2024年05月06日( 月 )

「棲みごこち」と商業はどこまで混ざるか【2】商いと暮らしの中和点を論考する(後)

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邪魔にならない業態開発を。
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街を生かす再開発の決め手

 商業を下支えするうえで、欠かすことのできないインフラが物流だ。過疎地を含めて地方にサービスエリアを拡げたことは、“宅急便は全国どこへでも行きます”という競争上の強みになり、販売促進に大きな効果を上げたようだ。メルカリで送りたい荷物を梱包・配送する場所として郵便局やコンビニがあるが、これがいわゆる取次店のような機能。今ではその場所を集客に利用しようと、コインランドリーとのコラボもある。そこでは撮影、出品、出荷が一連の流れで行えるという。布団や毛布、スニーカーなども洗える多機能洗濯機も登場したりと、とくに共働きの子育て世代の家事場の延長機能として、家の近くのコインランドリーは“棲みごこち”向上に一役買っている。

 また、“りらくる”に代表されるようなマッサージ店も嬉しい。ネット予約でスマートチェックインでき、セラピストとのマッチングや予約システムでの分配システムも効率的だ。「体をほぐしてほしい人」と「体をほぐせる人」が身近でその効能を享受でき、待ち時間のないリラックス時間は寝室の延長として、豊かな時間を過ごせる。日常食である食パンを買える場所や、ちょっと大きなお風呂に入れるスパ・サロンなど、暮らしのなかに密着している業態、あっても邪魔にならない商業の設えが、都市のなかに混在してくると楽しい。

 先人たちの努力と挑戦のおかげで、物流は暮らしのなかに細かく入り込んだ。これからの社会、人々の暮らしは、個人の商いとともに醸成されていくだろう。「商い」と「住む」親和性の高いコンテンツ。その価値観の上に社会の仕組みがうまくフィットし、その環境に都市が変形・適合していく。商いと暮らしが上手に混ざり合う中和点にこそ、“棲みごこちの未来”が見えてくるような気がしている。

(了)

▼関連リンク
「棲みごこち」と商業はどこまで混ざるか【1】 人口減少下にあるべき商業とは


松岡 秀樹 氏<プロフィール>
松岡 秀樹
(まつおか・ひでき)
インテリアデザイナー/ディレクター
1978年、山口県生まれ。大学の建築学科を卒業後、店舗設計・商品開発・ブランディングを通して商業デザインを学ぶ。大手内装設計施工会社で全国の商業施設の店舗デザインを手がけ、現在は住空間デザインを中心に福岡市で活動中。メインテーマは「教育」「デザイン」「ビジネス」。21年12月には丹青社が主催する「次世代アイデアコンテスト2021」で最優秀賞を受賞した。

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