【凡学一生のやさしい法律学】関電報告書の読み方~関電疑獄を「町の法律好々爺」凡学一生がわかりやすく解説(5)
1 事実の経緯

関電疑獄事件に関して、社内コンプライアンス委員会の委員による内部報告書が平成30年9月11日付で作成され(同書)、一年後の本年10月、それを基に記者会見が開かれた。同書は、その内容と結論に対し世論の強い批判を浴び、かえって事件について「火に油を注ぐ」結果となった。
文責者の3名の弁護士の経歴などについて筆者なりのコメントを記す。
委員長 小林 敬 弁護士 いわゆる「ヤメ検弁護士」
委員 千森 秀郎 弁護士
大会社監査役等の経験豊富な企業コンプライアンス専門家。ただし、本件事件では、関電監査役会が事件を把握しても違法性がないとして取締役会に報告しなかった事実が指摘されており、その監査役会の一員であれば、千森弁護士の立ち位置は、株主・国民よりではなく、会社幹部・取締役よりと判断できる。
委員 種村 泰一 弁護士
上記2名の弁護士より年齢経験も若い弁護士。法曹界における年功序列(修習何期生かの序列)慣習により、上記2名と対等の見解を述べることは困難と筆者は理解している。
2 同書の問題点
誰も語らない本質的問題
日本には何万人と弁護士がおり、法律専門家・学者を加えるなら数十万人の法律専門家がいることになる。しかし誰1人として、関電疑獄事件の本質的問題について語らない。これは日本の法律家の質が低いと国民は理解すべきである。
何が本質的問題か。
報道によれば、関電の役員重職者の20名が取引先関係者(M)から長年にわたり秘かに高額の金品を受領していたという。これは明らかに収賄であり違法行為である。
(会社法には単純収賄罪の規定はないから、賄賂罪という意味の犯罪行為には該当しないが、高価な金品の正当な理由がない隠密裏の受領は明らかに違法行為である。とりあえず取締役の善管注意義務違反の行為、公序良俗に違反する行為と法性決定しておけば、市民の理解は座りが良いかもしれない。)
関電の定款によれば取締役は20名以下である(定款20条)。また、取締役会における決議要件は過半数出席による過半数による決議である(同26条)。これだけで、関電取締役会は本件疑獄事件に関する一切の決議が不可能である。もちろん、本件疑獄事件の内部調査委員会の設置を決議することもできなければ、調査委員会の調査報告を受領し、審議することもできない。もちろん、事件の解明のために社外の第三者(私人)に事件の調査を委託すること[いわゆる第三者委員会の設置]もできない。
直ちに虞犯取締役は辞任して、クリーンハンドの取締役会が適法に関電疑獄事件の真相解明に着手しなければならない。取締役の選任のためには株主総会の決議が必要だが、とりあえず、裁判所に仮役員の選任申請し、承認を受け、適法な取締役会による事件処理を行わなければならない。一連の流れはすべて違法行為のオンパレードである。その法的側面の担当・保証人がヤメ検弁護士(かつての公僕)であることに国民は注目しなければならない。
(つづく)
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