2024年05月06日( 月 )

外国人労働者等特別委 「特定技能2号」の対象分野を大幅に拡大する方針

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労働者 イメージ    政府の外国人労働者等特別委員会は、熟練した技能を持つ外国人の在留制度「特定技能2号」の対象分野を大幅に拡大する方針を自民党に示した。

 4月10日、政府の有識者会議は、これまでの技能実習制度の廃止および新たな制度への移行を提言し、その中間報告のたたき台を示していた。これを受けて24日、政府の外国人労働者等特別委員会が、優れた人材を確保するために、「特定技能2号」の対象分野の大幅拡大方針を提示したのだ。

特定技能制度と趣旨

 特定技能制度には特定技能1号と2号があり、それぞれに在留する際の条件や制限が決められている。現況は介護や農業などの12分野で働くことができる制度である。

 技能実習制度のスタート後に新設された特定技能制度は、技能実習制度とは趣旨が異なり、「国内で人材を確保することが困難な状況にある産業分野において、一定の専門性や技術を有する外国人を受入れることができる」こと、つまり労働力となる人材を確保できることを第一の目的とした制度である。2019年4月から受入れできるようになった。

 技能実習制度だけでは、実習期間の5年間が経過した後も継続して日本で働ける在留手段がなかった。特定技能制度はこれを解消するために創設された制度なのである。

特定技能制度1号と2号 働ける分野はどう違う

●特定技能1号の在留資格で働ける分野
 介護・農業・漁業・建設・産業機械製造業・造船舶用工業・航空・自動車整備・飲食料品製造業・外食業・ビルクリーニング・宿泊の12分野。現在14万6,002人が日本国内で働いている。

●特定技能2号の在留資格で働ける分野
 建設・造船舶用工業の2分野。2号の創設から現在まで、資格取得者および日本国内で働いている人はわずか10人にとどまる。

◼️特定技能1号と2号 在留資格要件はどう違う

●特定技能1号
在留期間:1年・6カ月・4カ月ごとに更新、通算5年間まで
技術水準:相当程度の知識または経験を必要とする技能
外国人支援:必須であり支援計画の策定実施も義務である
家族帯同:家族の帯同はできない
日本語能力試験 :あり
試験実施内容:日本語能力試験と技能試験

●特定技能2号 (2号への移行試験は2021年度からスタート)
在留期間:3年・1年・6カ月ごとに更新、上限なく在留できる
技術水準:熟練した技能(各分野の技能試験で技術水準を確認)
外国人支援:支援計画の策定は不要
家族帯同:配偶者と子どもの要件を満たせば家族帯同ができる
日本語能力試験 :なし(1号からの移行だけに限定されているため)
試験実施内容:1号より高い水準での技能試験合格が必要

特定技能2号の資格取得が極端に少ない理由

 特定技能2号の資格取得者が1号に比べ極端に少ない理由について、建設分野または造船舶用工業分野の2号へ移行するためには、そもそも移行試験を受ける際に次の条件を満たしている必要があることが挙げられる。

・建設分野を受験する場合:特定技能1号の在留資格で職長および班長としての現場の実務経験6カ月から3年以上が必要。この条件を満たしたうえで、ようやく学科試験と実技試験が受験できる。
・造船舶用工業分野を受験する場合:特定技能1号の在留資格で監督者としての実務経験2年以上が必要。この条件を満たしたうえで、学科試験はないが実技試験を受験できる。
 これらを受験し合格しなければ1号から2号への移行はできないのであるが、いずれの分野でも現場リーダーすなわち監督者としての経験が必要であるため、受験条件を満たすには一定の期間が経過していなければならない。これも2号資格取得者が少ない要因の1つになっている。

政府は介護を除いた9分野で拡大の方針

 特定技能1号にある介護分野は、介護福祉士の国家試験に合格し「介護」の在留資格を取得できた外国人なら、無期限就労が可能となる別制度で介護職として働くことができるため、特定技能2号の拡大方針に含める必要がない。よって、政府は介護分野を除いた9分野を追加して全11分野とするべく、6月の閣議決定を目指している。

【岡本 弘一】

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