不動産開発プロジェクトについて、両社は長期的な戦略提携関係を確立する。三菱地所はオフィス・商業施設など多彩なアセット開発のノウハウを、万科企業は中国でのプロジェクト推進のノウハウをそれぞれに提供する。中国・上海に駐在する三菱地所の國行佑輔氏に、提携の狙いを聞いた。

(左)三菱地所 執行役常務 中島 篤氏(右)万科企業 集団高級副総裁 兼 上海区域本部首席執行官 張海氏
(左)三菱地所 執行役常務 中島 篤氏(右)万科企業 集団高級副総裁 兼 上海区域本部首席執行官 張海氏

 ――まず、提携に至った経緯からお聞かせください。

 國行 最初の共同プロジェクトは、中国・江蘇省南通市の「翡翠東第公園」です。敷地面積約9万8,000m2、総住戸数約1,200戸の大規模マンション開発事業でした。続いてオフィスでの共同開発にも合意し、初の複合開発事業である「奥体万科中心」を浙江省杭州市で実現しました。このように、いくつかのプロジェクトでの協業を経て、互いのシナジーを確認し合ったことから、今回の提携に至りました。

初の中国でのオフィスを含む複合開発事業である「奥体万科中心」
初の中国でのオフィスを含む複合開発事業である「奥体万科中心」

 ――中国は広いですが、万科企業はどのあたりをメインに開発されていますか。

三菱地所の國行佑輔氏
三菱地所の國行 佑輔 氏

 國行 万科企業は、北京を中心とする北部、上海を中心とする東部、広州・深圳を中心とする南部、成都・重慶などを中心とする内陸部の4つのエリアに分けて事業を管理しています。

 弊社が戦略提携を結んだのは、上海を中心とする長江デルタの不動産プロジェクトを統括する上海区域万科です。万科企業は、マンションデベロッパーを経て、オフィス、教育、老人ホーム、商業施設、再開発にも進出しています。万科企業は新たな事業を展開する際に、独自に日本の開発事例を研究しており、運営管理を含めた日本の不動産開発事業を高く評価していました。そのような経緯から、弊社にお声がけいただきました。

 弊社が丸の内やグランフロント大阪などの日本国内での開発実績を紹介していくなかで、とくに弊社グループの開発理念に共感いただき、共同事業の実現に至りました。日本トップレベルのノウハウを取り入れたいという万科企業の思いと、中国ローカル企業との連携を深め中国事業を拡大させていきたいという弊社の思いが合致したのです。

 三菱地所は、オフィス・商業施設など多彩なアセットの開発・運営管理のノウハウを、万科企業は中国での業務推進ノウハウをそれぞれ提供し、さらに共同プロジェクトでの受注獲得の機会を深化させます。今後、個別物件での共同事業にとどまらず、人材交流の機会を設けるほか、両社の強みを生かした成長・情報交換を予定しています。万科企業とは継続して共同事業を行うことを確認し合っており、現在も複数の物件を同時並行して検討しています。

 ――提携による両社のそれぞれのメリットは。

 國行 三菱地所が万科企業に期待しているのは、三菱地所が一朝一夕では築くことができない中国国内での豊富なネットワークです。彼らの豊富なネットワークが、オフマーケットでの優良な土地の取得や高水準の発注管理、リーシングに寄与すると考えています。逆にいえば、万科企業は、前述のように弊社の商品開発能力、管理面の運用について期待しているでしょう。とくにアジア地域における弊社の方針は、外資系企業の出資割合にハードルが設けられるなど規制の存在だけでなく、現地のノウハウ・ネットワークを取り入れるという観点から、ローカルパートナーと連携して行うことを基本戦略としております。

 ――これからの中国での戦略は。

 國行 中国で一級都市と言われているのが、北京、上海、広州、深圳の4大都市です。これに二級・三級都市が続きます。一級都市は、高い経済成長を誇る一方で、不動産価格の高騰が続いている状況です。ですので、我々はすでに円熟期を迎えているこれらの国際都市をもちろん視野に入れつつも、今後さらなる発展が見込まれ、住宅・オフィスなどさまざまな不動産アセットの需要増加が見込まれる「新一級都市」に注目しています。

 新一級都市とは、二級都市のなかで経済成長著しい都市の俗称です。中国全体の経済成長率が6%程度であるのに対し、新一級都市の経済成長率は8%前後、都市によっては9%におよぶ場合もあります。弊社としては、前述の4大都市に加えて、杭州や蘇州、南京などの新一級都市をターゲットに、オフィス開発事業を検討しています。

 中国には人口1,000万人以上の都市が10以上もあり、まだまだ大規模な開発用地も多く残っています。三菱地所は、中国におけるオフィス事業を今後も継続して展開していきたいと考えております。

【長井 雄一朗】

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