2024年05月05日( 日 )

23年上半期 博多の拡張目立つ福岡市の開発動向(前)

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トップ3に変動、1,000戸超は博多区のみ

 福岡市内に設置された標識情報を基に、市内における2023年上半期(1~6月)の開発動向を追った。その結果、共同住宅(木造を除く)の計画戸数は4,602戸で、22年下半期(7~12月)との比較で1,027戸減少した。

 22年下半期は総戸数100戸超の計画が10棟以上あったのに対して、23年上半期は5棟未満にとどまったほか、市内7区のうち4区の計画戸数が下半期比で減少。中央区の計画戸数は22年上半期以来2度目となる1,000戸割れとなったほか、これまで安定して1,000戸超で推移していた東区も1,000戸割れとなった。

 弊誌「I・Bまちづくり」で集計を始めて以降、博多区、中央区、東区はマンション開発が盛んな計画戸数上位3エリアとしてほとんど変わることがなかったが、23年上半期は博多区のみが唯一の1,000戸超えエリアとして、その存在感を維持する結果となった(【表1】参照)。

 博多区における23年上半期の計画戸数は1,500戸超で、22年下半期比でほぼ横ばい。九州の玄関口でもあるJR博多駅周辺エリアでのマンション開発は今でも断続的に続いているほか、これまで木造アパートの新築が目立っていた雑餉隈などの西鉄沿線エリアや、奈良屋町などの博多旧市街エリアでもマンション開発が活発化。博多駅周辺に偏重していたマンション需要が分散されることで、広域展開によるさらなる発展が期待される。

 東区は計画戸数が1,000戸を割り込んだものの、(株)エス トラスト(山口県下関市)と旭化成不動産レジデンス(株)(東京都千代田区)による「(仮称)オーヴィジョン香椎浜」(RC造・地上14階建、ワンルーム外286戸、延床面積2万6,489.80m2)といった、県外企業による大型物件の開発が始動するなど、話題性に事欠かない。

 マンション開発以外でも、食品流通サービス業の(株)ハウディの持株会社であるハウディホールディングス(株)(熊本市南区)による冷蔵倉庫「(仮称)(株)ハウディ福岡支店」(S造・地上4階建、延床面積9,500m2)や、家具・インテリア販売の(株)ニトリ(北海道札幌市北区)の倉庫「(仮称)ニトリ福岡DC」(S造・地上6階建、延床面積9万6,621.95m2)が計画されている。

 共同住宅以外の計画件数は、22年下半期は老人ホームが0件だったのに対して、23年上半期は5件に増加。23年上半期の延床面積の合計は22年下半期比で12万7,576.38m2増となった。老人ホーム以外では、前述の通り東区を筆頭に倉庫開発が盛況を博すほか、重松商事(株)の「(仮称)伊都西茂ビル」(S造・地上1階建、延床面積2,999.99m2)など、店舗の計画件数も増加(【表2】参照)しており、コロナ禍を経て、商業施設の開発も再び動き始めている。

【博多区】
唯一の1,000戸超え

 23年上半期の計画戸数は1,530戸で、22年下半期に続いて1位となった。これまで大きな動きが見られなかった西鉄沿線や、祇園町、奈良屋町、古門戸町といった博多旧市街でもマンション開発が活発化したことが計画戸数の維持につながった。

 注目される物件は、呉服町駅から徒歩10分程度の場所で進む「(仮称)(同)Y&Pホールディングス様マンション」。事務所付のマンションで、建築物の概要はRC造・地上14階建、延床面積2,527.29m2のワンルーム32戸、ワンルーム外17戸の計49戸。建築主は(同)Y&Pホールディングス(北九州市八幡西区)で、設計者は生和コーポレーション(株)となっている。比較的地価も抑えられてきた旧市街エリアだったが、福岡市地下鉄空港線・中洲川端駅や祇園駅、同箱崎線・呉服町駅を擁しており、交通アクセスに優れていることが見直され、近年では開発が相次いでいる。

(仮称)合同会社Y&Pホールディングス様マンション
(仮称)合同会社Y&Pホールディングス様マンション

 また、西鉄・雑餉隈駅が最寄り駅となる井相田3丁目では、(株)Cozy's Nestの「(仮称)井相田3丁目マンション」が計画されている。建築物の概要はRC造・地上7階建、延床面積1,800m2のワンルーム49戸で、設計はゴマアーキテクツ一級建築士事務所が手がける。これまで同じ博多区でも、博多駅周辺エリアと比べて生活拠点を置くには少し遠いイメージがあった南部エリアだが、西鉄・桜並木駅の新設(雑餉隈~春日原駅間)やららぽーと福岡の開業効果などから、開発が増加している。

【東区】
多彩な開発が進む

 21年以降、計画戸数が1,000~1,500戸の間で安定推移を見せていた東区だったが、23年上半期は671戸と、22年下半期比で622戸の大幅減少となった。一方で、マンション以外では倉庫や許可外保育所、有料老人ホームなど、多彩な開発が進む。東区の人口は市内最多の33万1,029人(福岡市推計人口・23年6月1日現在)で、住宅だけでなく、子育てや終活関連の施設に対する需要も相応に高い。今回はその点が際立つ結果となった。

 注目される物件は、(株)桜寿福祉会の有料老人ホーム「(仮称)桜寿のさと松田」。建築物の概要は、S造・地上4階建の延床面積2,520m2。設計は(株)R.E.D建築設計事務所が手がける。

 マンション開発では、(株)モダンプロジェの「(仮称)modern palazzo箱崎1丁目」が注目される。福岡市地下鉄箱崎線・筥崎宮前駅から徒歩5分圏内の好立地で、博多三大祭りに数えられる放生会(ほうじょうや)でも有名な筥崎宮は目と鼻の先。建築物の概要は、RC造・地上9階建のワンルーム外18戸。設計は(株)m’s planningが手がける。

(仮称)modern palazzo箱崎1丁目
(仮称)modern palazzo箱崎1丁目

【中央区】
停滞は天神ビッグバンの徒花か

 23年上半期の計画戸数が638戸にとどまり、22年上半期以来、2度目の1,000戸割れとなった中央区。22年は下半期で盛り返しを見せたため、23年も下半期の追い上げに期待したいところだが、最もブランド力のある中心部の天神や隣接エリアの大名界隈は、天神ビッグバンの話題で持ち切りだ。市主導の再開発プロジェクトによって、天神や近隣エリアの地価が上昇を続ける一方で、中心部でのマンション開発は鳴りを潜めてしまっている。代替地として賑わっているのは、大手門や今川など、都心のオアシス・大濠公園に近いエリアだ。

 注目物件は、福岡市地下鉄空港線・唐人町駅から徒歩10分程度の今川で計画されている福岡地所(株)の店舗付きマンション「(仮称)今川1丁目マンション」。建築物の概要は、RC造・地上7階建、延床面積2,807.49m2のワンルーム外35戸。そこから徒歩5分圏内の場所では、(株)大京九州支店の「(仮称)ライオンズ黒門」も計画されている。建築物の概要は、RC造・地上7階建、延床面積2,246.17m2のワンルーム外15戸となっている。また、黒門のホテル跡は積水ハウス(株)が取得しており、いずれグランドメゾンの開発計画が明るみになるとみられる。

 22年下半期は、小笹で進められている(株)えんホールディングスの「(仮称)エンクレストガーデン福岡」(ワンルーム外364戸)が牽引役となり、トップ3に返り咲いた中央区だったが、23年下半期も救世主となるような大型物件が登場するのか、動向が注目される。

(つづく)

【代 源太朗】

(後)

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