2024年04月19日( 金 )

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区画整理完了後に コロナ禍直撃の香椎駅周辺

 香椎花園から南東に約1kmの距離にある香椎では、事業計画決定から20年以上にわたって進められてきた「香椎駅周辺土地区画整理事業」が21年3月末に完了を迎えたばかりだ。

 1999年10月に事業計画が決定した同区画整理事業は、国道3号とJR鹿児島本線およびJR香椎駅とで挟まれ、中心部に西鉄貝塚線および西鉄香椎駅が立地する約20.7haの施行面積において進められたもの。西鉄貝塚線の鉄道高架化をはじめ、幹線道路や区画道路、駅前広場や公園などの一体的な整備によって総合的なまちづくりを図る目的で、交通拠点性の強化に加え、既存商業の高度化や居住環境の向上を目指すとともに、千早エリアと機能分担および連携した広域拠点の形成を目指していた。ハード面の整備に加えて、換地処分や登記簿書き替えなどの事務手続きも終わり、21年3月末に新たなまちの下地ができあがった。

 だが、これから香椎の新たな開発が進んでいくと見られた矢先に、コロナ禍が直撃。その結果、セピア通り沿いなどで新たな商業ビルなどが開発されるも、入居テナントの確保に苦戦する状況が続いている模様だ。1階などの低層部こそある程度はテナントが入っているようだが、入居しているのは不動産屋や美容院・理髪店などが目立つほか、2~3階以上になると「テナント募集中」の掲示もチラホラ。区画整理の過程で退去を余儀なくされた飲食店などが、コロナ禍の飲食需要の低減もあって、まだ香椎の街中に戻って来ていないと見られる。また、地場不動産関係者によれば、香椎の家賃設定は天神や博多などの都心部と比べてもあまり変わらないくらいの水準だという。さらに新たなビルになると、建替え前に比べて賃料が上がっているところもあるといい、それらも新規テナントの進出を阻む壁となっているようだ。区画整理完了をもって生まれ変わろうとした香椎が、コロナ禍などの諸要因でいきなり出鼻をくじかれたかたちだ。

 「建て替わった店舗に入居しているテナントも、以前のような居酒屋や飲食店は少なく、区画整理が行われる前の香椎と比べると、残念ながら活気が失われてしまったように思います。交通の便は良いのですし、もっと人が来てくれるようなお店が来てくれれば、と願っています」((有)大高不動産・野本美惠子取締役)。

新たなビルに少しずつテナントが戻りつつある
新たなビルに少しずつテナントが戻りつつある

 その一方で、新たに開発が計画されているビルには、賃貸マンションなどの集合住宅が目立つ。たとえば、香椎駅前1丁目では、(株)リアンによる「(仮称)リアンシエルブルー香椎駅前新築工事」(RC造地上10階、54戸、22年2月着工予定)や、(株)オフィス19による「(仮称)香椎駅前1丁目マンション新築工事」(RC造地上9階、14戸、22年1月着工予定)、(株)トーヨービルメンによる「(仮称)香椎共同住宅新築工事」(RC造地上11階、29戸、22年3月着工予定)、DM都市開発(株)による「(仮称)ResidentialGem香椎駅前」(RC造地上5階、22戸、22年7月着工予定)など。香椎駅前2丁目では、西部ガス都市開発(株)による「(仮称)香椎駅前店舗付賃貸住宅計画新築工事」(RC造地上9階、48戸、22年3月着工予定)、(有)ワイ・ジィ・エム・コーポレーションによる「(仮称)香椎駅前2丁目PJ新築工事」(RC造地上13階、28戸、22年11月着工予定)、(株)岩崎住興による「(仮称)香椎駅前レジデンス新築工事」(RC造地上12階、66戸、22年1月着工予定)、(株)田中構造設計による「(仮称)香椎駅前2丁目マンション新築工事」(RC造地上12階、22戸、21年12月着工予定)などだ。

 「香椎駅周辺はJRも西鉄もあって交通アクセスも良く、都心部への通勤を考えても住むのにはとても良い場所です。区画整理によって、以前は来ていたリヤカー部隊などの移動販売店舗はなくなり、何となく寂れてしまった感はありますが、これから住む人が増えてくれば、また別のかたちで新たな賑わいが生まれてくるのではないでしょうか」(國廣不動産・國廣桂司代表)。

 コロナ禍という思わぬ逆風で、区画整理完了後の新たなまちの開発にブレーキがかかったかたちの香椎駅周辺だが、都心部への優れた交通アクセスを生かして、“住むまち”としてのポテンシャルは高そうだ。

 なお、香椎駅前から西に約1kmに位置する香椎浜4丁目では現在、JR九州(株)によるRC造地上14階建の4棟からなる分譲マンション「MJRザ・ガーデン香椎」(総戸数420戸、Ⅰ期:22年2月竣工予定、Ⅱ期:23年2月竣工予定)の開発が進んでいる。施工は西松建設(株)九州支社が担当し、設計・監理は(株)Gデザインアソシエイツ、管理会社はJR九州ビルマネジメント(株)。コミュニティの交流拠点となる「コミュニティスクエア」をはじめ、敷地の四方に憩いの空間を設置するほか、TSUTAYAセレクトによる約3,000冊以上の書籍が備えられた「ライブラリラウンジ」が設けられるのが特徴。近接する「イオンモール香椎浜」をはじめとした生活利便施設も豊富で、子育て環境にも恵まれていることから、すでに成約も順調に進んでいるようだ。同物件からの最寄り駅の選択肢としては、JR&西鉄の香椎駅も入ってくる。通勤・通学で香椎の街中を往来する人が増えることで、香椎の街中にもある程度の賑わいが生まれてくるかもしれない。

MJRザ・ガーデン香椎
MJRザ・ガーデン香椎

【坂田 憲治】

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