2024年04月27日( 土 )

政府がコロナ対策ではたすべき五大責務

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を紹介する。今回は、「コロナ対策は実は利権の巣窟だ。まずは感染を収束させることを優先し、経済対策では、すべての国民の生活保障を基軸にすべきだ」と訴えた12月6日付の記事を紹介する。


政府が取り組むべきことは、検査の低料金での一般開放、陽性者の行動抑止、正確なコロナリスクの周知、そしてすべての国民の生活保障、重篤化リスクの高い人の保護だと記述した。

感染症対策の基本は「検査と隔離」である。
コロナ感染症では、無症状の感染者が多数存在していることが指摘されている。
従って、症状があって感染が判明した人に限って検査を進めても意味がない。

無症状の感染者が感染を広げている。
Go Toトラブルキャンペーンが感染拡大の原因になっていることは明白だ。
65歳以上の人、基礎疾患のある人のGo Toトラブルキャンペーン利用自粛を呼びかけることに意味はない。

Go Toトラブルキャンペーンの利用自粛は、利用者の感染を防ぐためのものではなく、利用者が感染を拡大させることを防ぐためのもの、だ。
もとより、感染した場合に重篤化しやすい人は旅行などを自粛している。

何よりも重要なのは、高齢者、基礎疾患を持つ人、医療従事者、介護従事者への感染を防ぐこと。
感染が拡大している地域からGo Toトラブルキャンペーンで多数の人が押し寄せてくることを、上記の人々は怖がっている。
迷惑千万だと感じている。
65歳以上の人、基礎疾患のある人のGo Toトラブルキャンペーン利用自粛が呼びかけられても何の意味もない。

11月の3連休の人出が拡大した。
その影響は3週間後の12月中旬に表面化することになる。
菅内閣がGo Toトラブルキャンペーンで感染を日本全国に拡大させていることは愚の骨頂だ。

若年層の健常者がコロナ感染症で重篤化するリスクは限定的だ。

本年6月以降の実績で、感染が確認された人のなかで重症化した比率は
50代以下で0.3%
60代以上で8.5%

感染が確認された人のなかで死亡した比率は
50代以下で0.06%
60代以上で5.7%
である。

コロナ感染症に対する治療方法も、かなり確立されてきた。
コロナに対して過剰な恐怖感を煽ることは実態に照らして適正でない。
しかし、基礎疾患を持つ人、高齢者にとってコロナ感染症は極めて強い警戒を要するものである。

従って、政府はコロナ感染拡大を推進すべきでない。
この意味で、感染が収束しない段階でのGo Toトラブルキャンペーン展開は間違っている。
まずは、感染収束に向けての対応を優先させるべきだ。

東京の新橋駅近くに行列ができていた。
何を待つ行列かと見てみると、民間PCR検査に並ぶ行列だった。
3分間の唾液によるPCR検査が2,900円で提供されていた。

報道でも紹介されている。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/72592

検査キット開発が進展し、この価格で検査が可能なのだ。
この価格であれば1億人に検査を実施しても2,900億円だ。

Go Toトラブルキャンペーンに1.7兆円もの国費を投入する前に、検査拡充を実施すべきだ。
1回4万円の検査はどこかに莫大な利潤を生んでいるはずだ。
行政検査の国費投入の単価はいくらになっているのか。

コロナ対策は実は利権の巣窟だ。
コロナを第2類相当指定感染症に区分し続けている最大の理由も「利権」にあることを見落とせない。

冒頭に記述した政府がやるべきこと。

(1)検査の低料金での一般開放、
(2)陽性者の行動抑止、
(3)正確なコロナリスクの周知、
(4)すべての国民の生活保障、
(5)重篤化リスクの高い人の保護

これに徹すべきだ。
経済対策は、すべての国民の生活保障を基軸にすべきだ。

生活保障とは所得保障のこと。
所得が保障されれば、その所得が支出につながる。
その支出が生産活動を支えることになる。
経済活動を支援するには、すべての国民の所得を保障することがもっとも適正だ。

上記の5つの責務のうち、1番目と2番目が「検査と隔離」である。
しかし、無症状者を入院・隔離する必要はない。
無症状でも感染者は感染を拡大させる原因に成り得る。
従って、行動抑止が必要になる。

政府が行政検査でクラスター対策を実行しても、感染拡大を防ぐことはできない。
なぜなら、無症状で感染が確認されていない人が感染を拡大させるからだ。
このために、検査の拡充が極めて重要なのだ。
諸外国で膨大な検査が実施されている。
しかし、1回4万円も検査費用がかかるなら、大規模な検査拡充は実現していないはずだ。

検査キット開発の競争で、検査費用が大幅に低下しているはずなのだ。
しかし、日本ではこれまで1回2,900円という価格は表面化してこなかった。
1回4万円の検査を実施している周辺で濡れ手に粟の利益が生まれているとの断片的な情報が流布されてきた。

感染研、地方衛生研の検査利権ムラは検査を独占することに力を注いできた。
この感染研ムラが第2類相当指定に固執している。
行政検査で検査を独占的に支配する。
その検査数量に応じて財政資金が投下される。
その検査費用の単価がどうなっているのかについての情報開示が求められる。

民間が2,900円で検査を行えるなら、原価はさらに低いはずだ。
しかも、唾液を採取しての検査であれば特段の技術を必要としない。
翌日には結果が伝えられるとのことだ。
2,900円PCR検査のニュースは検査利権の闇を明らかにする端緒になるだろう。

他方で、政府がはたすべき大きな責務の1つに、コロナに関する正確な情報提供がある。
年代別の重症化率、死亡率の情報も重要だ。
さらに、重要なことは、重症化した人、死亡した人の属性だ。
重篤化しやすい要因として挙げられているものが該当するのかどうか。
この点が重要だ。

高齢者、心臓疾患、血栓症などの循環器系の疾患、腎臓疾患、肥満、喫煙者などが例示されてきた。
男性、血液型A型、なども重症化しやすい属性として例示されることが多い。
こうした情報開示がコロナ感染症の実体を知る上で重要になる。

高齢者、基礎疾患を持つ人にとっては強い警戒を要する感染症であるから適切な感染抑止策が必要になるが、若年の健常者のリスクは高くはなく、過剰な恐怖心を煽ることは適正でない。
実態に即した対応を取ることが経済活動を支える方策にもなる。

Go Toトラブルキャンペーンは全国の代表的観光地の有力宿泊施設とインターネット上の大手旅行取り扱い事業者、航空会社に巨大利益を供与するが、中小零細事業者に与える恩恵は限定的だ。

国民の間でも制度を利用できる状況にある人、とても利用できる状況にはない人との間で大きな不公平が生じている。
飲食業界も極めて厳しい状況に追い込まれているが、検査が拡充されて、陽性者の行動が確実に抑止されるなら、過剰な規制措置は不要になる。

まずは感染を収束させることを優先すべきだ。
菅内閣が5つの責務を適正にはたすことが強く求められる。


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植草一秀の『知られざる真実』

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