2024年04月26日( 金 )

急拡大する女性蔑視五輪ボイコット

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を抜粋して紹介する。今回は、「IOCが利権を優先して、東京五輪組織委会長・森喜朗氏の女性蔑視発言問題に蓋をしようとするなら、全世界の良識ある人々のすべてが反IOCに傾くだろう」と訴えた2月5日付の記事を紹介する。

東京五輪組織委会長・森喜朗氏が女性蔑視発言を示し、発言撤回と謝罪会見を開いたが、逆ギレする対応を示した。

森氏の発言は世界を駆けめぐっている。
森氏は2月3日の日本オリンピック委員会(JOC)の臨時評議員で次のように発言した。

「女性がたくさん入っている理事会、理事会は時間がかかります。
これもうちの恥を言います。
ラグビー協会は倍の時間がかかる。

女性がいま5人か。
女性は競争意識が強い。
誰か1人が手を挙げると、自分もやらなきゃいけないと思うんでしょうね、それでみんな発言されるんです。

結局、女性はそういう、あまり私がいうと、これはまた悪口を言ったと書かれるが、必ずしも数で増やす場合は、時間も規制しないとなかなか終わらないと困る」

「私どもの組織委にも、女性は何人いますか。
7人くらいおられるが、みんなわきまえておられる。
みんな競技団体のご出身で、国際的に大きな場所を踏んでおられる方ばかり」

「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」
「女性は競争意識が強い」
「数で増やす場合は、時間も規制しないとなかなか終わらないと困る」
「発言しないことが『わきまえて』おられること」

大きく報じられていないが、森氏は「うちの恥を言います」と述べた。
女性が理事に入り会議が長くなることを「恥」だと述べている。

メディアはIOCが2月4日に「この問題は終わったと認識している」との声明を発したことを流布して火消しに走るが、IOC自体が大きな勘違いをしている。

森発言の評価を決めるのはIOCではない。
世界の良識、常識が森発言を評価する。
利権五輪を強行するために問題に蓋をしようとするIOCの姿勢は、IOCに対する批判を噴出させる原因になる。

「謝罪会見」としながら、「謝罪」の姿勢は皆無だった。
「オリンピック精神に反する人が委員会の会長をするのが適任なのでしょうか?」との質問を受けると、森会長は「さあ?あなたはどう思いますか」と逆質問。

質問者が「適任ではないと思います」と断言すると、「ではそういう風に承っておきます」と返答。
さら質問を重ねる森氏は「面白おかしくしたいから聞いてんだろ?」と逆ギレ。

森会長は2月2日に五輪開催について「私たちはコロナがどういうかたちであろうと必ずやる」と断言。
2月3日の発言でも、「オリンピック、ぜひ、どんなことがあってもやります」と繰り返した。

そして、五輪を開く意味について
「役員のために、JOCのために、組織委員会のために五輪があるわけではないんです、IOCのためでもないんです。
日本のアスリートのためでしょ。
アスリートは、この本番でお客さんがいなくてもやりたいと言ったら、やらせてあげるしかないじゃないですか」
と述べた。

五輪をスポーツ振興センターが公金に頼らずに実施するなら、勝手に実施すればよい。
しかし五輪は違う。
巨大な国費=血税が注がれる。
主権者である国民の五輪という原点がまったく認識されていない。

五輪憲章のオリンピズムの根本原則に次のように明記されている。
6.このオリンピック憲章の定める権利および自由は人種、肌の色、性別、性的指向、言語、宗教、政治的またはその他の意見、国あるいは社会的な出身、財産、出自やその他の身分などの理由による、いかなる種類の差別も受けることなく、確実に享受されなければならない。

森氏の発言は偏見に基づく性差別、女性蔑視に他ならない。
森氏は何をどう間違え、何について謝罪するのかについてまったく説明していない。

謝罪の姿勢も皆無だった。
このまま進むなら、日本のすべての主権者が五輪開催阻止に全力を傾けることになるだろう。

森氏は会合で40分も発言した。
会議を長くしている張本人であると思われる。

JSC(日本スポーツ振興センター)は五輪にかこつけて巨大な税金によって巨大建造物を獲得した。
16階建ての「日本青年館・日本スポーツ振興センター本部棟」が建造された。
森会長は「無報酬」だと主張するが、新設ビルにオフィスを獲得しているのではないか。
組織委員会がどれだけの経費をかけているのか。

森氏は3日の発言のなかで新造本部棟建設の経緯についても発言している。

「日本青年館ですね。
青年館の郷里には農業関係の青年が多いですが、青年館は地位が高いですね。
東京では日本青年館というのはあまり評価されていないですが、古い団体であることは間違いないですね。

当時(新国立競技場建設にあたり)怒られました、なんで国立競技場から出すんだと。
避けて建てればいいと。
死んでも動かないとなりましてね、たまたまその当時の理事長が、鹿児島県選出の先生でした。
私は平身低頭して日本のスポーツ界のためにお願いした。
それだけ日本青年会はすばらしい建物になるはずだと。

国立競技場もラグビー場も神宮の野球場もみんな見える、酒を飲みながら見れるいい部屋が理事長室になるはずだと申し上げたら『それはいいな』と。
していいかどうか、本人の名誉のために言っちゃいかんかったですが、もう亡くなられましたので。
亡くなられる前にお見えになり、感激をしておられました」

日本青年館の理事長は鹿児島県選出の小里貞利氏が務めていた。
巨大な税金が投入され、五輪に紛れて16階建ての「日本青年館・日本スポーツ振興センター本部棟」が建造された。

焼け太り以外の何者でもない。
森喜朗氏の居室もこの新造ビルのなかに設営されたのではないのか。

「国立競技場もラグビー場も神宮の野球場もみんな見える、酒を飲みながら見れるいい部屋が理事長室になるはずだと申し上げたら『それはいいな』と」

返答して建造が決定されたことを森喜朗氏は手柄話として話しているようだが、これこそ、政治の私物化そのもの。

ワールドカップのラグビーについても、
「役員の皆さんにはW杯の試合を全部見られるように手配しなさいと」
指示したことを得意げに話すが、これも私物化の一端だ。

「私たちはコロナがどういうかたちであろうと必ずやる」との姿勢が根本的に間違っている。

五輪のために日本があるのではない。
日本のことを決めるのは日本の主権者だ。

その主権者が、いまはコロナ収束を最優先すべきだと判断している。
東京五輪については中止または延期すべきと主権者の8割以上が判断している。
この状況下で五輪が中止されるのはやむを得ないこと。

日本の主人公がアスリートではない。
卒業式も入学式も運動会も修学旅行も、コロナ収束優先のために中止になっている。

五輪だけが例外扱いされる理由はない。
平然と女性差別し、まともな謝罪も行えない人物がトップに居座る五輪に積極的に参加しようと考えるまともな人間は皆無に近いのではないか。

IOCが利権を優先してこの問題に蓋をしようとするなら、全世界の良識ある人々のすべてが反IOCに傾くだろう。
菅首相がこの問題に毅然とした対応を示さぬなら、菅内閣が退陣に追い込まれることになる。


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植草一秀の『知られざる真実』

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