2024年04月27日( 土 )

さまざまな思惑、想定される複数のルート案 地下鉄空港線とJR福北ゆたか線は接続できるか?

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都市計画マスタープランでJR新駅構想の粕屋町

 実は長者原駅を擁する粕屋町では、今回の接続に関する動きとは別に、独自に福北ゆたか線にJR新駅を設置する構想をもっている。それも、周辺エリアの開発余地が十二分に残されている場所での、新駅設置だ。

 新駅設置の構想は、「粕屋町都市計画マスタープラン」(10年10月策定・20年12月改訂)のなかに記載がある。新駅の設置場所は、福北ゆたか線のJR柚須駅とJR原町駅との間、幹線道路・福岡篠栗線と主要地方道・福岡東環状線とが交差する扇橋交差点のすぐ北側の「九州大学原町農場跡地」(粕屋町原町)のすぐ隣だ。

九州大学原町農場跡地
九州大学原町農場跡地

 九州大学農学部の附属農場「原町農場」は、1921年に同地で整備・設置され、フィールドを生かした体験的な農業実習教育や、広大な圃場(ほじょう)での幅広い研究などに利用されていた。それが、九州大学全体での伊都キャンパスへの集約・移転にともない、今年4月に閉場。跡地となった現在は、本館や実習棟などの上屋の取り壊し工事(工期:~8月27日)が行われている。同跡地の敷地面積は約22.8ha。福岡市東区の「九州大学箱崎キャンパス跡地」が周辺エリアも合わせて約50haであることを考えると、その約半分の広さをもつ原町農場跡地も、かなり広大であることがわかるだろう。

約22.8haもの広大な跡地
約22.8haもの広大な跡地

 粕屋町では同農場跡地について、都市計画マスタープラン内の西地区構想の重点事業の1つとして挙げており、「公共公益施設・商業・業務・住宅など複合的な要素を併せもつ魅力ある市街地を形成」「緑の拠点として遺跡公園の整備」「農場跡地の活用と合わせた新駅の設置について、鉄道事業者や開発事業者と協議していく」などが記載されている。約22.8haもの広大な敷地を生かし、公・商・住などが一体となった複合型の市街地を形成し、それに合わせて駅などの交通インフラ整備も進めていこうというものだ。

 なお、遺跡公園の遺跡とは、町の発掘調査で発見された、同農場跡地の敷地内の国史跡「阿恵官衙(あえかんが)遺跡」のことを指す。本来ならば同農場の跡地開発に先駆けて、敷地内の西端付近を通るかたちで、福岡東環状線を扇橋交差点からさらに北側に延伸・整備する計画だったが、前述の遺跡発見で、文化庁との協議のためにストップしている状況にある。また、同農場跡地の敷地内ではさらなる埋蔵文化財が存在する可能性もあるため、跡地再開発自体にも同じくストップがかかっている。

 「原町農場跡地の北側では土地区画整理事業によって新たな住宅地が生まれましたし、新たに都市計画道路を通す計画もあります。また、都市計画マスタープランでは、新駅設置場所のすぐ南側のエリア、福岡東環状線の沿線で、『商業施設や流通業施設を核とした一体的な開発を誘導』していく構想もあるようです。農場跡地を含めて新駅の周辺には開発余地も多いですし、福岡東環状線の延伸によってさらに交通利便性が高まれば、周辺エリアの開発の動きに拍車がかかるのではないでしょうか」((株)みなもと都市設計 代表取締役・吉田俊哉氏)。

 周辺エリアの開発余地が十分に残されている新駅――。福北ゆたか線と地下鉄空港線の接続を考えていくうえでの分岐点として、これほど好条件かつ魅力的な場所はないようにも思われる。とはいえ、新駅設置について課題がないわけではない。

 「10年前の都市計画マスタープラン策定の際に、JR新駅設置の構想を盛り込んだのですが、そのときにおうかがいしたJR九州の意見では、『ちょうどカーブで電車が大きく傾く場所のため、現状ではこの場所に新駅設置は難しい』ということでした。今後、新駅を設置していこうとした場合、カーブを直線化して電車の傾きを抑えるなどの線路整備は必要になってくるでしょう。新駅設置にかかる費用も30~50億円ほどと試算されていますので、現時点では、まだあくまで構想といったところです」(粕屋町都市政策部都市計画課)。

 ただ、現状では難しく構想段階だとしても、新駅設置に向けて町が検討を行っていることは間違いない。接続ルート案を考えるうえでの貴重な事項として、押さえておきたい。

粕屋町都市計画マスタープラン「西地区構想図」(一部抜粋)
粕屋町都市計画マスタープラン「西地区構想図」(一部抜粋)

つづく

【坂田 憲治】 

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