2022年05月18日( 水 )
by データ・マックス

さまざまな思惑、想定される複数のルート案 地下鉄空港線とJR福北ゆたか線は接続できるか?

3町にまたがるボタ山を未来環境都市に

 接続ルート案を考える際に、もう1つ検討の俎上に乗せておきたい動きがある。それは、粕屋町・須恵町・志免町の3町にまたがるかつての産炭地の面影―ボタ山の再開発をめぐる動きだ。

未来環境都市の予定地となっているボタ山
未来環境都市の予定地となっているボタ山

 同ボタ山は、かつての糟屋炭田の炭鉱の1つである「志免鉱業所」(志免炭鉱)での採炭の際に出た捨石(ボタ)を積み上げたもの。もともとは旧国鉄の所有だったが、現在は志免・須恵・粕屋の3町での所有となっている。志免炭鉱の閉山後、ボタ山開発を鋭意促進していくために、1980年には志免・須恵・粕屋の3町からなる「国鉄志免炭鉱ぼた山開発推進協議会」が設置。ボタ山の活用策をめぐって幾度も協議が重ねられ、これまでにも人工スキー場やゴルフ場、競馬場などの案が模索されてきた。だが、撤去に莫大な費用がかかることや、ボタ山に対しての3町の温度差などもあって、いずれも実現には至っていない。また、13年8月にはボタ山の土地を活用した「ボールパーク構想」として、志免町と粕屋町と須恵町の3町が連携して福岡ソフトバンクホークスのファーム(2・3軍)の本拠地の誘致に名乗りを上げたこともあった。この構想では土地を無償貸与する代わりに、造成費用はソフトバンクの負担とする計画で、造成後の13万m2のうち9万m2をファーム拠点に、残り4万m2をメガソーラー用地とするものであった。だが残念ながら、その後の1次審査であえなく落選。ファーム誘致の夢は露と消えた。

 そのボタ山再開発に新たな動きがあったのが、18年1月のこと。ボタ山を自然と調和した環境のまちへと整備しようと、産学官による「未来環境都市協議会(FECA)」が発足したのだ。発起人には、Anny Group(現・FUTAEDAグループ)代表の二枝崇治氏と志免町議会議員・古庄信一郎氏のほか、志免・須恵・粕屋の3町長(当時)が名を連ねていた。

 FECAの設立シンポジウムで発表された構想では、「長期的なまちづくりに向けて、人と環境に優しい都市設計を進めていく」としており、ボタ山を再開発して動植物の生息空間(ビオトープ)や大型アリーナを整備し、環境問題を研究する大学や企業の誘致を目指すとしていた。産業遺構であるボタ山を、世界に発信できる「未来環境都市」として甦らせようというものだ。

 そのFECAの構想のなかで特筆すべきは、将来的には駅などの交通インフラの整備まで視野に入れている点だ。FECAによる将来構想の完成イメージ図では、ボタ山の南側部分をかすめるかたちで、鉄軌道および駅が描かれている。FECAの設立前には、すでに筑豊・糟屋の両エリアで接続に向けた動きが顕在化しており、福岡空港駅~長者原駅間に敷かれる新たな鉄軌道をこの将来構想に盛り込んだ可能性は十分考えられるだろう。

FECAによるボタ山再開発将来イメージ
FECAによるボタ山再開発将来イメージ

 なお、設立後のFECAにはとくに目立った動きがなく、計画策定のために18年8月に設立されたNPO法人ALFEEも、事業報告書を見る限りは活動実態がないまま、今年7月12日付で解散となっている。そのため、今のところ未来環境都市の開発に向けた動きは、事実上ストップしている状態だといえるが、今後、両駅接続の動きが現実味を帯びてくるにつれて、ボタ山再開発の機運が再燃してくる可能性は捨て切れない。

つづく

【坂田 憲治】

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