【法律相談】トラブルの多い未払残業代について
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求められる使用者の労務管理
今年10月、電通の違法残業事件で有罪判決が言い渡されましたが、事業者が取り組むべき喫緊の課題として、「過剰な残業」の問題とともに、「残業代未払」の問題があります。
残業代の未払いが生じる原因の1つとして、初めから労働時間が管理されていないために、労働者がどのくらい残業したのか把握できていないケースが散見されます。とくに、現場作業員の場合などに多く見受けられます。
このような場合、労働者のほうでも正確な労働時間を把握していませんが、弁護士を立てて請求してくる場合には、工事現場に赴く社用車のETC利用記録や公共交通機関のICカードの利用記録、メールの送信記録、作業日報・作業報告書、さらには労働者自身が作成したメモなどを基に労働時間を推定して、残業代の請求をしてきます。
このような請求は、実際の労働時間よりも過大であることが多いのですが、労働時間の把握義務を負っているのは事業者(使用者)であるとされていますので、事業者において具体的な反論ができなければ、労働者に有利な判断がされる結果となってしまいます。
労働時間を管理すべし
厚労省のガイドラインでは、労働時間を適正に管理するため、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、これを記録することが求められ、その具体的な方法としては、(1)使用者が自ら現認することで確認・記録すること、(2)タイムカード、ICカードなどの客観的な記録を基礎として確認・記録すること、(3)自己申告制の場合には、十分な説明や適宜の実態調査をすること―などが挙げられています。現場作業員などタイムカードでの時間管理が困難な場合でも、現在はクラウドサービスを利用した勤怠管理などの方法も考えられますので、どのような方法を採用するのか検討が必要です。
また、残業をさせる場合は、上長の残業指示命令または残業申請に対する許可が必要としたうえで、この運用を徹底するなどの方策も必要であり、労働者がだらだらと仕事をすることを黙認しないことも徹底する必要があります。
労働者有利の法制度
労働関係の法律については、なかなか素人では理解しにくい点がある一方で、労働者に有利な法制度となっています。そのため、法制度を知らないままで放置してしまっていると、労働者からの請求があったときには“サンドバッグ状態”で、されるがままになってしまうという事態にもなりかねません。就業規則の改訂などを通じた制度の導入だけではなく、制度が適正に運用されているかという点も重要ですので、継続的に弁護士に相談して、適正な労働時間管理体制を構築できるようにしておくことをお勧めします。
<プロフィール>
岡本 成史(おかもと・しげふみ)弁護士
1971年生まれ。京都大学法学部卒。97年弁護士登録。大阪の法律事務所で弁護士活動をスタートさせ、2006年に岡本綜合法律事務所を開所。福岡県建築紛争審査会委員、(一社)相続診断協会パートナー事務所/宅地建物取引士 岡本綜合法律事務所月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?
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