2024年04月26日( 金 )

大腸がんのAI内視鏡検査、病変を98.3%検出~将来は内視鏡にAIが標準搭載に?(後)

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大腸がんの可能性もAIで判定

 「エンドブレイン・アイ」で病変候補を見つけた場合は、医師が拡大内視鏡を用いて自身でがんの有無を調べることもできるが、内視鏡AI診断支援ソフトウェアの「EndoBRAIN(エンドブレイン)」を用いると、約500倍に拡大された内視鏡の撮影画像からAIで解析を行い、例えば「腫瘍性ポリープ(※1)の可能性90%」と表示してくれる。「エンドブレイン」の腫瘍性ポリープまたは非腫瘍性ポリープ(※2)を正しく判定する「正診率」は96.0%、腫瘍性ポリープを正しく腫瘍性ポリープと診断する「感度」は96.9%だ。

 また内視鏡検査では、血液中の酸素を運ぶヘモグロビンに吸収されやすい青色と緑色の2つの波長の光で照らす「狭帯域光観察(NBI)」で見ると、小さな病変でも見やすくなり、検査精度が上がるという。

腫瘍性ポリープの可能性99%、非腫瘍性ポリープの可能性0%と判定(解析結果の右側がNBI画像)
腫瘍性ポリープの可能性99%、非腫瘍性ポリープの可能性0%と判定
(解析結果の右側がNBI画像)

内視鏡のAI標準搭載に期待

 オリンパスは消化器内視鏡の世界シェアの7割を保有し、内視鏡事業の売上は4,257億円、営業利益は1,094億円(2020年3月期)。AI診断支援ソフトウェアの「エンドブレイン」はアジア一部地域や欧州など海外にも展開しているため、「エンドブレイン・アイ」も今後、海外に展開する可能性がある。

 繁森氏は「X線画像解析ではAIの活用が拡大しており、今後は医療画像解析でもAIの活用が普及するだろう。将来的には内視鏡にAIが標準的に搭載されていくのではないか」とにらむ。「エンドブレイン」の価格は約300万円、「エンドブレイン・アイ」は約150万円だ。オリンパスでは、普及している既存の内視鏡にオプションとしてこれらを組み合わせることで、利用の拡大を目指している。

 繁森氏は「内視鏡で大腸病変を見つけるのは基本的な検査のため、AI内視鏡診断ソフトの引き合いは、大手病院と一般のクリニックがおよそ半々だ。一般の診療所でも診断の質をより上げて、一定の検出精度の維持に貢献することが期待される。今後は検査結果を別の医療機関の医師が確認できるなど、遠隔医療に向けたシステムも組み合わせていきたい」と意欲を見せる。

 AIを用いた検査でも、通常の大腸内視鏡検査と同様の健康保険が適用される。一方、AIを用いた内視鏡検査のみの健康保険の適用枠はない。そのため、数多くの検査を続けても「疲れを知らない」AIは、病院の経営上、検査数の多い医療機関で特に需要が大きいと見込まれている。

 オリンパスは大腸内視鏡の検査を入口として、今後は胃や食道などの消化器内視鏡のAIシステムを展開するのではないだろうか。

(了)

【石井 ゆかり】

※1:大腸の管の表面にある粘膜層の一部がイボのように隆起してできたもの。大腸の腫瘍性ポリープには、大腸がん(悪性腫瘍)と、良性腫瘍であるが悪性化すると大腸がんになる可能性がある腺腫の2つがある。 ^
※2:基本的には、がん化することはないとされている。 ^

(前)

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