2022年08月14日( 日 )
by データ・マックス

美観・質向上を担う塗装工事、停滞した業界環境の改善が課題

(一社)日本塗装工業会   福岡県支部
支部長 池田 幹友 氏

資産価値を守り省エネ効果も、重要な役割を担う塗装工事

日本塗装工業会 池田支部長
日本塗装工業会 池田 支部長

    ──塗装工事の役割とは何でしょうか。

 池田 塗装工事の役割はさまざまありますが、最も大きな役割の1つは、美観の向上にあります。たとえば建物の外壁が汚れてくすんでしまっていては、見た目がよろしくありませんし、周囲の景観にも悪影響をおよぼしてしまいます。そうした場合でも、きちんと塗り替えを行ってあげることで、建物の印象は見違えるでしょう。

 また、見た目の問題だけでなく、日光や雨による劣化や腐食から建物を守る役割もあります。塗装工事を行うことで建物を補強して耐久性を高めるほか、防水性や耐火性の向上、遮熱や断熱などの省エネ効果まで期待できます。紫外線による外壁の劣化を防ぐことで、建物の資産価値を守る役割もあります。

 ──塗装工事にもさまざまな種類があります。

 池田 一口に塗装工事といっても、塗料や塗装方法によってもいろいろと違うほか、あらゆる条件や用途に対応できるように、溶射工事やライニング工事、布張り仕上工事など多種多様な工事があります。

 溶射工事とは、基礎の金属に別の金属を溶射することで、吹き付けた金属の特性を付加させる「表面加工」と呼ばれる作業を行うものです。ライニング工事は、ビルやマンションなどの建物に張りめぐらされている給排水管の内側から専用の塗料を流すことで、新管のようにするもの。布張り仕上工事は、建造されている建物の壁に布地を張り付け、そこに着色して布地が見えるように仕上げる工事です。ほかに、鋼材の表面に防錆塗膜をつくり、鋼構造物をサビや腐食から守る鋼構造物塗装工事などもあります。

 ──塗装工事の業界環境などはいかがですか。

 池田 業界環境の変化を示すものとして、日本塗装工業会がまとめた「令和3年度塗装工事業者実態調査」のなかの新築塗装工事額と塗り替え塗装工事額の割合の推移を見てみましょう。調査初年度となる1983年度では、完成工事総額4,740億円のうち、新築塗装が2,460億円で構成比では52%、塗り替え塗装が2,280億円で48%と、ほぼ半々の割合でした。ところが、その後は毎年度のように新築塗装が減っていき、直近の2021年度では完成工事総額8,670億円のうち、新築塗装が1,480億円で構成比が17%、塗り替え塗装が7,190億円で83%と割合が大きく変化しています。全体の総額も約2倍にはなっていますが、塗り替え塗装が大きく伸びている状況にあることがわかると思います。

塗装工事 イメージ    基本的に構造物は、常に雨風や日光に晒されて劣化しやすい環境下にあるため、約10年が経過した段階で塗装工事のやり替えが必要となります。とくに建築塗装においては、国土交通省などの旗振りで、環境負荷低減のために地球温暖化や光化学スモッグの原因の1つとされるVOC(揮発性有機化合物)を大幅に削減する低溶剤形塗料や水性塗料の使用が推奨されており、実に約95%で水性塗料が使用されています。ですが、水性塗料は油性塗料に比べると寿命が短い傾向があり、そのこともあって、新築塗装に比べて塗り替え塗装が増えていると考えられます。

 つまり、業界環境としては絶えずメンテナンスや更新のニーズが発生しますので、息の長い業種であることは間違いありません。建築でリノベーションなどの改修工事や修繕工事などが増えているのも、我々塗装工事業界にとっては追い風だといえるでしょう。

【内山 義之】


<プロフィール>
池田 幹友
(いけだ・みきとも)
1949年2月、北九州市小倉北区出身。70年3月に福岡大学法学部卒業後、同年4月より鉄鋼会社へ入社し、工程管理などを行う。73年にダイキ工業(株)に入社し、82年10月に同社代表取締役に就任した。(一社)日本塗装工業会福岡県支部長(3期目)のほか、(社)北九州中小企業団体連合会会長や福岡県中小企業団体中央会副会長などの数々の要職も務める。

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