2024年05月19日( 日 )

23年上半期 博多の拡張目立つ福岡市の開発動向(後)

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【南区】
根強い人気の西鉄沿線

 南区の計画戸数は、22年下半期比で216戸増の583戸となった。南区は西鉄天神大牟田線・大橋駅、高宮駅、井尻駅、JR笹原駅を擁する。なかでも西鉄沿線エリアは根強い人気を誇っており、たとえば大橋駅至近の音楽・演劇練習場「ゆめアール大橋」跡地では、えんホールディングスがスーパーやジムなどが入る地上6階建の複合施設「OHASHI HILL」を計画している。

 高宮駅から徒歩10分圏内の場所では、(株)オープンハウス・ディベロップメントの「(仮称)オープンレジデンシア大楠3丁目」が計画されている。建築物の概要はRC造・地上9階建、延床面積1,990m2のワンルーム21戸、ワンルーム外14戸の計35戸。市を南北に縦走する幹線道路・日赤通りに出やすく、車での乗り入れもしやすい立地となっている。

 このほかに注目されるのが、大楠2丁目にある(株)積文館書店の旧本社の行方だ。建物は2階建で、土地面積は723m2。建物・土地ともに所有者は日販グループホールディングス(株)となっている。売却するのか自社で活用するのか、西鉄・平尾駅から徒歩5分程度の好立地でもあり、気になるところだ。

【西区】
九大と姪浜回帰でトップ3へ

 22年下半期の計画戸数は456戸だったが、23年上半期は661戸まで増加。中央区に代わり、計画戸数上位3エリアに食い込んだ。JR九大学研都市駅から九州大学伊都キャンパスを結ぶ学園通線沿いでは、北原・田尻土地区画整理事業が進行中。同事業は今秋完了予定だが、同通り沿いでは西日本シティ銀行伊都支店のほか、秋以降も新たな商業施設が開発予定となっている。

 23年上半期における西区の計画戸数を押し上げたのも、学園通線沿いで計画されているマンションだった。大和ハウス工業(株)九州支社の「(仮称)福岡市西区北原・田尻3街区マンション」で、建築物の概要はRC造一部S造・地上13階建、延床面積1万6,677.22m2のワンルーム194戸、ワンルーム外88戸の計282戸。隣接地で建設中の高層マンション(RC造・14階建、ワンルーム187戸)と合わせてツインタワーマンションとなる。

 また、西区においては姪浜への回帰も目立った。注目されるのは(株)LANDICの「(仮称)姪の浜1丁目計画」。建築物の概要は、RC造・地上14階建、延床面積5,200m2のワンルーム外65戸。姪浜駅から徒歩10分程度で、明治通り沿いの見晴らしの良い好立地となっている。このほか、姪浜や隣接エリアの小戸で、複数のマンション開発が計画されている。また、姪浜では地元の雄、(株)サワライズによる複合商業施設「(仮称)MEINOHAMA STEPS」の開発も進んでおり、西区全体でマンション、商業施設の開発が途切れることなく続いている。

【城南区・早良区】
七隈線効果と堅調な西新

 城南区と早良区の22年下半期における計画戸数は、それぞれ28戸と536戸だったが、23年上半期は181戸と338戸となった。城南区は153戸増と躍進したが、早良区は198減と後退。七隈線延伸効果に期待がもてる分、城南区に開発が集中した可能性が高い。

 城南区で注目される物件は、個人による「(仮称)別府2丁目計画」。建築物の概要は、RC造・地上10階建、延床面積4,515.88m2のワンルーム外55戸で、設計を上村建設(株)が手がける。このほか、九電不動産(株)の「(仮称)城南区別府6丁目計画」(RC造・地上7階建、延床面積5,064.43m2のワンルーム外49戸)などが計画されている。

 計画戸数が200戸弱減少した早良区だが、西新の近接エリアである城西での開発は盛んで、早良区内でも地域間格差が目立ち始めている印象を受ける。注目されるのは、(株)オープンハウス・ディベロップメントの「(仮称)オープンレジデンシア西新」。建築物の概要は、RC造・地上12階建、延床面積1,558.38m2のワンルーム33戸。設計を(株)雅禧建築設計事務所が手がける。このほか、城西では「グランド・サンリヤン西新」(RC造・地上14階建、延床面積5,508.25m2のワンルーム外62戸)などが建設工事中だ。

起爆剤が見当たらない23年下半期

 23年上半期は、西鉄天神大牟田線・雑餉隈~春日原駅間に新設される「桜並木駅」の開業に向けて、同駅周辺エリアでの開発が勢いづくと予想していた。実際に博多区の結果を見ると、新駅の誕生がもたらす開発誘引効果の高さを改めて感じることができる。また、昔ながらの商店街をはじめとしたレトロな街並みが残る美野島でもマンション開発は活発化しており、着実にマンション市場の裾野を広げている博多区の強さを思い知らされる結果となった。

 マンション開発が停滞している中央区では、ザ・リッツ・カールトン福岡を擁する福岡大名ガーデンシティが大名でオープンをはたした。若者向けのファッション&グルメが充実しているエリアだった大名だが、ビジネスマンや富裕層のさらなる流入が予想されるため、エリア特性に変化をもたらすような開発が進む可能性はある。また、東区ではアイランドシティが一大物流拠点へと変貌を遂げる一方で、「(案)照葉はばたき小学校(24年4月開校予定)」の新設が示すようにファミリー層の移住・定着も進んでおり、マンションをはじめとする住宅整備に関しても、千早、香椎、箱崎とともに、イーストサイドを盛り上げていくものと推察される。

 23年下半期は、市内7区において開発の起爆剤となるような大きな話題が見当たらないものの、計画されている土地区画整理事業は散見されることから、周辺エリアへの波及効果に期待したいところだ。

上空から見るアイランドシティ
上空から見るアイランドシティ

(了)

【代 源太朗】

(前)

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