「地域主体へ」コロナ禍の危機感がインバウンドの質的転換となるか(2)
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潜在力高い日本のインバウンド(つづき)
日本政策投資銀行・日本交通公社が発表した訪日外国人旅行者の意向調査【図2】では、コロナ禍の終息後に旅行したい国として、アジア圏で56%の1位、欧米豪全体で24%の2位という数字になっている。これらの数字は、ワクチン接種率などを含む今後のコロナ対策によって変動する可能性があるが、日本旅行が人気であることがわかる。
鍵は「地域」の組織運営
村山氏によれば、海外旅行者の意識調査から、欧米人旅行客を中心としたニーズは「学び」や「サイクリング」などの体験型に移行しているという。とくに富裕層においては、団体ツアーや大衆向けの旅行企画などに見られる著名な観光地めぐりではなく、誰も知らない土地で環境に優しい再生可能な旅行(リジェネラティブ・トラベル)のニーズが生まれている。
これらは日本のインバウンド事業における課題の1つであるが、同時にニーズをとらえることができれば、宿泊期間が長期化し、旅行単価の向上につながる可能性があるということでもある。また、観光立国の本質である地方創生の問題解決にもつながるだろう。広義のインバウンド事業として地域経済の活性化へ向かうためには、シビックプライドに基づいた地域教育、地元企業によるサービス提供が必要である。なぜなら、日本の地方の文化に触れることに海外旅行者のニーズがあり、それに応えるためには各地域が地元のことをよく知り、地域ならではの質の高いサービスを生み出す必要があるためだ。
「とくに体験型のサービスは首都圏から地方に向かうにつれ、価格と質が下がりやすい傾向がある。来日旅行者はその地域でしか味わえない食や体験を価格よりも質で求めている」(村山氏)。
それはあくまでも大型リゾート施設などのハード面ではなく、ヒト・モノ・情報などのソフト面の充実がカギとなってくる。これまで多くの地域が、国からの補助金で設備投資や観光コンサルティング業者などへのマネジメント委託などを行ってきたが、成功した例は少ない。
「地方創生は、国や自治体が主体となって動くだけでは達成できるものではない。あくまでも補助にとどまるべきで、地域自らが発起し、活動しなければ、長期的成果は生まれない」(国土交通省観光庁 観光地域振興課 広域連携推進室室長 檜垣敏氏)。
地方創生のカギとなってくるのは、各地域主導によるインバウンド事業であり観光事業だが、多くの地域では非効率な現状が散見されている。自治体や観光協会、商工会議所、民間企業などが各々に動き、うまく連携が取れていない。結果として、旅行者のニーズに応えることができず、「地域まちづくり」にもつながっていない状況に陥っている。
(つづく)
【麓 由哉】
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