2024年04月20日( 土 )

『脊振の自然に魅せられて』「すばらしい樹氷の華を見る」

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 2010~12年の冬は脊振山や宝満山、英彦山でも積雪が多い年でした。天気予報を見て「明日は雪」という予報を見ると胸が弾んだものです。

 2012年2月、「山友」を誘い、福岡市早良区の金山(967m)に向かいました。

 金山へは福岡県側から登るよりも、佐賀県の三瀬村から脊振山へと続く脊振・金山林道を利用すると1時間は短縮できます。この林道は広域林道となっており、海抜600m付近にあるので、ここから山を目指せば楽に登れるのです。

 福岡県側から登ると急峻で、海抜300m付近から登ることになり、どうしても時間を要してしまいます。この広域林道には佐賀県の三瀬村から山中地蔵登山口へと続く登山口があり、金山山頂へは1時間近くで登れます。

 前日は季節風が吹き、荒れた天気でしたが、夜があけると季節風も収まり、登山に適した天候となっていました。

 山道を登るにしたがい、樹に白いものが付いているのが見えてきました。「樹氷」です。

 「山頂で樹氷が見られるかもしれない!」心をはずませ、喘ぎながらも最後の15分を登りきると縦走路に着きました。ここは旧佐賀藩の番所があった場所で、環境省の大きな表示板が立っています。

「エビの尻尾」が見られる金山山頂付近の縦走路
「エビの尻尾」が見られる金山山頂付近の縦走路

 そこから樹木のトンネルを抜けると、すぐに金山山頂です。道を進むと、前夜の荒れた季節風のいたずらにより、樹氷の一部に「エビの尻尾」をみることができました。「エビの尻尾」とは、強風にさらされた樹氷が、風上に向けて成長した様子を指しています。「エビの尻尾」を見るのは九重の冬山以来のことで、脊振山系では初めての遭遇です。

 山頂に着くと、見事な「樹氷の華」が咲いていました。樹々に付いた樹氷が晴天のなかに華のように彩りを添えているのです。土曜日でしたが、寒く冷え込んでいたためか、ほかの登山者の姿はありません。我々だけが独占できる贅沢な時間です。

樹氷の花が彩る金山山頂(967m) 2012.2.27 撮影<br>写真集「脊振讃歌II」より
樹氷の花が彩る金山山頂(967m) 2012.2.27 撮影
写真集「脊振讃歌II」より

 私は「樹氷の華」を夢中になって撮影しました。素手で撮影しているので、手がかじかんできます。口元に手を添え、息を吹きかけ、手を温めます。すると、かじかんだ手にぬくもりを感じてきました。

 さらに撮影しようとしたところ、シャッターが切れなくなりました。電池切れです。カメラのバッテリーの充電を怠っていたのです。「しまった!一期一会の世界なのに」。カメラの充電を怠ったことを激しく後悔しました。

 あきらめて軽食を済ませ、樹氷で覆われた金山の光景を目に焼き付けて金山を下りました。

 「明日、もう一度チャレンジしよう」。仲間と広域林道を進み、車窓から脊振の雪景色を見ながら自宅に戻りました。

 帰宅してすぐに1眼レフ、小型カメラ2台の充電を開始。翌日早朝、「樹氷の景色が残っていてくれ」と祈りつつ、再び1人で金山を目指しました。

 ようやく金山山頂へ。私のほかには誰1人おらず、見渡す限りのすばらしい景色が前日のまま残っていました。バッテリーの充電も十分あったので、ぜいたくなくらいたくさん撮影ができました。

 「一期一会」、脊振の冬のすばらしい光景でした。

2020年2月7日
脊振の自然を愛する会
代表 池田 友行

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