2024年04月28日( 日 )

艶街千早~艶と顔の見える学びの連鎖を~(5)

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 福岡県は、福岡県立福岡高等技術専門校の跡地について、PPP(公民連携)の一手法である「定期借地方式による土地貸付」による有効活用を図ることとし、公募型プロポーザル方式により民間事業者を再公募した。地の利と場所の文脈、それに相性の良い戦略を、例によってこの場を借りて提案してみたい。

リスキリングに5年1兆円

 千早駅前の中心地は高層ビルの林立によって、オフィス街のような殺風景な景色に変わった。少し“乾いた空気”が流れているように感じる。先に近代化が進み過ぎてしまった都市に、適度な抜け感やガス抜きをするような余白のような場所は、これから必要になってくるだろう。すでに紹介した好例(ガーデンズ千早、なみきスクエア等)のような場所がまだまだ必要だ。“みんなのキッチン”のような飲食形態でも、ママ友が集まって駄菓子を食べながらのママ会の空間でも良い。手軽にスマホで予約ができるような小さなシェアスペース、安価でショートタイムで借りられるコワーキングスペースみたいな場所。ちょっとした隙間時間に、個人が集まって来やすい空間、キャラクターが見える場所の創出を。そんな場所に転換するようなパワーショップの存在。そんな場所に“学び”というエッセンスを混ぜ込んでいくと、この土地らしさが滲み出てきそうだ。

 スキルUPエリアという記憶の場所において、その地の利を生かし、学びという文脈を織り交ぜて、人への投資を戦略とした空間をつくっていく。艶っぽく練り込んでいくイメージだ。

 政府は個人の学びに対する公的支援として、「リスキリング」に5年間で1兆円の予算拡充することを10月に表明した。リスキリングとは、働き方の変化によって必要になるスキルの“学び直し”を意味する。仕事のデジタル化やAIの活用が進む今、失われる雇用がある一方で、新しいスキルが必要な職種も出てきて、職業のミスマッチが起こってきている。また、広く求められているスキルも、多種多様に変化してきている流れにある。学び直しを通じて、“自分への投資”“人への投資”を加速させる。この“リスキリング”を迎えられるような器のヒントになる事例を、2つ紹介してみたい。

社会人向けオンライン学習Schoo

Schooの授業例(公式HPより)
Schooの授業例(公式HPより)

 社会人に学びの場を提供しているSchoo(スクー)は、“大人たちがずっと学び続ける生放送コミュニティ”を謳い、リスキリングを後押ししているサービスだ。生放送で進行され、質問したり、受講生同士の交流もできて一緒に学ぶことができる学校のような空間がモチベーションの維持に一役買っている。コロナ禍でニーズが高まり、19年からの3年間で約2倍の会員数(43万人→72万人)に増えている。エクセルの使い方、プログラミングのスキル、話し方、コミュニケーション力の未来…など、今の仕事に活かすスキルのアップデート、新たな成長分野へ転職するためのスキル、新たな領域の学びを身につける等、今後必要とされる意識としては“学びの継続”がカギを握っているようだ。

 経済産業省が発表している「未来人材ビジョン」レポートのなかに、2050年に必要な能力が紹介されているが、15年ごろに主として必要とされてきた能力・スキルと50年ごろに必要とされる能力・スキルには、大きな変化があることがわかる。いわゆる、事務的なスキルから、創造的なスキルに変わっていることが見て取れる。現在は「注意深さ・ミスがないこと」「責任感・まじめさ」が重視されているが、将来は「問題発見力」「的確な予測」「革新性」が一層求められ、近い将来や現状の問題を見つけ、それを解決できるモノ・サービスを開発できる人が求められていることがわかる。

 このような新たなスキルが望まれるなかで、学び直しやリスキリングを求め、スクーのようなサービスを使って、日夜コツコツと楽しみながら学びに向かう情景は、オンライン授業だけにとどまらず、広くまちづくり、まちの魅力へと波及できる思想や人脈にも広げていければと思う。

未来人材ビジョン56項目(出典:経済産業省HP)
未来人材ビジョン56項目(出典:経済産業省HP)

(つづく)


松岡 秀樹 氏<プロフィール>
松岡 秀樹
(まつおか・ひでき)
インテリアデザイナー/ディレクター
1978年、山口県生まれ。大学の建築学科を卒業後、店舗設計・商品開発・ブランディングを通して商業デザインを学ぶ。大手内装設計施工会社で全国の商業施設の店舗デザインを手がけ、現在は住空間デザインを中心に福岡市で活動中。メインテーマは「教育」「デザイン」「ビジネス」。21年12月には丹青社が主催する「次世代アイデアコンテスト2021」で最優秀賞を受賞した。

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