2024年05月18日( 土 )

未来の力がみなぎるベトナム:チャイナ・プラス・ワンに高まる期待

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 NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。
 今回は、10月21日付の記事を紹介する。

ベトナム ホーチミン 夜景 イメージ    「テクノロジー時代」の大国は、国土面積や人口の規模に依存するのではなく、主にソフトパワーに依存します。来年、日本との間で国交樹立50周年を迎えるベトナムは「未来の大国」に他なりません。

 ベトナム計画投資省の「ベトナム2035年ビジョン」によれば、「2035年までに繁栄、革新、公平性、民主主義を体現する近代的な工業国になる」という計画が打ち出されています。

 ベトナムは長い歴史を持つ社会であり、19世紀初頭においては、タイ、マレーシア、フィリピンよりもはるかに大規模な経済を実現していました。「21世紀はアジアの時代」と言われていますが、ベトナムはその中心的役割を果たそうとしているわけです。

 拙著『未来の大国:2030年、世界地図が塗り替わる』(祥伝社新書)でも紹介しましたが、現在の経済発展が続けば、2048年にはベトナムの経済力は世界のトップ20に入ると思われます。

 国民の平均年齢28歳という若い国のベトナムには、新しいことを発見したいという挑戦的な精神をもったダイナミックな青年に満ちています。ベトナムはFacebookユーザー数では世界第7位です。ちなみに、日本は上位10カ国に入っていません。IT 産業の育成に力を入れるベトナムは、ミャンマー、カンボジア、ラオスなどの近隣の発展途上国にネット関連サービスを提供する動きを始めました。

 ベトナムは医学、教育などの多くの分野で情報技術を使用しています。農業や観光の分野でも世界中からの人材、資本、技術を求めている最中です。注目すべきは、Vingroup、NextTech、Tiki、FastGo、Zaloなどの新規ビジネスが続々と成功を収めており、米国のシリコンバレーに匹敵する潜在力を秘めているとの指摘も出てきました。

 米中間の経済摩擦が過熱しており、経済制裁の対象になる中国企業が増えています。その影響で、目ざとい中国企業はベトナムに生産拠点を移動し、「メイド・イン・ベトナム」商品としてアメリカに輸出するという抜け道づくりに余念がありません。これはベトナムにとっても悪い話ではないようです。

 なぜなら、中国に恩が売れるし、雇用の増加や中国から技術を学ぶきっかけにもなるからです。ベトナム政府は各地に経済特区を建設し、こうした中国企業や日本など外国資本の誘致にも熱心に取り組んでいます。まさに「チャイナ・プラス・ワン」の最大の受益者を目指しているわけです。

 ベトナムのクオン外務次官曰く、「これからは即興の選択の時代になるでしょう。超能力や個人的な能力のあるなしにかかわらず、私たちは瞬時に選択を迫られることになります。そんな時代への入り口に立っているわけです。勇気を出して、その扉を開き、新しい世界に足を踏み入れなければなりません。それができれば、ベトナムは未来の大国のチケットを手にすることになります」。

 実は、ベトナムでは投資可能な資産として3,000万ドル以上を保有する富裕層が1万人を超える勢いで増えています。このペースが続けば、2026年には富裕層の増加率で中国やインドを凌駕し、世界最高を達成する可能性が出てきました。共産党の一党独裁体制というお国柄ではありますが、経済政策は「ドイモイ」に象徴されるように、極めて自由化が進んでいます。市場原理が最優先されていると言っても過言ではありません。

 この10月19日には「ベトナム・ブロックチェーン・サミット2022」が開催されたばかりです。ベトナム・ソフトウェア協会とベトナム・ブロックチェーン協会の共催によるイベントでしたが、海外からの参加者も多く、デジタル化の進むベトナムでの新たなビジネスチャンスを模索する動きが加速しています。

 現在、ブロックチェーン技術を応用したニュービジネスを推進する世界のトップ200社のなかにはベトナム企業が10社以上、ランクインしています。ことブロックチェーンに関していえば、ベトナムは世界のトップ5に数えられており、これら10社の投資金額は1億ドルを越えています。ベトナムの先見性を垣間見る動きです。2026年までにはベトナム国内におけるブロックチェーン関連の投資額は25億ドルに達すると予測されています。

 このようなベトナムの潜在的な成長を見越し、進出を加速させる日本企業も増えています。ホテルオークラでは2027年の開業を目指し、ベトナム最南端のロングビーチでのリゾートホテル開発計画を発表しました。

 これからますます発展が期待される「若い、未来の大国」。それがベトナムです。

 次号「第315回」もどうぞお楽しみに!


著者:浜田和幸
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