2024年04月19日( 金 )

【鮫島タイムス別館(14)】立憲民主党は崩壊へ~維新と決別、共産・れいわとも共闘せず、独自路線に勝機なし

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求心力低下を加速させる泉発言

 立憲民主党は迷走した挙句、日本維新の会と決別し、共産党やれいわ新選組とも共闘せず、次の衆院選に単独で臨むことになった。泉健太代表は「選挙は独自でやる。維新とも共産ともやらない。独自の道でしっかり訴える」と宣言し、国民民主党を除く他の野党との選挙協力や候補者調整を明確に否定した。
 ただでさえ立憲は支持率低迷にあえぎ、4月の衆参5補選にも惨敗して、維新に野党第一党の座を奪われる危機に瀕している。そのなかで独自路線・孤立路線を突き進み、はたして衆院選を乗り切ることができるのだろうか。
 衆院選は定数465のうち、与野党がたった1つの議席を争う小選挙区で289議席が決まる(残り176議席は各政党が競う比例代表)。泉代表は衆参5補選に惨敗した後、党内若手に突き上げられ、次の衆院選で150議席を下回れば辞任すると明言して退路を断った。
 150議席は単独過半数(233)に遠くおよばず野党第一党が選挙前から政権交代をあきらめているという意味で不甲斐ない目標なのだが、それでも立憲の現有議席は97しかなく、党勢も低迷するなかで、実現が相当に困難な数字といえる。泉代表の発言は士気を高めるというよりむしろ彼の求心力低下を加速させるだろう。
 立憲がほかの野党と選挙協力や候補者調整をせず、独自路線・孤立路線で衆院選に突入すれば、150議席どころか現有議席を大きく下回る大惨敗を喫し、衆院選後の分裂・解党は避けられないと私はみている。いや、衆院解散時点で「立憲のままでは勝てない」として多くの現職が逃げ出し、一部は維新に駆け込んで、選挙がはじまる前から立憲が空中分解する可能性も十分にあろう。立憲は自滅の道を転がり始めた。
 自民党は連立与党の公明党と候補者調整をして小選挙区の候補者を1人に絞り込み、選挙協力をする。自公両党は現在、区割り変更で生まれた一部選挙区の候補者をめぐり対立しているが、最終的には折り合いをつけるだろう。そこが自公与党の強さだ。
 自民党は一方で、野党が共闘して小選挙区の候補者を一本化することを阻むため野党分断工作に力を入れてきた。その要が維新だった。野党第一党(民主→民進→立憲と変遷)のもとに野党勢力が結集して自公与党との「一騎打ち」の対決構図ができると接戦は免れないため、野党第二党の維新を国会対策や政策協議で常に優遇して肩入れし、立憲と維新の間に楔を打って、野党同士が選挙で競い合うように仕向けてきたのだ。自民党が国政選挙で連戦連勝してきた最大の要因は、野党分断工作が奏功して政権批判票が分散し、各地の小選挙区で競り勝ってきたことである。

野党第一党としての存在感を維新に奪われ、解体へと向かうか

 立憲は自公に対抗し、枝野幸男代表のもとで戦った21年衆院選でも、泉代表のもとで戦った22年参院選でも、共産やれいわが主張する消費税減税を受け入れる代わりに多くの選挙区で両党候補を降ろしてもらい、自公との一騎打ちの構図をつくろうとした。
 ところが、維新は「打倒自民」より「打倒立憲」を前面に掲げて野党第一党を奪うことを当面の目標に掲げ、本拠地・大阪を中心に「非自公・反立憲」の第三極として躍進。立憲は衆参選挙でともに惨敗し、枝野氏は消費税減税を掲げて共産・れいわと共闘したのは間違いだったと総括した。泉代表も昨夏の参院選後、「自公の補完勢力」と揶揄してきた維新との共闘に転じ、次の衆院選で維新と選挙協力することを視野に安全保障政策や国会対応で維新に追従してきた。
 それでも、維新は立憲に冷淡だった。国会対策で利害が重なる時だけ連携するものの、選挙協力は終始一貫として完全否定し、立憲の小西洋之参院議員が衆院憲法審査会を「サル」に例えて批判した問題を契機に立憲との対決姿勢に転じた。その結果、今春の統一地方選では700超の議席を獲得して躍進し、立憲が惨敗した衆参5補選でも維新は和歌山1区で自民に競り勝って明暗を分けたのである。
 NHKの5月世論調査では、維新の政党支持率(6.7%)は立憲(4.2%)を2.5ポイント上回り、これまでで最も大きな差をつけた。政党の勢いでも存在感でも支持率でも、維新が事実上の野党第一党に躍り出たといっていい。すでに勝負は決した感がする。
 立憲の衆院議員たちは野党第一党だからこそ、小選挙区で自公政権批判票の受け皿として票を集め、実力よりも高い下駄を履かせてもらって当選してきた。裏を返せば、多くの有権者が立憲候補を積極的に支持していなくても(時に批判的な視線を向けながらも)自公候補を落選させるために、鼻をつまんで立憲議員の名を投票用紙に書いてきたのである。彼らはその結果として今、議員バッジを胸につけているのだ。
 野党第一党としての存在感を維新に奪われ、共産やれいわとも選挙協力をしないということは、彼らは次の衆院選で高い下駄を履き捨て、自らの実力だけで勝負するということである。具体的にいえば「反自公かつ反維新」の票を共産やれいわと激しく奪い合うことになる。それで、たった1人しか当選しない小選挙区で勝ち上がれると本気で思っているのだろうか。比例の当選枠がいくつ確保できると思っているのだろうか。自分たちはなぜ当選できたのか。己の真の実力に気づかず、自惚れているとしか思えない。
 このまま衆院選に突入すれば150議席どころか97議席の現有維持も夢のまた夢。野党第一党のアドバンテージを失った立憲議員は続々と落選し、国民民主や共産、れいわと同規模の政党へ転落するかもしれない。日本政界は自民と維新による危険な二大政党政治に突入することになる。
 それを食い止める方法は、立憲がいますぐに解党し、自民や維新に真っ向から対抗する勢力が再結集して新たな旗を打ち立てる野党再編しかないと私は考えている。

【ジャーナリスト/鮫島 浩】


<プロフィール>
鮫島 浩
(さめじま・ひろし)
ジャーナリスト/鮫島 浩ジャーナリスト、『SAMEJIMA TIMES』主宰。香川県立高松高校を経て1994年、京都大学法学部を卒業。朝日新聞に入社。政治記者として菅直人、竹中平蔵、古賀誠、与謝野馨、町村信孝ら幅広い政治家を担当。2010年に39歳の若さで政治部デスクに異例の抜擢。12年に特別報道部デスクへ。数多くの調査報道を指揮し「手抜き除染」報道で新聞協会賞受賞。14年に福島原発事故「吉田調書報道」を担当して“失脚”。テレビ朝日、AbemaTV、ABCラジオなど出演多数。21年5月31日、49歳で新聞社を退社し独立。
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