【提案】箱崎キャンパス跡地を「グリーンフィールド」に(前)
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成長の芽を摘む高齢化問題
ある尊敬する経営者から、こんな話を聞いたことがある。「…私は40代のころ、自分が前に出ようとしたら先輩から止められました。『君はまだ若いから、年長者を立てなさい。そのうち順番が回ってきたら、主導権を握れるから』というのが、先輩たちの言い分でした。そういうものかと思って順番を譲り、待っていてどうなったか。今私は70代ですが、まだ80代の皆さんがお元気で現役として残っています。…松岡君、これが高齢化社会というものですよ。待っていても順番は回ってこない。だから、チャンスがあれば主導権を奪取しなさい」――と。
上の世代がいつまで経っても重要ポストに居座り、企業をはじめあらゆる場所で、新陳代謝が起きにくくなっている。その結果、若い人たちが力を発揮する場所が増えず、社会に新しい価値観が根付かない。時代が変わろうとしているのに、旧来型の発想から抜け出せず、変化の芽が摘まれてしまう。できれば上の世代が君臨する経営を止めて、権限と責任を一切合切まとめて若い世代に託し、渡してほしい――。これが今、企業の成長ひいては経済・社会の変化に欠かせないことではないだろうか。
この問題、建築業界でも考えてみたいと思い、今回の都市開発論のなかで触れてみたい。
都市と都心と都会
福岡の都心といえば「博多」だろうか。たとえば屋台で焼き鳥を食べているのは、“都会的”ではなく“都市的”に見える。“都会的”とはより消費的で、お洒落ではあるけれど、“都市的”とは必ずしもお洒落で洗練されているとは限らない。屋台で焼き鳥を食べる風景は、紛れもなく都市の風景ではあるだろう。西新や大橋は“都市的”ではあるが、“都会的”とは言い切れないし、もちろん都心でもない。
言い換えると、都市の魅力というのは都心でなくても生み出せる。都会は「物の豊かさ」にすぎないが、都市は「心の豊かさ」。いろいろな地域が都市の魅力をつくり出せる。そこが都市の原点だと考える。
都市の魅力5選
(1) 個性が許容される…偏った価値観で成立するわけではないということ
(2) 多様性がある…誰もが不利にならないこと
(3) 安く楽しめる…都会ではお金がかかるが、都市はエコノミカルである
(4) コミュニティ性がある…いろいろな人との付き合いが生まれる
(5) 安全・安心「都心と郊外」という概念が、なくなっていくことを願う。なぜなら、都市の魅力をもつかどうかが、その地域を魅力的にするかどうかを決めるのであって、“都心と郊外”といった考えは場所の宿命に収束されていき、いつまで経っても都心の呪縛から逃れられないからだ。“都心から何km”といった郊外を表す謳い文句は、都心への通勤時間が短い場所が有利に立って、都心近郊に住む場所を求めて行列が続くことになる。一極集中を助長させる旧来の価値観なのだ。
<プロフィール>
松岡 秀樹(まつおか・ひでき)
インテリアデザイナー/ディレクター
1978年、山口県生まれ。大学の建築学科を卒業後、店舗設計・商品開発・ブランディングを通して商業デザインを学ぶ。大手内装設計施工会社で全国の商業施設の店舗デザインを手がけ、現在は住空間デザインを中心に福岡市で活動中。メインテーマは「教育」「デザイン」「ビジネス」。21年12月には丹青社が主催する「次世代アイデアコンテスト2021」で最優秀賞を受賞した。月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?
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