2024年03月29日( 金 )

元総合商社駐在員・中川十郎氏の履歴書(8)インドの友人の思い出

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日本ビジネスインテリジェンス協会会長・中川十郎氏

(1)アショカホテルで3店舗を経営するサテイパル氏

 ニューデリーの国営アショカホテルで、インドシルク、民芸品、骨董品、宝石を扱う3つの店舗を経営していたサテイパル社長とは、今も付き合いを続けている。日本からの訪問客をサテイパル氏の店に案内すると、いつも特別価格で販売してくれた。

 後年、愛知学院大学や東京経済大学のゼミ生をニューデリー市に案内したときは、サテイパル氏はアショカホテルでインド政治経済の将来について講義してくれた後に、市内の自宅に全学生を招いて歓迎パーティを開催してくれた。サテイパル氏は敬虔なヒンズー教信者で、自宅に祈りの場を設け、朝夕欠かさずに礼拝している。

 甥のアニル・バソートラとともに親日家で、ニューデリー近郊のグルガオン、クジャラート州、ジャイプールで「DAIKICHI」(大吉)という日本料理店を4店舗経営している。バソートラの息子が昨年、立命館アジア太平洋大学に特待生で入学した時には、いろいろと相談に乗った。

 サテイパル氏はアーユルヴェーダの熱心な研究家で、筆者が主宰している国際伝統・新興医療融合協会および日本ビジネスインテリジェンス協会の国際理事を務めている。サテイパル家とは3代50年以上にわたって交流しており、人生の出会いの不思議さをしみじみと噛みしめている。

(2)骨董店主と星占師、2人のシャルマ氏

 当時、千住金属工業(株)の佐藤千壽社長の紹介を受け、スンダーナガールにあるシャルマ氏が店主を務める骨董店を訪問した。現在もニューデリー出張時には訪問し、骨董を鑑賞して当時を懐かしんでいる。

 もう1人は、有名な星占師のシャルマ氏で、代々星占いをしている名門の家系だという。インドでは大統領や首相が戦争の是非を判断する時に、重要な役割をはたすものの1つが星占いだといわれている。シャルマ氏は米国プレイボーイ誌に世界動向についての占いを掲載しており、中薗英助氏の小説「わが星を裏切る」(『黄金情報員』所収)にも登場する星占師だ。

 ニューデリー駐在時にシャルマ氏に次の任地について占ってもらったところ「ラテンアメリカを含む米州になる」といわれた。筆者は大学でイタリア語を専攻し、主にヨーロッパとのビジネスに注力していたため、「将来の任地はイタリアを含むヨ-ロッパではないか」と主張したが、「いや米州だ」とシャルマ氏は言い張った。結局、ニューデリーの後の任地は米州のブラジルだったため、シャルマ氏の星占いの結果が正しかった。生まれた場所の緯度や生年月日・時間をもとに、天体や星野の動きと骨相から判断していたようだ。

 娘の一生についての星占い、いわゆる「ホロスコープ」も見てもらった。1カ月かけて分厚いノートに一生の占いの結果をまとめて、筆者に渡してくれた。「娘は将来、自動車会社の役員と結婚する」という占いの結果だった。

(つづく)


<プロフィール>
中川 十郎(なかがわ・ じゅうろう)

 鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)

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