2022年06月28日( 火 )
by データ・マックス

【陳時中部長】台湾のハイテク防疫とユニバーサル・ヘルス・カバレッジ

中華民国(台湾) 衛生福利部長
陳 時中 氏

 WHO年次総会が22日から開催されている(28日まで)。台湾において新型コロナウイルスの感染防止に尽力する陳時中(ちん・じちゅう)台湾衛生福利部長(保健・衛生大臣に相当)による世界の防疫体制の整備における台湾の貢献について説く記事を台北駐福岡経済文化弁事処より寄稿していただいたので、掲載する。

はじめに

中華民国(台湾)
衛生福利部長 陳 時中 氏

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的パンデミック発生から2年余りが経ち、これまでに全世界の5億1,000万人が感染し、625万人以上の大切な命が失われた。人口2,350万人の台湾は、2022年5月10日までの時点で、感染者数約39万例、死者数931例である。21年の経済成長率は6.45%に達し、台湾の防疫対策は国際的に注目され、高く評価されている。

ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ

 台湾の全民健康保険は、新型コロナの防疫において極めて大きな役割をはたした。1995年に全民健康保険制度を開始して以降27年が経過し、健康保険のカバー率は99.9%に達している。全民健康保険の整ったデータベースと、時代とともに進化した情報システムに加え、台湾がデジタルテクノロジーの応用に成功したことも重要なカギとなっている。世界の指標データベースサイト「NUMBEO」が発表した2021年の「ヘルスケア・インデックス」によると、台湾は95カ国中トップであった。台湾のヘルスケアシステムは、米ビジネス誌「CEOワールド・マガジン」において2021年度世界第2位にランキングされている。

ハイテク防疫

 20年2月、新型コロナのパンデミックが始まった初期の段階では、台湾政府は「入国検疫システム」を構築し、全民健康保険データベースと移民署(入国管理局に相当)および税関のデータベースを統合し、ビッグデータによる解析を行えるようにし、「デジタル隔離追跡システム」により、スマートフォンの位置情報の追跡を通して、在宅隔離および検疫措置を確実に実行できるようにした。また、個人情報保護の観点から、これらの個人情報は最長で28日間保管されるが、疫学調査使用後には確実に消去されるようになっている。
 マスク需要が急増した際には、健康保険カードをマスク購入権証明として運用する「マスク実名制」を採り、マスク買い占めによる需給バランスが崩れることを防ぎ、すべての住民にマスクが行き届くようにした。

ワクチン接種とデジタル証明

 健康保険サービスのデジタル化を発展させるため、台湾は全民健康保険「快易通」アプリを開発し、ワクチン接種の予約、個人健康データ、受診記録、COVID-19ワクチン接種/ウイルス検査結果問い合わせ機能などを提供している。また、台湾は21年末に「EUデジタルCOVID証明書」システムに正式加入し、国民による「ワクチン接種デジタル証明」や「検査結果デジタル証明」の申請を受け付けている。EUデジタルCOVID証明は国際的標準の1つとなっており、加盟国も多く、なおかつ国際間の旅行に使用されており、台湾の国民はこの証明を持参すればEU加盟国など64カ国に入国することができる。

電子カルテとリモート医療

 台湾は10年より電子カルテ交換などの医療情報インフラ建設を積極的に推進し、21年5月より、政府はリモート医療を全民健康保険の給付対象に組み入れ、リモート診療を拡大することにより、ゼロ接触医療を通して感染および密集のリスクを減らした。リモート医療の拡大は、ヘルスケアサービスのカバーを拡大するものであり、これにより交通が不便な地方の住民も適切に十分な医療ケアを受けることができるようになり、世界保健機関(WHO)が目標とするユニバーサル・ヘルス・カバレッジの実践となった。

新台湾モデル

 台湾はこれまで精確なハイテク防疫モデルによる厳格な水際管理と的確な検査・疫学調査などを主軸とし、さらに情報を公開の透明性を高めることにより、ウイルスの侵入を防ぐことに成功した。それにより、国民は平常通り生活し続けることができるようになり、経済もプラス成長を実現した。しかし、オミクロン変異株が21年末から世界中で席捲し始めると、台湾でも他国同様に市中感染が広がり始めた。そこで今年4月より、台湾政府は重症者をゼロにし、軽症者を効果的にコントロールするため、減災と中等症・重症患者のケアを優先する方針に切り替えた。現段階で推進している「新台湾モデル」は「平常通りの生活、積極的な防疫、緩やかな開放」が目標である。

台湾の国際貢献は現在進行形

 世界はいまなお感染の脅威、ワクチン供給、収束後の回復に向けた課題に直面しており、各国は力を合わせて互いに支え合い、次に来る未知の疾病のために備えなければならない。台湾は世界と手を携えて協力し、感染収束後の復興を共に促進していくために欠かせない良きパートナーである。台湾は引き続き具体的な行動で各国と協力し、新型コロナワクチン、医薬品研究開発の交流協力を進め、マスクや医薬品などの防疫医療物資および設備を寄付し、共に感染の封じ込めに努めている。「Taiwan Can Help, and Taiwan is Helping!」の精神に基づく台湾の国際貢献は現在進行形である。

 第75回WHO年次総会が22日から開催されたが、台湾は昨年まで5年連続で招待されなかった。台湾がグローバル・ヘルスのカバーする範囲から外れることのないよう、台湾は引き続き専門的、実務的に貢献していくという精神で第75回WHOに参加する機会を求め、世界とともにWHOが掲げる空白なき防疫のビジョンを実現したい。

 WHOおよび関係各方面が、台湾をWHO体系に組み入れることを固く支持すること、台湾がWHO関連会合、メカニズム、活動に十分に参加できるようにすることを求めるとともに、台湾は世界各国と手を携え、WHO憲章の「健康は基本的人権」と「『国連持続可能な開発目標』(SDGs)における『誰も取り残さない』」というビジョンを共に実現できるよう呼びかけたい。

▼関連記事
【特別寄稿/陳時中・台湾衛生福利部長】
 ポストコロナ時代の世界公衆衛生ネットワークに台湾の参加を

関連記事