2024年04月27日( 土 )

米中「ハイテク戦争」で台湾半導体が躍進(前)

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 日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 新型コロナウイルスが感染拡大する中でも、それほど需要が落ち込んでいない産業がある。半導体産業だ。産業が高度化すればするほど、「産業のコメ」と言われている半導体の必要性が増し、需要が伸びている。

 半導体需要けん引の要因として、まず挙げられるのは、スマートファンやタブレット端末の普及である。他の支出は抑えることができても、スマートフォンなしでは生活が成り立たないと考える人は多く、今やスマートフォンは生活に欠かせない存在となっている。低所得国でもスマートフォンの普及だけは進んでいる。また、スマートフォンは買い替えスパンが短いため、定期的な需要が発生する。それに毎年新規モデルが発売されるので、それも半導体需要を押し上げる要因となっている。

 次にデータセンターの増加である。ビックデータを活用した情報の蓄積・分析を行う企業が増えたり、インターネット通販などにより、データ通信量が大幅に拡大しており、それに対応する形でデータセンターも増加している。これも半導体需要の増加につながっている。また、半導体が大量に必要となるAI、自動走行など新分野の出現は、ますます半導体需要を拡大させていくことにつながるだろう。

 半導体企業は大きく3つに分けることができる。設計から製造まで全てを1社で行うインテル、サムスンのような垂直統合型(Integrated Device Manufacturer=IDM)、エヌビディア、クアルコムのように設計だけを行うファブレス、台湾のTSMCのように製造に特化したファウンドリーなどがある。

 半導体産業が誕生したのは米国である。しかし、1980年代半ばになると、日本が米国を抜いて世界シェア50%を超えるようになった。しかし、その後、日本のシェアは徐々に低下していき、メモリでは韓国が、システム半導体では、台湾が力を発揮するようになる。

 今回は米国と中国が激突している状況下において、米国が中国のハイテク分野での台頭をけん制し、台湾と協力を強化している状況について取り上げることにする。

 半導体の需要面からみると、中国の割合がますます高まっている。2019年、中国は半導体全体の市場のうち、35%を占めるようになった。世界の工場となった中国が、韓国や台湾から半導体を輸入し、スマートフォン、パソコン、サーバー、各種デジタル家電に組み込んで生産しているからだ。しかし、中国が自国で必要としている半導体のうち、15%しか自給できていない。産業の競争力を確保するため、また軍事力強化のためにも、中国の半導体産業の育成は避けては通れない課題だ。

 中国は半導体産業を育成するため、政府主導で莫大な投資を敢行し、一定の成果を出しつつある。これに危機感を覚えた米国が、「ファーウェイ殺し」と、中国の封じ込みに乗り出したわけである。これにはファーウェイをグローバルサプライチェーンから外し、ファーウェイがこれ以上、半導体の世界で成長しないようにするという狙いがある。また、TikTokなどの中国IT企業が世界のデータを蓄積することを防止するための措置などが取られ続けている。

(つづく)

(後)

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