2024年04月25日( 木 )

豊富な地域資源の活用で再興を図る大牟田市の未来は――(4)

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新産業の創出で炭鉱依存からの脱却を

 三池炭鉱の閉山にともない、関連する事業所を含めて1,500人以上が解雇になったほか、地域経済にも暗い影を落としていった。たとえば、炭鉱の閉山を見据えて、石炭産業に代わる新しい産業の開発の一環としてつくられたテーマパーク「ネイブルランド」だったが、経営難により95年7月の開園からわずか3年後の98年12月に多額の負債を抱えて閉園。また、2001年1月には大牟田井筒屋が、04年7月には松屋デパートが閉店するなど、大牟田市の商業のシンボルだった2つの百貨店が相次いで姿を消した。

 市では、炭鉱閉山前から、失職者の新たな雇用先の確保や地域経済への悪影響を最小限に抑えるために、さまざまな対策を実施。たとえば、企業誘致の受け入れ先となる工業団地の造成や、三池港および有明海沿岸道路などのインフラ整備、新たな産業としての環境・リサイクル産業への注力などだ。

 その1つとして進めている「大牟田エコタウン事業」は、環境・リサイクル産業の創出による“環境”をテーマにしたまちづくりを進めるもの。福岡県の協力を得て、98年7月に全国で5番目の「エコタウン地域」として承認を受け、臨海部の健老町地区に工業団地「大牟田エコタウン」(32ha)を造成し、新たな産業を創出する取り組みを進めている。また、96年から南関IC近くで開発を進めていた大型工業団地「大牟田テクノパーク」(66.3ha)が01年に完成。ここでは立地条件を生かした企業誘致に力を入れ、13年12月までに23区画すべてが完売となった。

 商業面では、01年10月に旭町の三井三池製作所跡地に「ゆめタウン大牟田」が開業したほか、11年3月には臨海部の岬町に「イオンモール大牟田」が開業するなど、新たな大型商業施設も市内に誕生している。その一方で、前述の2つの百貨店の閉店のように地場の既存の商店の閉店が相次いでおり、市内の小売店は97年から07年までの10年間で600店舗近くも減少したという。

広域交流拠点に位置付けられる「新大牟田駅」

 交通インフラ面では、08年3月に有明海沿岸道路の高田IC(みやま市)から大牟田IC間が、12年1月には大牟田ICから三池港IC間が開通し、同道路の市内区間はすべて開通。柳川および大川方面へのアクセスが格段に向上した。また、11年3月には九州新幹線の全線開通とともに、新大牟田駅が開業。博多駅まで約30分で行くことが可能になった。一方で、一部区間が三井化学大牟田工場の専用鉄道として使用されていた「炭鉱電車」が、20年5月7日をもって運行を終了。地元から惜しまれつつも、その役割を終えた。

 15年7月には世界遺産「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の23の構成資産として、市内の「三池炭鉱宮原坑」「三池炭鉱専用鉄道敷跡」「三池港」が登録された。同世界遺産は構成資産が全国に分散しているため、観光振興への寄与はやや限定的ではあるが、市内における強力な観光コンテンツには違いない。

(つづく)

【坂田 憲治】

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