2024年05月23日( 木 )

音のデルタ地帯 「俺の」吉塚(前)

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飛行機の街、福岡

飛行機と工場と空地
飛行機と工場と空地

 「フライトシェイム運動」をご存知だろうか。別名「飛び恥」と揶揄され、温暖化対策を訴えるスウェーデンの環境活動家から始まった活動で、飛行機の利用に反対する社会運動だ。二酸化炭素を多く排出する飛行機を避け、ヨットや鉄道での移動を選択することが共感を呼び、世界に広まった。現実的には空の旅が完全になくなることは難しいと思うが、そんななかにあっても福岡空港は依然人気で、羽田~福岡は常に満席、“ドル箱路線”ともいわれる。

 福岡空港の前身は「板付飛行場」で、1945年に旧日本陸軍により建設された。戦後は米軍板付基地として、アメリカの軍事拠点となる。施設の大部分が返還されたのは72年で、福岡空港の歴史はそこから始まる。街の中心街にある立地条件は全国的にも珍しく、ビジネスや観光では重宝される。しかし裏を返せば、「街の真上を飛行機が飛ぶ」ということでもあり、その環境に苦悩する人も生んでいるという弊害との共存でもある。吉塚は、そんな飛行機の腹を臨む場所に位置する。

福岡人は空を見上げない?

_福岡空港周辺の騒音対策区域(福岡市HPより)
福岡空港周辺の騒音対策区域
(福岡市HPより)

    福岡空港は滑走路が1本で、航空機発着回数は日本で4番目(1位:羽田空港、2位:成田空港、3位:関西空港)。4~5分置きに飛行機が頭上を通過することに慣れている福岡人は、爆音がしても空を見上げて確認することは少ないという。空を見上げるのは、他県からやって来た観光客だと思われてしまうらしい。吉塚の街は、地理的に空港滑走路の延長軌道上にあるため、着陸で北側から高度を下げてくる航空機を下から見上げることになる。当然、音の高まりを聞くことになるが、爆音の連続もこの街の人たちにとっては、慣れ親しんだものなのだろうか。

 国が定める騒音対策区画では、第1種区域(Lden()62デシベル以上)、第2種区域(Lden73デシベル以上)、第3種区域(Lden76デシベル以上)に分けられる。吉塚は第2種区域と第3種区域の狭間辺りに位置していて、空中に反響した爆音が街中に轟く。

 羽田空港では発着便を増やすため、南風のときの午後3時から午後7時まで、都心上空を低空で飛ぶ新ルートの利用が20年3月から始まった。着陸機は安全のため緩やかな角度で高度を下げる必要があり、低空飛行になるという。近隣地域の上空を飛ぶ航空機は333mの東京タワーよりも低く、工事がないときでも飛行機が飛ぶと、80デシベル以上の数値が出る。80デシベルの騒音は、窓を開けた地下鉄車内と同程度。うるさくて窓を開けられず、テレビや電話の声は聞こえにくい。子どもを寝かしつけられない母親も多いという。ちなみに騒音は、3デシベル増えると体感音量は約2倍になると言われているので、吉塚の地域のなかでも音の感じ方が大きく変わる場所が存在してくることになる。

騒音対策区域のイメージ(福岡市HPより)
騒音対策区域のイメージ(福岡市HPより)

※:Lden(エルデン)とは 1日当たりの騒音のレベルを評価する尺度のこと ^


松岡 秀樹 氏<プロフィール>
松岡 秀樹
(まつおか・ひでき)
インテリアデザイナー/ディレクター
1978年、山口県生まれ。大学の建築学科を卒業後、店舗設計・商品開発・ブランディングを通して商業デザインを学ぶ。大手内装設計施工会社で全国の商業施設の店舗デザインを手がけ、現在は住空間デザインを中心に福岡市で活動中。メインテーマは「教育」「デザイン」「ビジネス」。21年12月には丹青社が主催する「次世代アイデアコンテスト2021」で最優秀賞を受賞した。

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