2022年06月29日( 水 )
by データ・マックス

さまざまな思惑、想定される複数のルート案 地下鉄空港線とJR福北ゆたか線は接続できるか?

糟屋エリアも一枚岩ではない

JR篠栗駅
JR篠栗駅

 さらに、同じ糟屋エリアであっても、新たな鉄軌道が町内を通ることが想定される粕屋・志免の2町と、それ以外の自治体ではまた思惑が異なってくる。

 まず、町長が期成会の会長を務める篠栗町は、接続の端点とされている長者原駅より筑豊エリア側に近いため、新ルートが町内を通ることはまずない。そのため、新ルートの沿線開発のような直接的な影響はあまりないだろうが、筑豊エリアと同じように、両駅接続での福岡空港および都心部への時短効果によって、町内の利便性が向上することには期待がもてる。また一方で、近隣の粕屋町や志免町の沿線エリアの開発が活発化することで、その波及効果に与ることもあるだろう。

 また、町内の不動産会社からは、次のような意見もある。「篠栗町の場合は、役場近くの中心部にある篠栗駅と、その隣駅である門松駅(粕屋町)の中間ぐらいに、新たな駅をつくる構想も面白いかもしれません。鉄道線路の北側は現在、市街化調整区域で農地が広がっていますが、新駅が設置されるならばそれを機に市街化区域へと変更して、新たな開発を進めていく手もあるでしょう。そうすると、長者原から博多方面、長者原から福岡空港・天神方面へと2つのルートがある利便性の良さから、今でも高い篠栗町の居住ニーズが、さらに高まっていくかもしれません」((有)ウエル総合企画 代表取締役・井上泰寿氏)。

 一方で、須恵町や宇美町のようなJR香椎線が通る自治体は、香椎線との接続駅である長者原駅からの空港や都心部への利便性向上で、間接的な恩恵に与ることが期待される。たとえば今現在は須恵中央駅(須恵町)や宇美駅(宇美町)から福岡空港や天神に移動しようとする場合、長者原駅で1回、博多駅でもう1回と、計2回乗り換える必要がある。それが長者原駅での1回の乗り換えで済むのであれば、香椎線沿線エリアに対する評価も上がってくるだろう。ある意味で筑豊エリアの思惑とも近いかもしれないが、接続ルートが大きく迂回して両町の近くを通る場合は、直接的な町内での開発が促進する可能性も残されている(とくに須恵町)。そこが筑豊エリアとは違うところだ。

 なお、篠栗町や粕屋町の北側に隣接する久山町の場合は、期成会に参加してはいるものの、町内に鉄軌道が通っておらず、新ルートが町内を通る可能性もない。そのため期待しているのは、篠栗町や粕屋町での地域活性化が進むことで、隣町である久山町にも何らかの波及効果が出てくることだろう。なお、同町では町域の約97%を市街化調整区域に指定することで、政策としてあえて自然を残すかたちで、過度な開発を抑制してきた面もある。篠栗町や粕屋町などの隣接自治体での開発が進むことで、町内での開発機運が高まることを良しとするかは、難しいところだ。

 こうして見る限り、糟屋エリアだけとってみても、決して一枚岩とはいえない状況だ。ただし、自治体の立地によって“旨み”の多寡はあるものの、接続による鉄軌道の新ルートおよび新駅設置にともなう沿線エリアの開発を契機に、糟屋エリア全体を活性化していきたいという思いは、おそらく共通するところだろう。

 接続要望活動の発端である筑豊エリアと、接続の際の現場となる糟屋エリア。双方のエリアの思惑の相違により、両駅接続の際にどのようなルートを通るか、案が分かれてくるだろう。さてここからは、ルート案を検討するにあたって、事前に押さえておきたい諸事項について述べていこう。

福岡篠栗線
福岡篠栗線

つづく

【坂田 憲治】 

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