2024年05月06日( 月 )

「業界挙げて職人不足の解消へ」圧接業界の取り組み

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
法人情報へ

西日本圧接業協同組合
理事長 松本 一彦 氏

業界挙げて職人不足の解消へ

西日本圧接業協同組合 理事長 松本 一彦 氏
西日本圧接業協同組合
理事長 松本 一彦 氏

    ──組合として、2025年問題への対応はいかがお考えですか。

 松本 少子高齢化で、圧接業界の若手入職者数は低迷しています。ハローワークなどで求職者募集をかけたところで、反応がほとんどないと聞いています。一部の企業では外国人技能実習生を採用していますが、コロナ禍に任期を終えて帰国する実習生がいる一方、新たな実習生を迎えることができていないのが現状です。

 当社(栄進工業)も、学校訪問や自衛隊の任期満了退職制度から毎年若手を採用していますが、どこも人材不足で採用も簡単ではありません。業界を挙げて魅力向上を図らなければならないことを実感しています。

 職人不足を解消するためには、若年入職者を増やすだけでなく、離職防止も重要になります。そのためには、週休二日制や月給制はもとより、給料を少しでも上げていかなければならないでしょう。圧接業は屋外作業で、夏は厳しい暑さに、冬は寒さに耐えなければならず、若手が一生懸命に働くには、多少なりとも給料が良くないことには励みにならないと思います。しかし、建設業全体の平均年収は550万円、ゼネコンは630万円、我々の圧接業含む躯体工事業者は444万円と開きがあり、他産業と比較しても低所得です。 

 建設業界の「キツい」「汚い」「危険」の3Kから脱却し、「給料が高い」「休日が多い」「希望がもてる」の新3K実現に向けて、業界全体で同じ方向を向いて目指していくことが重要です。たとえば、夏には少しでも快適に働けるようファン付き作業着を会社が支給するほか、今どきのスリムな作業服の着用を認めるなど、イメージアップを図ることも今後は大事になっていくでしょう。

働き方改革に優位性を

圧接業 イメージ    ──専門工事業界が抱える課題について、お聞かせください。

 松本 最大の課題は、労務単価の低さです。公共工事設計労務単価は10年連続で引き上げられ、単価はリーマン・ショック時点(D25-400円)から、D25-600円~700円台に回復してきましたが、健全な経営にはD25-750~800円が必要でしょう(※ここでいう単価とは、圧接する鉄筋1本あたり労務単価のこと)。加えて、建設業界では36協定の特別条項における残業時間の上限規制が24年4月から適用されることが決まっており、違反に対する罰則規定も設けられます。

 来年10月からのインボイス制度導入への対応など問題は山積みですが、社会保険未加入問題については、当組合ではすべての組合員が加入しています。また、建設キャリアアップシステム(以下、CCUS)も、全圧連や建設産業専門団体九州地連合会の指導により大半の企業が加入しています。

 ただその反面で、雇用維持の経費がかかるため、受注価格競争において社会保険未加入業者に負けてしまうこともあり、正常な価格競争になっていないのが現状です。リーマン・ショック時には、材料不足やゼネコンのダンピング受注によるしわ寄せが専門工事業者におよびました。そして、きちんと社会保険に加入している会社ほど、厳しい状況に陥ったのです。そのときに何が起こったかというと、固定費がかからないよう自社雇用から外注に切り替えるという動きでした。

 当社(栄進工業)の従業員は130人以上いますが、全員を社員として雇用し、社会保険にも加入しています。また、率先して週休二日制も導入した結果、固定費はかなり上昇していますが、発注者や元請業者にはぜひこれらの点を理解してほしいと思います。下請業者を選定する場合には、社会保険の加入はもちろん、CCUS加入や週休二日制度導入・月給制度などの働き方改革に真剣に取り組んでいる企業を優先して取り扱い、健全な専門工事業者として評価される流れをつくっていってほしいと願っています。

(了)

【内山 義之】


<プロフィール>
松本 一彦
(まつもと・かずひこ)
1966年1月、熊本県天草市生まれ。84年3月、熊本県立天草高等学校卒業。同年4月、栄進工業(株)に入社。2006年3月に同社統括営業部長、10年3月に専務取締役を歴任し、13年3月に代表取締役に就任。趣味はゴルフと釣り。

  • 1
  • 2

月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?

福岡のまちに関すること、再開発に関すること、建設・不動産業界に関することなどをテーマにオリジナル記事を執筆いただける方を募集しております。

記事の内容は、インタビュー、エリア紹介、業界の課題、統計情報の分析などです。詳しくは掲載実績をご参照ください。

企画から取材、写真撮影、執筆までできる方を募集しております。また、こちらから内容をオーダーすることもございます。報酬は1記事1万円程度から。現在、業界に身を置いている方や趣味で再開発に興味がある方なども大歓迎です。

ご応募いただける場合は、こちらまで。その際、あらかじめ執筆した記事を添付いただけるとスムーズです。不明点ございましたらお気軽にお問い合わせください。(返信にお時間いただく可能性がございます)

法人名

関連記事